黒い羽根 -38ページ目

昔、恋人と別れたときに


ずっと変わらない愛なんてないと思った


長く一緒に居つづければ


それは形をゆっくりと変えていく


けれども、時間を止めてしまえば


それは変わることなく続くんだろうか



「彼」と「彼女」の時間が止まったのは5年前


一緒に棲みはじめたばかりの時


普段は寝相のいい「彼女」が


痙攣を起こして突然ベッドから落ちてしまった


急いで救急車を呼んだのだけれど


救急車の中ではもうほとんど意識はなく


そのまま、眠ったままのようになってしまったらしい


5年たった今も一度も意識は戻らないまま


病院の小さな部屋で眠り続けてる



「彼女」には父親がいなかったらしく


母親の収入だけでは入院費が厳しいみたいで


入院費のほとんどは「彼」が出しているらしい


その為に「彼」は今の会社を辞めて


より収入の多い会社に就職した



「彼」の時間は全て「彼女」のもの


そう言われた訳ではないけれど


そうとるしか「私」には出来なかった



昔、恋人と別れたときに



ずっと変わらない愛なんてないと思った



長く一緒に居つづければ



それは形をゆっくりと変えていく



だけど「彼」と「彼女」の愛は形を変えず


誰にも邪魔できずにいる



























携帯をあんなに長い時間握っていたのははじめてだ


文字を打っては消し、打っては消し


何度も何度も打ち直した



なんて打つのが一番正しかったんだろう?


自分の事だけでいいのか


「彼女」に事について触れた方がいいのか


結局、「私」は自分の事だけ返した


だけど、次のメールで「彼」は「彼女」の事に触れてきた



なんだろう、トドメをさすつもりなんだろうか


そんなのとっくにさされてる


恋人から彼を奪って


ドロボウ猫になるのなんて平気


略奪愛とか言われるのだって別に平気


その位の覚悟でいたのに


人でなしと呼ばれるのは


「私」にはきっと耐えられないから







仕事で彼が抜けた穴は正直大きかった


だけど、忙しければ忙しいほど


仕事の事だけを考えていられるので


忙しいほうが「私」にはちょうどよかった


ふとした時に思い出してしまう事さえなければ


そんなに苦痛な日々でもなかったように思えた


「彼」からの連絡が来るまでは



待っていたような、来て欲しくなかったような


そのメールは、「元気?」と一言だけだった


元気な訳がないのに