Domaine Marquis d'Angerville Volnay 1er cru Champans 2004 です。
ブルゴーニュ コート・ド・ボーヌの造り手であるダンジェルヴィルの2004年物は過去に2度飲んでおり、このブログに上げた(☆1、☆2)通り、惨憺たる結果でした。今回は3度目の正直です。
ラベルは、ダンジェルヴィルのお決まりのものです。
キャップシールには穴がありません。
ワインの色は、そこそこ濃いものでレンガ色がかっていますが黒っぽいのがちょっと普通ではありません。コルクの内側の色づきは灰色がかった黒っぽいエビ茶色で、ボルドーの年代物のように濃い紫色の粉っぽさがないところも普通ではありません。
開栓直後も時間が経っても、ピノの葡萄らしい香りが弱く鉄さびのような土臭い香りが強めで、かといって干し葡萄の熟成した香りもなく、香りは全くよくありません。味の方は酸味はそこそこ、鉄さびのようなミネラルっぽいえぐみというか粗さが少しあり、苦みを伴った渋味が強く、苦みが後味に残ります。酸味や渋味に比べ果実味は乏しく、そのせいかアルコールも強めに感じて、ヴォルネイらしい優雅さ・上品さは全くありません。
そこそこの酸味と、この強めの渋味に加え、もしも果実味がたっぷりあればポマールのワインのような力強いワインということができるのですが、果実味の乏しさは大きくワインの価値を下げているように思います。強めの渋味という点は長命である可能性もありますが、渋みの質が長命であるといわれる上等なワインのなめらかな渋みとはちょっと異なる雑なもので、飲んでいて気持ちのいいものではありません。
やはり3度目の正直も、見事外れでした。まだ手持ちに2003年と2005年のダンジェルヴィルのものがあるので、今回の味を忘れないうちに比較してみたいと思います。
ところで、一般的にブルゴーニュの2004年物はどうだったか、あらためて知りたい気分に駆られ、ネット上で調べてみましたので、以下、記事の掲載時期と題名(リンク付)、関連する内容、黒字は私のコメントをまとめました。
リンクの紹介だけでもいいのですが、リンクが切れてしまっては何が書かれていたかわからなくなってしまう可能性もあるので、関心のある部分を抜き書きすることにしました。詳しく、あるいは全文はリンク先をあたってください。※もしも掲載を望まれない場合はメッセージからご連絡ください。
まずは天候に関する情報から、
2004.08.10
「エスカルゴの国から:2004年の寒い夏」
「のどかな風景に見えますが、実は、雹にやられていたのです。葉が痛々しく傷ついていましたが、もっとひどい被害にあった畑もあったそうです。
去年の夏には猛暑があり、今年の夏は雹に降られたブドウ畑はお気の毒...。
夏なのに暑い日が時々しかない日が続いています。
「明日は、今日よりも冷え込みが和らぐでしょう」などと天気予報で言われたりするのですから、笑ってしまいたくもなります。
こちらでは「8月15日には夏が終わる」と言われます。今年は夏がないままに終わってしまうのでしょうか?...」
ジョゼフ・ドルーアン ワイン・ヴィンテージ
概要
「9月がワインを造る」――ワイン生産者にはこんな古い言い伝えがあります。実際のところ、04年のブルゴーニュはあらゆる天候に見舞われました。特に素晴らしかった春、局地的な雹や曇りがちな空、比較的涼しい8月など天候不順といえる夏、そして好天に恵まれた9月は太陽がまぶしいほどでした。暑く乾いた風を伴う夏のような陽気は、ぶどうの成熟を促進し、ぶどう畑も病虫害から充分に護ってくれました。
収穫は結果的にかなり早く始まりました。マコネとコート・シャロネーズで9月13日、コート・ドールで9月20日、そしてシャブリは9月29日に開始しました。収穫の状況は畑によって様々だったため、ぶどうの選別が必要となるヴィンテージでした。ほかの熱心な生産者同様、ドメーヌ・ジョゼフ・ドルーアンでも収穫したぶどうの一部を取り除きました。発酵はかなりゆっくりと進みました。
03年とは対照的に04年は豊作で、最近10年の平均より10%多い収穫となりました(03年よりは30~40%減でした!)。
赤ワイン
ピノ・ノワールらしい色調。酸味の強い赤い小果実を思わせるブーケがあります。味わいはエレガントで気品があり、上品なタンニンのストラクチャーがあります。ピノ・ノワールとブルゴーニュのテロワールの長所があますところなく表現された、楽しく飲めるワインになりました。今飲んでも美味しくいただけます。特に飲み頃は02年より早くなるのは間違いないでしょう。一方、グラン・クリュはまだやや閉じています。
8月は雨が多くて寒く、9月は暑い夏のようだったようです。
ワインの味からすると、果実味などボディの部分は8月の雨と寒さで削がれ、反対に、濃い色やタンニンの多さは9月の暑い夏でもたらされたのでしょうか。
ドルーアンのコメントには、ワインについて問題があることに関する記述はまったくありません。
ドルーアンのブルゴーニュ2004年物をぜひ試してみたいものです。
「2004年度オスピス・ド・ボーヌ競売会 速報」
「前年比123%で、ほぼ2002年の総量と同じになり、一樽あたりの価格でみると、過去三年間で最もお求め安い価格になったようである。偉大な年の呼び声が高い2002年と生産量が同じで、価格が安いということは、どういうことを意味するのだろうか。いろいろ憶測も飛びつつ、結果はワインのみが知ることだろう。」
「2005年度オスピス・ド・ボーヌ競売会 速報」
年号 一樽あたりの価格前年比 ひとこと
2005 10.4%増 偉大な年の誉れ
2004 29.2%減 腐敗果との戦い
2003 21.4%増 酷暑による生産減で高価格
2002 - 偉大な年のひとつ
競売会での前年度比3割もの価格凋落は、前年度の生産減による高騰2割を差し引いても1割減で、ワインに何らかの問題があるとの認識があったことの顕れでしょう。
次に、私もよく参考にし、世間的にも定評があると思われる山本昭彦氏のワインレポートをあたってみると、2004年ものの記事があったので集めてみました。掲載時期順です。
2013.12.10 「山本昭彦 ワインレポート 」
「ルロワ唯一のオフヴィンテージ、最後の2004年を開ける」
「オフヴィンテージのないドメーヌ・ルロワの唯一の例外が2004年だ。ラルー・ビーズ・ルロワの心の支えだった夫マルセルが夏に亡くなった。看病で畑の対処が遅れた。グランクリュとプルミエクリュはすべて格下げして、村名とブルゴーニュACとして詰めた。」
「この年は雨がちで、多くの造り手がかび対策に頭を悩ませた。全房発酵するビオディナミの造り手は、レディ・ビートルが発生して、入念な処理を強いられた。」
「高級居酒屋に持ち込んだのは、04のブルゴーニュAC。ブレンドされている畑が、グランクリュのクロ・ド・ラ・ロッシュ、クロ・ド・ヴージョ、コルトン・レナルド、プルミエクリュのサヴィニ・レ・ボーヌ・レ・ナルバントン、ヴォルネイ・サントノ・デュ・ミリュ、村名のポマール・レ・ヴィニョ。普通なら飲めないワインばかり。07年に7000円で購入した最後の1本を開けた。」
「以前と同じ印象を抱いた。オレンジの皮、枯れ葉、ウイキョウの香り。スパイシーで甘酸っぱい。全房発酵による複雑さがあるが、色は透明ではない。レディ・ビートルの影響だ。ビオディナミの生産者は殺虫剤をまかないから、虫がブドウの房の内側にもぐりこんでしまう。虫の体液(リフレックス・ブラッド)などがワインに混じったため、濁りのある味わいになってしまったと見られる。」
「醸造的に正しいかは別として、うまみはあるから困ってしまう。畑のポテンシャルがそれだけあるということか。ダシ的なエキスは十分だが、余韻は短い。ボディは作れても、余韻は作れない。アペラシヨンもわからない。」
「ルロワは後半になってグーッと伸びる……ことはなく、それでも楽しませてくれた。動物的でないため、分厚くて、新鮮な魚との相性もよかった。」
2014.01.08 「山本昭彦 ワインレポート 」
「プリューレ・ロックもはまった2004の落とし穴」
「定温倉庫から最近、取り出した中にプリューレ・ロックが1本だけ含まれていた。ニュイ・サン・ジョルジュのプルミエクリュを詰めたニュイ”1”(アン)。クロ・デ・コルヴェの畑から造られるワインの中では最も低いレンジに属する。」
「2004年は難しい年だ。冷涼で、雨がちだったため、テントウムシが大量に発生した。ビオディナミの生産者は殺虫剤をまかないから、虫がブドウの房の内側にもぐりこむ。虫の体液など(リフレックス・ブラッド)がワインに混じったため、濁りのある味わいになってしまったとされる。全房発酵ならなおさら問題となる。レディ・ビートル・テイントと呼ばれ、世界的に知られている。」
「残念ながら、ルロワと同じ状況にあった。オレンジの皮、スパイシーな風味。松茸の吸い物を思わせるロック節は健在だが、ピュアな果実味や酸の伸びに欠ける。にごった味がして、やや苦味が残る。畑の格が違うが、ルロワの複雑性もない。ロックはさんざん飲んだ。ニュイのドメーヌに訪れて、夜中の1時まで10種以上を飲んだこともある。こういう味わいは記憶にない。」
「この年、ロックはヴォーヌ・ロマネのクロ・ゴワイヨット、レ・オート・メズィエール、レ・スショ、レ・クルをブレンドして格落ちさせVVとして発売した。ルロワと同じく、問題を感じたのだろう。そのロックも共同経営者として参画するロマネ・コンティは、やや弱いが、香り高さも、果実のピュアさもこの世のものとは思えなかった。ワインは自然の産物。造り手も万能ではない。」
2014.07.03 「山本昭彦 ワインレポート 」
「デュガ・ピィも逃れられない、2004年のテントウ虫汚染」
「湿度の高かった2004年は、ブルゴーニュにテントウ虫が大量発生し、ブドウの房の内部にまでもぐりこんで、その体液によってワインが汚染された。農薬を使えば何の問題もないが、優れた造り手の多くはビオロジックかビオディナミに取り組んでいるので、この影響を受けた。評論家のビル・ナンソンが2008年に初めて指摘した。レディバード(レディバグ)と呼ばれている。
私の経験でも、すべてを格下げしたルロワやプリューレ・ロックは、ピュアさに欠けて、色調が早くからレンガを帯びていた。全房発酵を行う造り手にとって、テントウ虫を取り除くのは難しかっただろう。」
「色調は若々しい。輝きのある澄んだ赤みの強いルビー。ダークチェリー、カシスのリキュールの香り。抽出はクロード・デュガほど強くない。ピュアで、フルーティなのだが、最後にかすかな苦みが残る。
熟成による複雑性ではない。デュガ・ピィの10年たったワインに苦みはない。樽香でもない。このキュヴェはヴィンテージ違いを何度も飲んだのでわかる。いつもなら、余韻がきれいに伸びていくはずが違う。香りの進化も足りない。この年、ベルナール・デュガがどの程度、全房発酵を導入したかは不明だが、明らかにレディバードの影響を受けている。」
「優れたセンスを持つフウのソムリエの方も、違和感を感じたようだった。2004年では、フーリエは問題なかったと話していた。それは、ナンソンも指摘していて、少しなら複雑性につながるとしている。ロマネ・コンティもそうだったかもしれない。」
2014.08.26 「山本昭彦 ワインレポート 」
「2004ロックはよどんでいる、テントウムシの味!?」
「ルー・ビーズ・ルロワとアンリ・フレデリック・ロック。ブルゴーニュを代表する造り手である2人の関係は微妙だ。
。。。。。
ところが、2004年の2人のワインはよく似ている。皮肉なことに。ビオディナミで全房発酵という造りが似ているから、同じ問題を抱えている。
レディバード(レディバグ)の影響が顕著だ。冷涼で、雨がちだったため、テントウムシが大量に発生した。ビオディナミの生産者は殺虫剤をまかないから、虫がブドウの房の内側にもぐりこむ。虫の体液(リフレックス・ブラッド)がワインに混じり、濁りのある味わいになった。除梗すれば、粒はバラバラだから、対処できるが、全房発酵では虫を取り除くのは難しい。」
「今回飲んだヴォーヌ・ロマネVVは、クロ・ゴワイヨット、レ・オート・メズィエール、レ・スショ、レ・クルをブレンドして格落ちさせた。グランクリュを格落ちさせて、ヴォーヌ・ロマネとして発売したルロワと同じだ。」
「色は30年たったブルゴーニュだ。茶色なのだが、濁っていて、透明感がない。健全とはいえない。香りはオレンジの皮、黒いキノコを感じ、悪くない。しかし、パレットはバラバラだ。伸びも広がりもない。苦みが残り、余韻は短い。アルコール度は11・5%の表示。かつて、ポンソ1994のクロ・ド・ラ・ロッシュを飲んだ時の、酸化防止剤がなくて酸化した、よどんだ味わいを思い出した。」
「このワインを7500円で安いからと買って、5年も寝かせた判断は間違いだった。若かった時ならまだ飲めたかもしれない。だが、ブショネは時間がたつと熟成香と混じって、さらにひどい香りになるように、これもつらい境地に達していた。」
「ロックが2004にワインを格落ちさせたのも、ルロワと同じ。量が少ないからというより、品質が見合わなかったからだろう。ルロワもロックも神ではない。セラーに2004がいくつかあるのを見てため息をついた。」
2015.06.02 「山本昭彦 ワインレポート 」
「ワイン会で受け狙いは失敗、ルロワとマーカッサンの屈辱」
「ルロワのヴォーヌ・ロマネ2004はよもやの期待をかけていたが、むなしかった。レディバグの影響は避けられない。オレンジの皮の香りはいいのだが、発展性がない。味わいは苦みを伴う2004独特の濁ったもの。テロワールがない。いや、それは当たり前で、これはロマネ・サン・ヴィヴァン、リシュブール、ヴォーヌ・ロマネのボーモン、ブリュレ、ジュヌヴリエールを混ぜている。」
2015.08.28 「山本昭彦 ワインレポート 」
「飲みごろの除梗2004、クロード・デュガのシャルム・シャンベルタン」
「ブルゴーニュ2004をすべて駄目と決めつけるのはよくない。クロード・デュガのシャルム・シャンベルタンを飲んで考えを改めた。
2004の夏は嵐と日照不足で、ウドン粉病が広がり、腐敗にも悩まされた。うどん粉病はシャルドネだけでなく、ピノ・ノワールも深刻だった。9月の晴天でフェノールはある程度熟したが、グリーン・ハーヴェストなど夏の手入れと厳しい選果が必要だった。
ルロワもプリューレ・ロックも、ビオディナミで全房発酵で造るドメーヌは、レディ・バグに悩まされた。ところが、除梗するデュガは問題と無縁。長期熟成型ゆえ、デュガのグランクリュは10年程度では硬いが、このシャルム・シャンベルタンは飲みごろに入っていた。」
「明るく深いルビー色。レッドチェリーのコンポート、湿った土、ロスートビーフの香り。輝くようなピュアな果実があり、タンニンは柔らかく溶け込んでいる。2004に特徴的な青い硬さはなく、熟した赤系果実がようやくほどけて、複雑で精妙な味わい。長い余韻にほんのりと腐葉土の香り。」
相変わらず情報が多く、味・香りも具体的でわかりやすいレポートに感心させられるが、ルロワ、ロック、デュガ・ピィとも、ワインの異常性とガッカリ感がよく伝わります。しかしながら、クロード・デュガに関してはそれほどでもないようで、難しい年ではあるが大丈夫なものもあるという結論でしょうか。
私の飲んだダンジェルヴィルは、サトクリフの記述によれば全除梗ということなので、クロード・デュガと同様な出来のはずですが、「ピュアな果実」もなければ、とても「タンニンは柔らかく溶け込んでいる」とは感じませんでした。レディ・バグ混入だけが問題なわけでもなさそうです。
山本昭彦氏のワインレポートも、おそらく熟成を待ったものでおよそ10年後のものからしかないので、他のサイトもいくつか当たり、記載された年順に並べてみました。
さすがに売り手のワインショップ物は早くからコメントを出していました。
2007頃?
「ワイン・ショップ イーエックス[eX-WINE] ドメーヌ・ルロワ・ブルゴーニュ・ルージュ2004」
「ブルゴーニュ全域がベト病の被害に見舞われた2004年、ドメーヌ・ルロワもわずかながら被害にあい、マダム・ルロワは前代未聞の発表を行ったんです。『2004年、ドメーヌ・ルロワは1級・特級ワインを造りません』」
「このブルゴーニュ・ルージュの正体は、なんと特級クロ・ド・ヴージョやクロ・ド・ラ・ロッシュ、さらにはポマール1級、サヴィニー1級などをブレンドしたもの。かつてこんなに贅沢なブルゴーニュ・ルージュがあったでしょうか? まさに究極のブルゴーニュ・ルージュです。」
「試飲してみると、確かに例年のルロワに比べて濃密さに欠けます。でもそれはルロワの平均に比べれば、というだけのことで、一般的な特級ワイン以上のクオリティなんです。それが村名どころか、ブルゴーニュACにまで格下げするなんて……。」
「ただ、お値段も確かにブルゴーニュ・ルージュとしてはモンスター級の《14,700円》となっていますが、中身が5万円前後のクロ・ド・ヴージョや、10万円近いクロ・ド・ラ・ロッシュだということを考えると、信じられない安さです。」
2007.03.30.
「ワイナリー和泉屋・治彦的ワイン日記 やっぱりすごいや、プリューレ・ロックの2004」
「ニュイ・サン・ジョルジュ1erCru ニュイ・アン2004 を。
ゆっくり時間をかけ、開きだしはじめるとロック独特の味わいが
しっかりと出はじめるのです。
そうなると俄然美味しくなり、このワインの価格がいかに安いかを
感じることができると思います。
よく、『ニュイ・アンはやっぱり他と比べ落ちるよな』ということを聞きますが、
私たちも抜栓3時間後のワインを飲まなければ
きっと頷いていたことでしょう。」
「ヴォーヌ・ロマネ・V.V. 2004
ロックの独特のシャンピニオンのようなトップノーズにはじまり、
比較的シャープにまとまった感じの第一印象。
グラスの中で温度があがりはじめると香りも非常に豊になり
シャープさにふくらみがでてきます。
シャンピニオンの様な香りの奥にある赤い果実の香りも徐々に前面
にでてきて、香りの複雑さも楽しめます。
味わいも果実味のバランスがゆっくりと広がり、とても豊かな味わ
いに変化してきます。」
売り手なので悪いコメントがないのは当然として、後になって山本昭彦氏のような著名な方が芳しくないコメントをするとは、よもや予測しなかったことでしょう。しかし、良心的で本当に味のわかる売り手ならば、購買意欲を掻き立てて売り込むような記述はしないのではないでしょうか。
2009.12.15.
「ブルゴーニュルージュ2004テイスティングセミナー@グランドプリンスホテル新高輪」
「今回試飲の2004年は湿気が多かった年で、栽培に差異が出てドメーヌの差が多い年だったとのこと.そのため、テイスティングをして買う必要があるが、価格は安定しており現在楽しめる状態になっているのでレストラン向けには良いヴィンテージとのこと」
講師は田崎真也氏ということで、この説明は田崎真也氏のものと思われますが、「ドメーヌの差が多い」と言っていることと、信用を失わない程度の売り手としての表現に感心させられます。
コート・ド・ボーヌものの香りと味について、このブログのコメントを引用すると、
6. Beaune Bressandes(Albert Morot)
若干クローズしている。肉、赤系果実のコンフィ、赤紫蘇、鉄等のミネラル、枯れ葉、腐葉土の香り。バランスが良く、タンニンがシルキーにとけ込んでいる。
7. Pommard Jarolieres(Jean Marc Boillot)
鉄を舐めたミネラル感がある.タンニンが強い。レストラン的には飲み頃まで時間が掛かるので扱い難いワイン.ポマールは酸化鉄が多く色が濃い。タンニンの凝縮感がありパワフル。
8. Volnay Les Taillepieds(Domaine de Montille)
果実味が滑らかでバランスが良い。後味がアグレッシブ。酸がしっかりと強く、長期熟成型のワイン。
9. Chassagne Montrachet Clos de la Maltroye(Chateau de la Maitroye)
柔らかい上品さがある。酸はしっかりして赤系果物。バニラを含んだスパイスがある。若干閉じた印象。
「扱い難いワイン」とか「後味がアグレッシブ」とかのコメントに何となく、この年の異常性が感じられますが、概して悪くてもワインとしての許容範囲のコメントになっています。
2011.09.17.
「Ma Vie Quotidienne:2004年のブルゴーニュってどうよ?の会」
「わたしたちのワイン仲間では、04ブル、特に赤ワインは青臭い、茎のような味わい、ってことで話がついています。その年はブルゴーニュ地方でベト病というブドウにカビが生える病気が流行したそうです。また収穫期に天候が悪く果実の成熟が遅れて、このまま待っていてはブドウが木に付いたまま腐ってしまうと我慢できずに早く摘んだ作り手のワインは青臭くなっているとか、また、テントウムシが大発生したのが一因で青臭くなっている・・・・などいろんなこと言われてます。とにかく青臭くて、こんなにヴィンテージ当てが容易な年はありません」
「ブルゴーニュ オート コート ド ニュイ ジャイエ ジル
若木の様な青い香り、ミラベル、樽強くバニラやタンニン口に残る」
「ジュヴレイ シャンベルタン VV アルマン ジョフロワ
赤果実の陰に微かに若木の青さ タンニン、アルコール強く厚みがある」
「シャンボール ミュジニー ドメーヌ モド ぺール エ フィス
甘いイチゴの香りの陰に微かに若木の青さ、平坦で線が細く女性的、余韻短い」
「ヴォーヌロマネ オー・レア ジャック カシュー
赤果実、青野菜、ドライフルーツ、ミネラル、バランスよい。」
「ボーヌ バロ ミノ
熟したイチゴ、果実味たっぷりでチャーミング、やや青い、余韻は短い」
「ポマール ノワゾン ジャン ガローデ
タンニン、アルコール強くしっかり厚みのある骨格 ドライフルーツの様な余韻
でもアフターに軽く青臭さ・・・」
「青臭い」という特徴が一つのキーワードになっていますが、私の飲んだダンジェルヴィル3本にはそのような感触はありませんでした。
2013.06.11.
「ひとりぼっち達のテイスティング勉強会【ブルゴーニュ:7】アルマンルソー、2004年ヴィンテージ4種を検証する」
(ジュヴレシャンベルタンについて)「さて今回の2004年を一通り味わってみると、やはりヴィンテージの負というか、若干2009年と比較すると精彩を欠く出来だったかと思います。といっても十分に素晴らしいのですが。2009年は非常に葡萄がよく出来た年だった為、それに比べると果実味はかなり落ちている印象です。エレガントともいえるかもしれませんが、ややドライな印象を受ける酸が目立つヴィンテージだったと思います。」
2016.01.28.
「シロクマの粘土板:ぼくが考えたブルゴーニュのヴィンテージの雰囲気」
「2004年:ハズレヴィンテージと名高い2004年。そうなんだけど、早飲みには適していた。今はちょっと。」
以上のお二方は2004年はネガティブな印象です。
2016.3.13.
「恵比寿・代官山のおしゃれなフレンチ「epi~エピ~」ブルゴーニュワインの試飲会・・・・ 」
「ブルゴーニュ シリーズ 最後は、シャンボールミュジニー村にしか畑を持たないドメーヌ
《コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ》”ボンヌ・マール” グラン・クリュ 2004年。
・・・・
“ミュジニー” グラン・クリュ最大の所有者にして鉄壁のドメーヌです。
(実は隠れ優良ヴィンテージの2004年なのですが、欲しくてもすでに市場には殆ど流通していません・・・)やはり間違いなく2004年は、とても良い出来のワインが多いです。」
このようなコメントを見ると、人の味覚は実に様々で、それを受け入れる必要を感じさせられます。
しかしながら2004年に対して「優良ヴィンテージ」や「とても良い出来のワインが多い」のコメントは稀でしょう。
2016.08.25
「神の雫 Wine Salon: SALON COLUMN Vosne Romanee 2004」
「2004年のブルゴーニュはテントウムシ大発生の被害をどんな生産者も回避できず、ほとんどのワインがテントウムシいりのワインを作っている」と聞いたからだった。事実、8月の最初に飲んだ2004年マジ・シャンベルタンは全然だめだった。夏休みに入る前に飲んだ某ドメーヌのヴォーヌ・ロマネ一級レ・ボーモンも悲しい味わい。色も濁り気味だったし、なにやら脂ぽくて、おいしくなかった。 そんなこともあり、自分がもっている2004年のブルゴーニュを片っ端から開けてみようという気になっているのだ。」
「奥行きのある優美なワインで、脂臭さなどまったくなかった。」
「この村名ワインにはジャイエのワインのように、飲んだあと舌の上でいつまでも鳴り響くような長い余韻はないが、ワイン自体の「美味さの余韻」は今も心の中に残っている……。」
このブログは、味や香りに関する表現が「全然だめ」、「悲しい味わい」、「なにやら脂ぽくて、おいしくなかった」というように具体的な表現に欠け情報に乏しく、山本昭彦氏のワインレポートとは対照的に参考にならないのですが、それでもネガティブな印象だけはよく伝わってきます。しかし、「脂ぽく」とか「脂臭さ」のあるワインとはどのようなワインのことか、一緒に経験してみたいものです。
2017.12.25.
「繭のワイン日記:Nuits St Georges 1er Cru Les Pruliers 2004 Taupenot Merme」
「今回のワインはニュイサンジョルジュの中でも1、2を争う人気畑「プリュリエ」!
繊細でチャーミングなワイン造りを掲げていますが、このプリュリエはなんと男性的か!
13年たっているのでもう丸く優しくなっているかなと思いましたが
飲んでみて驚きました!味わいがシリアス(笑)
祖父に会いに行き、ウキウキ気分でおじいちゃーん!って駆け寄ると
ファーストコンタクトで叱られた気分です(笑)わかりづらいですね...
優しい味わいにを期待して甘えようと思いきや、全然甘えられず
厳しく接しられたかのような.....
気持ちを切り替えてまたまた飲んでもやっぱり変わらず。
重心の低さ、ワインのテーマがシリアスで、逆にこういう世界観を持った
ワインにはなかなか出会えないので良かったです!
あと6、7年たつとどうなるか楽しみなのと今のこの世界観にあった
シチュエーション、タイミングでまた飲みたいなと思わせるワインでした!!」
このブログでは、味や香りに関する表現が、具体的ではあるものの味覚・嗅覚とは関係のないものですが、2004年のダンジェルヴィルを味わった後にこのコメントを聞くと、なるほど当たらずも遠からず、と思ってしまいました。ブロガー本人も言っているように、飲んだことがない方には、さぞかし「わかりづらい」でしょう。また、あと6、7年経っても、多少ましになりはしても、きっとおいしくはならない気がします。飲むのであれば、その前後の年の2003年物か2005年物をお勧めします。
2004は、ルロワも前代未聞のことをしたような前例のない年なので、今後もう巡り合うことはそうはない気がしますが、古酒だからと言って珍しがって手を出す時は要注意であることには変わりありません。
長々と書きましたが、参考になれば幸いです。