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病院船10年の取り組み

前回のブログでは、病院船整備法の内容を中心に報告したので、今回は本法が成立するまでの取り組みを中心に報告する。

国会での病院船整備の議論が活発化した2012年には、私の地元、函館市においても病院船整備の期待が高まっていた。その理由は、日本海と太平洋の両方へのアクセスが容易な地理的な特性を活かした基地港への期待があったからだ。

 

公明党函館総支部では、2012年に道南での期待の高まりを背景に公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの協力のもと「病院船誘致函館フォーラム」を開催した。あわせて、公明党函館総支部では病院船整備を求める署名活動を行い、約10万筆の署名を持って防災担当大臣に要請を行った。

 

地方の期待は高まっていったのだが、2013年度政府見解により病院船整備はほぼ否定されてしまうことになる。

国会には、「病院船建造推進超党派議員連盟」(建造推進議連)があり、与野党の大物議員がズラーッと名を連ねている。これには末席ながら私も参加してきた。建造推進議連は、一貫して500床2万トンの病院船建造を政府に求めてきた。2013年度政府見解では、総合型病院船としてこのスペックが検討されたが建造費・維持費が巨額などの理由により否定されてしまった。

しかし、その後も建造推進議連では500床2万トンの病院船にこだわり続けた。その結果、2020年度補正予算による500床2万トンの「病院船の活用に関する検討」を勝ち取ったともいえる。

私は、政府が否定しているにも関わらず毎年のように同じ要望を繰り返す建造推進議連では、災害時の船舶活用が進まないと考え、2014年に発起人の一人となって自民党と公明党による「海洋国日本における災害医療の未来を考える議員連盟」(災害医療議連)を設立した。

2013年度政府見解は、病院船をほぼ不要と結論付けたものであったが、急性期病院船だけは、民間船舶や自衛艦などの既存船舶の活用により導入を検討できるとした。その後、内閣府防災では海上自衛隊やDMAT等の協力のもとで大規模な防災訓練を複数年にわたり行ってきた。

災害医療議連では、これらの訓練を視察するとともに、米国海軍病院船マーシーの東京港寄港や東京オリンピック・パラリンピック競技施設の海上からの視察など多方面から病院船の有効性を検討してきた。この間、議員連盟を粘り強くサポートしてくれた公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長、災害医療議連の額賀福四郎会長と津島淳事務局長、そして事務局次長の私の4人が、時に萎みそうになる病院船の議論を支え続けてきた。

これらの議論や視察を通じて、とりわけ米国海軍病院船マーシーでの搬送・受入・応急処置の訓練を視察して実感したことは、災害発生時に船舶を活用した医療提供が効果的であるということだった。そこで、議論の深まりを踏まえ、災害医療議連では議員立法の法案作成に取り組むことになった。

議員立法をまとめるにあたり、論点となったのは、病院船をどこが所管するかであった。防衛省なのか内閣府なのかなどを幾度なく議論した。そして最終的な結論としては、内閣に船舶活用医療推進本部を設立し、他省庁の保有とするのか直接保有するのかも含め委ねてしまうというものだった。

ほかにも、2013年度政府見解で巨額を要すると指摘されたスペックは本当に必要か、船舶要員、医療関係者、医療資機材の確保をどうするか、民間事業者の参入をどうするかなども課題であった。

2013年以来のこれらの案件は、政府が、病院船を建造し、船舶・医療の人材を確保し、医療資機材も調達することを前提とすることに起因する課題だ。また、民間事業者の活用も収益を上げることが前提になっていた。そこで、これらの前提にとらわれないことを骨子とすることにした。

すなわち、災害時に医療を提供するための船舶は、独立行政法人や国以外の者が保有できるようにする。また、船舶要員や医療関係者の民間活用を認め、運営も民間資金を活用できるようにするというものだ。これは、東日本大震災以来、民間船舶による災害時の多目的利用や医療搬送などが進んできたことが背景にある。

例えば、津軽海峡フェリー株式会社は、災害時の運用を想定してストレッチャーの搬入が可能なエレベーター、清水供給、電力供給などの設備をCSRの取組としてフェリー4隻に装備している。公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルは、東京オリンピック・パラリンピック時の救急患者の発生に備え東京湾に救急救命艇を配備している。NPO法人ピースウィンズ・ジャパンは、中古船を整備し、災害医療に特化した医療船の実用化を目指している。

法案作成の議論は一年余りに及んだ。最終的に、生煮えの議論を議員立法で明確化するのではなく、実施するための具体的議論は政府に任せる推進法としてまとめることにした。

議員立法の骨子をまとめたところで法案の国会提出を見据え、超党派議員連盟の設立を目指すことになった。野党各党との打ち合わせを経て、2020年2月に全会派参加のもとで「超党派災害医療船舶利活用推進議員連盟」を設立した。

 2020年度第1次補正予算で実施された病院船の活用に関する検討結果は、2021年3月30日に公表された。その内容は、予想されたとおり否定的なものであったが、超党派議連による病院船推進法案の提出の準備は着実に進んでいった。2021年5月の超党派議連代表者会議により各党の党内手続きの状況を確認し、衆議院から法案を提出することになった。私は復興副大臣として政府にいたため、発議者にはならず党内手続きも同僚議員に任せることにした。

そして、2021年6月11日、参議院本会議において「災害時における船舶を活用した医療提供体制の整備に関する法律」(病院船推進法)は全会一致をもって成立した。

病院船整備法が成立!

 2021年6月11日、参議院本会議において「災害時における船舶を活用した医療提供体制の整備に関する法律」(病院船推進法)が全会一致をもって成立した。

これに先立って2020年度第1次補正予算で実施された2度目となる病院船導入の検討結果は、2021年3月30日に公表された。

その内容は、「病院船の有効な医療従事者、運航要員の確保方策は見いだせておらず、また、効果的な平時の活用方策も見いだせていない」と結論された。ただし、既存船舶を活用する場合には「最大の課題である医療従事者の確保の検討を進め、大規模災害時における医療提供体制の強化を図ることが期待される」とされた。

そこで、このたび成立した災害時船舶活用法が重要な役割を果たすことになる。

議員立法のポイントは、災害時に医療を提供するための船舶は、独立行政法人や国以外の者が保有できるようにすること。また、船舶要員や医療関係者の民間活用を認め、運営も民間資金を活用できるようにするものだ。

 本法律は推進法となっており、3年以内に政府は整備推進計画を策定し国会に報告しなければならない。また、内閣に内閣総理大臣を本部長とする船舶活用医療推進本部を設置することにもなっている。

 内閣府防災がこれまでに実施してきた、自衛艦等を用いた大規模地震時医療活動訓練や広域医療搬送訓練は、熊本地震などの広域災害で活かされることはなかった。これは阪神淡路大震災と東日本大震災の近年に二度の大震災を経験して、海からの災害救援を必要としないほど速やかな救援体制が整備されてきた成果と言えるだろう。他方、船舶活用は体制が不十分だったから必要とされる医療提供の範疇になかったとも言える。

 本法律によって、船舶を活用した医療提供体制が整い、関係者の練度が増せば、広域災害においては今まで以上に速やかに被災者を救援することになるだろう。

大阪万博で東日本大震災からの復興をアピール

公明党福島県本部の甚野源次郎議長と伊藤達也県議は、2021年1月に福島県に対し復興の現状の発信と風評払拭のために大阪万博に出展してはどうかと働きかけしていた。甚野議長からは復興庁として出展できないかとの問い合わせがあった。

早速、国際博覧会推進本部事務局に問い合わせたところ、復興の現状などを展示するのは歓迎するとの意向が示され、ブースを借りるなどの出典方法は相談に応じるとのことであった。

「2025年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)の円滑な準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」には、「世界各国の注目が日本に集まる機会を最大限に生かし、東日本大震災からの復興を成し遂げつつある姿を世界に発信する」と記されている。他方、検討を進めていた「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針(案)」には、大阪万博のことは何も記載していなかった。

そこで、復興庁幹部と話し合い、復興の基本方針に大阪万博を書き込むこととし、復興庁として大阪万博への出展を検討することにした。そして、3月9日に閣議決定(第29回復興推進会議)された復興の基本方針には、「2025年日本国際博覧会も含めた各種機会を捉えて復興の進捗や被災地の状況について、正確な情報を随時分かりやすく発信する」との文言が盛り込まれた。

同日に開催された衆議院復興特別委員会において国重徹委員(公明党)から、タイミングよく大阪万博についての復興庁の取り組みを質問され、私から、閣議決定されたばかりの復興の基本方針を踏まえ大阪万博に取り組むことを答弁させてもらった。今後、関係省庁と連携し具体的な取り組みを検討していく。