2023年最初のブログ更新です。
最近はDAMNED MAESTRO関連の話題ばかりだったので、今回はレギュラーモデルを取り上げてみたいと思います。
g7 Specialのラインナップにもあるg7-335シリーズを紐解くと同時に、セミアコ(特に335タイプ)自体の面白さにも迫ってみたいと思います。
まずこちらは発売開始したばかりのモデルです。

g7 Special g7-335/MH w/Bigsby B7 "Black Beauty"

過去製作のg7-335/MS SB
※商品詳細はコチラをご参照ください。
◉ES-335という楽器◉
皆さんご存知の通り335は古くから最も王道で人気のセミアコとして知られていますが、具体的なイメージはどういったものでしょう?
ジャズ、ロック、ブルース、歌モノ、はたまたニューエイジからパンクまで。様々なジャンルで多用されています。
そこから更にイメージを掘り下げていただくとギターの音色に辿り着くと思いますが、この時に皆さんの頭の中で鳴っているトーン。これが不思議な程人によってバラつきがあるのです。
例えばですが、「レスポールスタンダードの王道」と言うと多くの方のイメージが「1959年前後のレスポール」で共通します。
ジミー・ペイジやビリー・ギボンズ、マイク・ブルームフィールドやピーター・グリーンなどといった多くのレジェンドギタリスト達が素晴らしいサウンドを奏でてくれたお陰で、そしてオリジナルレスポールスタンダードの生産年数が短かった(僅か3年弱で生産終了しています)事もあり、割とイメージが共通されているように感じます。
そこで335で考えると、まず多くの方がエリック・クラプトンやラリー・カールトン辺りが一番に思い浮かぶのではないでしょうか。(泥臭い方向に偏ってスミマセン)
しかしこの両者は使用している個体の年代も、そして実際のサウンドもあまりに異なる事に気が付くと思います。
(クラプトンは1964年製、カールトンは1969年製を使用しており、楽器の構造や仕様、プレイする上での感触も大きく異なります。)
それだけでなく、335は1958年から1970年までを追うだけでも、その間細かく仕様が変更されており、都度サウンドや感触も変わっています。
ボディーの厚みやザグリ形状、センターブロックの形状、ネックの仕込み角度やグリップ形状、そしてパーツ類に至るまで、その他諸々が短い期間に幾度にも亘って変更されてきたのがこのギターの特徴です。
故に各個体のサウンドのバラつきも多く、どの個体のサウンドをもって理想とするか、、、といったところで大きく意見が分かれるのが335の面白いところでもありますね。
◉g7-335という楽器◉
そういった性格を鑑みた上で、g7が考える理想の335トーンに挑戦したのが先ほどもご紹介しているg7-335なのです。
そのスペックは特定の○○年製をリイシューしているわけではなく、g7が考える理想のバランスを実現した内容となっています。
それではg7-335の基本構造、概念から紐解いてみましょう。
【ボディー編】
まずボディーには合板を使用しています。ここはよく「単板で製作しないの?」といったお声も頂戴しますが、単板で製作すると良くも悪くも派手過ぎる、鳴りが強すぎる印象を受けます。
伝統的なスタイルは合板である事に加え、先述の理由から単板とする事で汎用性を失うイメージとなる為、g7では合板での製作に拘っています。
ただその合板はハードメイプル+スプルース+ハードメイプルとしており、メイプルにはハードメイプルに拘っています。
ハードメイプルのパーカッシブで力強い鳴り感、そしてスプルースのクリスピーで軽やかな鳴り感が合わさる事でレンジ感の広い絶妙なトーンバランスとする事が出来ました。
加えてハードメイプルには全てカーリー杢の出た素材を採用する事で、見た目の美しさにも一役買ってくれます。
【センターブロック編】
セミアコにとってこのセンターブロックは大変影響が大きく、重要なポイントと考えています。
まずサイズ感は1960年頃をイメージしています。それ以前では幅が広過ぎてソリッド色が強くなる。それ以降ではPUザグりの壁が取り払われるなど、センターブロックの体積が縮小されていきます。
(コントロール配線の作業性向上の為、ザグりの壁が取り払われていきます)
g7ではソリッド過ぎず、しかし余計なくり抜き等の無い無垢なセンターブロックに拘りました。
更に素材には伝統的なメイプル+スプルース以外に、ホンジュラスマホガニーの無垢材で製作したセンターブロックも用意しています。
クリスピーでより伝統的なトーンは「メイプル+スプルース」
レンジ感が広く豊かなボトムエンドを持つ「ホンジュラスマホガニー」
この2種類のセンターブロックから選択いただける、g7ならではの試みです。
シリーズ発足当初からこの両機を多くの方に触り比べて頂いたところ、見事に意見が真っ二つになりました。
半数近くの方がホンマホの方が「理想とする335のサウンド」と評価いただきました。
この事からも先述した皆さんのイメージする335の音色、というのがあまり共通しているものではない事が窺えますね。
【ネック編】
素材はホンジュラスマホガニーを使用しています。
グリップ形状は〇〇年タイプとせず、多くの方にストレス無くプレイしていただける形状を意識しています。
仕込み角度は1960年頃をイメージしました。
初年度の58〜59年頃は仕込み角度が浅すぎる事で良好な弦高が取れず、後年以降は仕込み角度がキツ過ぎる事からg7の狙うロウテンションが得られません。
そこで最も良いバランスである仕込み角を考えた結果、60年頃のイメージとなりました。
無理なく弦高のセッティングも低くでき、同時に甘いテンション感からくる豊かで余裕のある鳴り感を両立しました。
【指板編】
指板にはハカランダを使用していますが、実は近く変更となる予定です。
具体的な期間等は決まっていませんが残り数台程度となります為、どうしてもハカランダをご希望の方は是非お早めにお買い求めください。
【ハードウェアパーツ編】
ペグにはKLUSON社のオリジナルモデルを採用しています。
音色にも大変重要な役割を持つブリッジ周りですが、GuardianのTune-O-Maticを採用しています。

ブリッジはサドルは勿論、オクターブスクリューから台座に至るまで全てブラスの削り出し素材で構成されたオリジナルモデルとなっています。
ブラスは中低域に特徴を持つ硬質な素材。ギターのトーンにも豊かな中低域と逞しいサステインをもたらしてくれます。
テイルピースは削り出しのアルミ素材を用いたオリジナルモデルで、スタッドには鉄製を用いる事で豊かなサステインと仄かな雑味も感じる味わい深いトーンをクリエイトしてくれます。
さて後半が長くなってしましましたが、要するに拘れるポイントや変換期が実に多く、故に正解も数多く生まれるのがこのモデルの面白いところ。
要所要所を理解した上で理想的なバランスを構築していくのはチャレンジングであり、その結果に対する皆さんの反応もとても興味深いものです。
先にも名前を挙げたカールトンが、何故335を選んだのか?といった問いに「万能だから」といった答えを出したのは有名な話ですが、正に万能なのです。
(若きスタジオミュージシャン時代のカールトンは、一本で様々な現場で対応出来るギターという事で335を選んだと言われています)
ルックスから抱くイメージに左右されず、実に多くのスタイル、ジャンルに於いて素晴らしい答えを提示してくれる魔法のような楽器であると思いますし、その概念を突き詰めたg7-335もまた様々なジャンルの方にご愛用いただいております。
もし今回のブログを通じて、335という楽器に興味を持っていただけたなら大変光栄です。(その勢いでg7-335へと通じてくれれば尚嬉しいです)
投稿者:宇佐川