ヴィンテージギターやベースの個体には様々なダメージが確認出来ますね。
使用していく上での傷、塗装の剥がれ、それ以外にも謎に大きな傷。そしてカラーの褪色やラッカーの変色など。
※弊社所有の1961年製Fender Stratocasterです。
それ以外にも、塗膜に細かいヒビのようなものが確認出来る個体が多い事に気が付くと思います。
これらはウェザーチェック(他にも塗膜のクラックと呼ばれる事もあります)と言われる塗膜の割れ、ヒビなのですが、塗膜の経年劣化の一種となります。
ヴィンテージトラッドな楽器を好まれる方はこの経年劣化に萌える性質を持っている方が大変多く、この劣化をむしろ歓迎する向きすらあります。
※細かいヒビのようなものが確認出来ると思います。このヒビの入り方は個体によって様々です。
弊社ブランドのg'7 Specialでは、これらのダメージを敢えて新品時から再現するオプションもご用意しておりますが、やはり購入後自然と劣化していく様を楽しみたい、といったお声も多く、故に大変多いご質問↓
「購入後どのぐらいでウェザーチェックって入りますか?」
「g7の楽器は使用していたらヴィンテージみたいなルックスになりますか?」
といった問いに対するアンサーを本ブログでは取り上げてみたいと思います。
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まずいずれの問いに対しても、結論から申し上げますと"環境と扱い方次第"となります。
傷関係に関してはご自身のプレイスタイル次第ですが、下地からのフルラッカーは非常にデリケートですので嫌でも傷は入っていきます。
最初に付いた傷は皆さんかなりショックらしいですが、すぐに2個目3個目と入っていくので大丈夫です笑
あまり気にせず、是非プレイに集中してください。
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カラーの褪色ですが、こちらも防ぎようが無いと思います。
特に赤系→青系の順で非常に褪色し易い傾向にあります。
ですがオーナー様ご自身は毎日見ているので褪色していっている事に気が付かない方が多いです。
何年かしてピックガードの下を見ると褪色前と後でコントラストが出来ています。そこで初めて気が付く、といった方が多いですね。
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変色はカラーではなくトップのクリアラッカーの変色ですが、こちらも焼けてきます。
ですがg7では標準で焼け色の加工を施している場合が多いので、その後の変化はあまり実感しないかもしれませんね。
因みにヴィンテージギターの黄色っぽい焼け色は、紫外線等で焼けた変色以上にタバコのヤニが原因として大きいです。
昔は室内やバー店内等でも皆さんタバコを吸われていました。その煙に長時間晒され、ヤニ汚れが塗膜に付着し黄色く変色する、といった具合です。
私自身、過去に商品のヴィンテージギターをコンパウンドで必死に磨いて色艶を復活させた経験が何度もあり、磨いた後はクロスが黄色を通り越して真っ黒になっていたものです。
今ではタバコの煙に晒されるという環境も見られなくなりました。ですので予めの演出として焼け色の加工を施しています。
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それでは本題として、今回はウェザーチェックに関する内容を掘り下げてみましょう。
まずウェザーチェックのメカニズムからご説明すると、気温差と低湿度によるところが大きいです。
現存するヴィンテージギターの多くはアメリカで流通した過去を持つものが多いですよね。
まず乾燥に関して。
行った事がある方ならピンとくると思いますが、アメリカは日本とは比較にならないほど乾燥している地域が多く、同時にその乾燥度合いも強力です。
私自身もカリフォルニアやネバダに行った時は日照りの強さと乾燥の強烈さに驚きました。(当時結婚前の妻と一緒でしたが、妻は目の乾燥でコンタクトが入れられなくなってました汗)
対して日本はというと基本的には高温多湿です。
寒い地域であってもロスみたいに毎日のように晴れ、というわけではありませんし北海道以外は梅雨も存在します。
こういった気候はラッカーの乾燥及び劣化が比較的遅く、ウェザーチェックの原因の一つである「乾燥」といった観点では少し弱いです。
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次に気温差ですが、これはただ単に寒い地域であればいいわけではなく、気温差に晒される環境であるかどうか、が重要です。
例えばアメリカで音楽が盛んな地域の一つとしてニューヨークが挙げられますが、ニューヨークの冬は極寒です。
同じ大都市である東京や大阪とは比較にならないぐらい寒い地域です。
アメリカではバーやレストラン、はたまたボーリング場など様々な場所でミュージシャンが雇われ、毎週毎曜日のように各地でライブステージが催されています。
勿論その多くはきちんとギャラが支払われ、こういったローカルなスポットでのみの音楽活動で生計を立てているミュージシャンがアメリカには沢山存在しています。
ライブハウスのような専門性の高い施設だけでなく、一般の方が出入りする多くのスポットで音楽が必要とされ、そして音楽に対する距離感が非常に近いといった印象です。
個人的にはとても羨ましく思いますね。
話を戻しましょう。
そういった会場まで自分の車に楽器を積んで移動するのですが、向こうではとにかく移動距離が長いです。
東京や大阪のように都心部に住み、電車やタクシーでササっと移動出来る範囲内に人が集まっている訳ではなく、いちいち移動距離が長いのです。
隣町のバーまでライブしに行こう。車(なかなかの速度で笑)で1時間半。
週末はギャラも良いレストランだから州を跨いで3時間、、といったように日本人の感覚からすると都度の距離感が大きく異なっており、その間楽器はトランクなどに放り込まれています。
トランク内はエアコンも効いていないのでケース内部までキンキンに冷えます。
その状態でエアコンのよく効いたバー店内に、そして照明他で一層暖められたステージで突然ケースを開けます。
その瞬間にキンキンに冷えた塗膜が暖かい外気に晒されてピシピシっと一気に割れる。
といったケースはきっと多かったであろうと推測されます。
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日頃から乾燥した地域でラッカー塗膜はみるみる内に乾いて硬く薄くなり、各所への長距離移動で過酷な気温差に晒され、そういった環境下で10年愛用。
ラッカー塗装の楽器が無事でいれるはずもありません。ボロボロになりますよね。
対して日本は高温多湿で楽器を持った長距離移動も少なく、何よりモノを大事にする国民性です。
弊社のブランドをご愛用頂いているオーナー様も、多くは大変丁寧に扱って頂いております。
確かにボロボロで草臥れたルックスの楽器はカッコ良いですよね。出来ればご自身で使っていく内にヴィンテージギターのようなルックスになって欲しいと願う方も少なくないと思います。
ですが実際はなかなか難しい環境である事も事実です。
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そこで弊社ブランドでは予め使い込まれたヴィンテージルックをリアルに再現するエイジド加工をオプションとしてご用意しております。
これらはPerfect Agedというオプションになり、オーダー時¥175,000〜のオプション価格で追加出来ます。
お声として多いのは、傷関係は自分で使用していく上でついていって欲しい。けど日本では入り辛いウェザーチェックだけ入れて欲しいといったご要望です。
そういったご要望にお応えするのがこれらの画像にあるようなLightly Agedです。
こちらはボディーにのみ打痕+ウェザーチェック(汚し色や焼け色加工含む)程度のイメージで施工しております。
オプション価格は¥55,000〜となります。
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今回はラッカー塗膜の経年劣化のメカニズムから、それらを再現したエイジド加工のご紹介まで取り上げてみました。
楽器との付き合い方は千差万別ですし何が正解という訳ではありません。
それぞれの価値観と美学に素直に向き合っていただき、ご自身ならではのカッコいいギター、ベースへと成長させていって下さいね。
お手伝い出来ることがあれば是非ご相談ください。
投稿:宇佐川