1983年の夏。
千葉の街には、ロックがすべてを変えてしまうような熱が漂っていた。
あの頃の俺たちは、ただ音に呼ばれるように、千葉文化会館へ向かって歩いていた。
パンクスの誇りと、清志郎への愛を胸に。
何だかんだと言いながら、RCサクセションは好きだ。
いや、忌野清志郎が大好きだ。呼び捨てになんてできるわけがない。
俺たちは当時、彼のことを“清志郎先生”と呼んでいた。
パンク軍団の中にも、元々はRCサクセションが好きだった奴は多いはずだ。
だけどパンクスには妙なプライドがあって、「RCサクセション好き」を公言する奴は滅多にいない。
俺もエーイチも例外じゃない。
それでも根っこでは好きなんだ。大好きなんだ。
そんなRCサクセションが千葉に来るとなれば、行きたくなるに決まってる。
ちょっぴり恥ずかしかったけど、その衝動は抑えきれなかった。
SUMMER TOUR ’83 in 千葉文化会館。
ついに大好きな清志郎先生に会える。
■ 千葉文化会館へ向かうパンクス二人
エーイチと二人で千葉駅から歩いて文化会館へ向かう。
ぞくぞくと会場を目指すRCファンたちを、俺たちは蹴散らし、威嚇しながら歩いた。
バリバリのパンクファッション。
手錠で手首をつなぎ、首にはジャラジャラと鎖を巻きつける。
手に持った鎖をぶん回し、ガチャガチャと地面を叩きながら歩く。
つばを吐き、タバコをふかし、道ゆくRCファンはみんな避けていく。
……快感だった。
会場の周りをうろついていると、雑誌社の奴が声をかけてきた。
テキトウなことを喋って、写真も撮らせてやった。
後日、その写真がロッキング・オンに載っていた。
「奇抜なファッションのRCファン」みたいな扱いで。
わはは。
明らかに正統派RCファンとは違ういで立ちなのに。
髪の毛ツンツンなところだけは似てるからいいのか。
わはは。
■ 清志郎先生、千葉ベイビー!
そしていよいよライブが始まる。
ステージライトをギンギンに浴びて、清志郎が叫ぶ。
「千葉ベイビー! 千葉ベイビー!」
俺たちも負けじと叫ぶ。
「イエーイ! 清志郎最高!」
周りとは明らかに違う異質な二人は、異常なハイテンションでノリノリ。
エーイチなんて調子に乗りすぎて、前にいる奴の頭を小突いたり、首を絞めたり、抱きついたり、やりたい放題。
ビビって逃げそうになったそいつを捕まえて、
「清志郎最高だぜ、なっ」
とか言って握手して離さない。
……可哀想になぁ。
■ 最高の夜
そうやって大興奮のライブは幕を閉じた。
あ〜楽しかった。

