第8回:ダッシュ|電話ボックスと千円札事件 | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

学校帰り、駅近くを歩いていたら目の前の電話ボックスの扉が開き、チンピラ風の男が顔を出してきた。


「おい、お前、これでタバコ買ってこい」

 

そう言って千円札を渡してきた。
一瞬ビビったけど、すぐに思った。
この野郎、夢中で電話してやがるし、足元は突っかけサンダルだし…よし、逃げ切れる!


「は、は、はい、わかりました。銘柄は、な、な、何を…」


ビビってるふりをしながら――ダッシュ!
一目散に住宅街へ走り込む。最寄り駅に向かえば見つかる可能性がある。よし、隣駅だ。
足には自信がある、とにかく走る、走る。猛然とダッシュで駅に駆け込み、電車に飛び乗った。


ゼーゼーしながら握りしめた千円札を確認。やったね、あはは。

 

画像はイメージです


翌日、電車に乗ってたら思いついた。やべーぞ、あのチンピラに待ち伏せされてないか?
仕方ない、一駅手前で降りておくか。そこから遅刻しないようにまた走る。学校に着いたら、またゼーゼーだ。何やってんだ俺。
結局、一駅手前下車生活は念のため1週間ほど続けたのだった。


後悔先に立たず、あーめん。