銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎/ジャレド ダイアモンド
¥1,995
Amazon.co.jp


銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎/ジャレド ダイアモンド
¥1,995
Amazon.co.jp

本の帯には、「なぜ人間は五つの大陸で異なる発展をとげたのか?人類史の壮大なミステリーに挑んだ話題の書」とある。



2000年10月に初版が出てからすでに10年が経つが、いまだに大きな書店には平積みにされている。


上・下巻で649頁という大著だが、この10年間に私も何度読み返したことだろうか。読み始めるとついつい引き込まれてしまうのだ。


目次を見ているだけでも楽しくなる。


「平和の民と戦う民との分かれ道」、「スペイン人とインカ帝国の激突」、「農耕を始めた人と始めなかった人」、「毒のないアーモンドのつくり方」、「食糧生産と狩猟採集の関係」、「なぜシマウマは家畜にならなかったか」、「家畜がくれた死の贈り物」、「文字をつくった人と借りた人」、「発明は必要の母」などなど。


16世紀に起こった「スペイン人とインカ帝国の激突」では、現代の我々から見ると目を覆いたくなるような悲劇であるが、スペイン人ピサロがインカ帝国を征服した主な勝因が「銃・病原菌・鉄」なのだという。


スペイン側は、たった167人でインカ帝国を征服せしめた。彼らは、銃器・鉄製の武器、騎馬を使った軍事技術、また天然痘などの病原菌、航海技術、ヨーロッパの集権的な政治機構、そして文字などをヨーロッパから持ち込んだ


ところが、インカ側はこん棒を主な武器とし、始めて銃や馬を目にし恐れおののき、ピサロがやってくるよりも前にすでに天然痘が大流行していて(病原菌の移動は人の移動よりも早い)、人口も減っていて、文字を持たない彼らは、事前にスペインの情報を得ることができなかった、というのだ。


ヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘は、南北アメリカの先住民の95%を葬り去ってしまったという。


またハワイ諸島では、ヨーロッパ人が次々と持ち込んだ梅毒、淋病、結核、インフルエンザ、腸チフス、天然痘の流行によって、1779年に50万人いた人口が、1853年には8万4千人に激減している。


そう考えてみると大航海時代とか、新大陸の発見とか、聞こえのいい言葉で飾られている歴史というものが、違った観点で見えてくる。


当時のヨーロッパ人は世界に暴力と病原菌を輸出し、征服し、植民地化し、先住民たちを滅ぼし、搾取し、自分たちの帝国を肥え太らせてきたということだ。


また決してヨーロッパ人が優秀で、こういう結果になったのではなく、たまたまユーラシア大陸に家畜に適した動物(馬・牛・豚・羊・山羊など)が生息していたり、栽培に適した植物の野生種が自生していとことが大きかったということを著者は主張している。


決してヨーロッパ人が優秀で、植民地化された地域の住民が劣っていたのではなく、すべてはその土地にあった動植物・気候風土・環境によって、人類の発展が左右されるというのが、新たな観点である。

3つの原理―セックス・年齢・社会階層が未来を突き動かす/ローレンス・トーブ
¥2,520
Amazon.co.jp

未来予測本でもあり、これまでの人類の歴史を3つの原理によって解釈しなおす歴史書でもある。


なぜ、草食系男子が増え、なぜスピリチュアル・ブームがとどまることを知らず、なぜ教育ビジネスやカウンセリングが伸び、同性愛や不倫が増えているのか、なぜ中国が台頭してきているのか、アメリカの衰退の原因は何か、これから繁栄する地域はどこかなどを見事に説明している。


3つの原理とは「性別」、「年齢」、「社会階層」とし、これらの原理が人類がこれまで経験した歴史に密接に関わっていると説明している。


例えば、太古の昔、人類が狩猟採集生活をしていた先史時代は、自然との調和や協働や愛、融和、慈しみなどの「女性原理」が社会を支配していた。


ところが、徐々に「男性原理」にシフトした社会は、争い、卓越、白黒をつけるということを尊び、隣の部族との戦闘に勝つこと、隣の国と戦争し征服することが大きな価値になっていた。


現代は、「男性原理」から「男性原理」と「女性原理」を統合した「両性」の時代へと向かっているという。だから、ユニセックスや草食男子、同性愛などが増えてきているのだという。


また、「社会階層」は大きく、「宗教・精神の時代Ⅰ」⇒「戦士の時代」⇒「商人の時代」⇒「労働者の時代」⇒「宗教・精神の時代Ⅱ」へと変遷しているという。


日本で言うと先史時代から弥生時代くらいまでは、「宗教・精神の時代Ⅰ」、それから「戦士の時代」になり戦国時代を経て、江戸時代に「商人の時代」を迎える。明治維新を経て、大正時代くらいから「労働者の時代」に入り、今はちょうど「宗教・精神の時代Ⅱ」の入り口であるという。


世界的に見ると、大航海時代で「戦士の時代」のピークを迎え、「商人の時代」に入り、イギリスの清教徒革命やフランス革命、アメリカの独立戦争・南北戦争など、いわゆる「ブルジョワ革命」を経て、戦後はアメリカが最も「商人の時代」にフィットした国として最も繁栄した。


また、1917年のロシアの社会主義革命を期に「労働者の時代」が発展し、2030年ころまでは中国・日本・韓国・台湾・香港などの東アジアでピークを迎えると予想している。


そして、1979年にイランで起こったイスラム革命から発展段階に入った「宗教・精神の時代Ⅱ」は2050年ころにアフリカでピークを迎えるとも予想している。


考えてみると高度成長時代からバブル崩壊までの日本の繁栄は、「労働者の時代」の先頭を行く事象だったのかもしれない。現在は、中国にシフトしてしまった感があるが・・・。


我々が考えなければならないことは、現在は「労働者の時代」から「宗教・精神の時代Ⅱ」への過渡期であり、価値観やライフスタイルがどんどん「宗教・精神の時代Ⅱ」へと流れていっていることだ。


それをヒントに新たなビジネスのあり方やビジネス・モデル、新たな組織のあり方や働き方を考えていかなければならない。


「宗教・精神の時代Ⅱ」だからこそ、スピリチュアルが流行るし、カウンセリングや教育に関心が高まってきている。


カウンセリングや教育というのは、新たな時代のシャーマン、すなわち霊感や呪術、予言や知恵によって指導する者にふさわしい仕事なのだろう。


ただ、霊感や呪術といっても今までとは違うもっと新しいスマートな形になるだろう。


そういうトレンドから見ると、コーチやカウンセラー、セミナー講師になりたい人が急激に増えてきたことも納得できる。


逆に言うと、自分の村や宗教(コミュニティ・手法)を上手に作って、そこでシャーマンになりきるということが、新たなマーケティングの手法になりつつあるのかもしれない。

街を見回すと何となくまだ着こなせていないスーツ姿を見かけたり、取引先に電話したり、訪問しても新入社員のたどたどしい電話応対、ぎこちない振る舞いが微笑ましい。

日本能率協会の調査によると、今年の新人は、特に安定指向が目立ち、同じ会社で一生働きたいという人の割合と成果主義よりも年功序列や年功賃金でよいとする人の割合が過去に比べて高いという。


また、人間関係構築のためには飲み会にも積極的に参加するという姿勢が見える。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/100420/bsg1004200503000-n1.htm

ただ、踏まえておかなければならないのは、いくら同じ会社で働きたくても自分の会社が定年までの42年間も存在し続けているかということだ。会社の寿命はどんどん短くなっている。

それゆえ、数年前にキャリアの分野では、エンプロイアビリティ(どこの会社でも通用する雇われる能力)を高めましょうということが叫ばれた。


社内で生き残る力も重要だが、社外でも通用するエンプロイアビリティを磨くことの重要性は少しも変わっていない。むしろ、他が安定志向を持っているからこそ相対的に重要になってくる。

今年の新人研修でも感じたことだが、昨年と比べて優秀な人材が入ってきてはいるが、内向き思考や安定志向で、失敗することや周りの目を非常に気する傾向がある。


もう少し自由に大胆に夢を語ってもいいのにね