- 銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎/ジャレド ダイアモンド
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- 銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎/ジャレド ダイアモンド
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本の帯には、「なぜ人間は五つの大陸で異なる発展をとげたのか?人類史の壮大なミステリーに挑んだ話題の書」とある。
2000年10月に初版が出てからすでに10年が経つが、いまだに大きな書店には平積みにされている。
上・下巻で649頁という大著だが、この10年間に私も何度読み返したことだろうか。読み始めるとついつい引き込まれてしまうのだ。
目次を見ているだけでも楽しくなる。
「平和の民と戦う民との分かれ道」、「スペイン人とインカ帝国の激突」、「農耕を始めた人と始めなかった人」、「毒のないアーモンドのつくり方」、「食糧生産と狩猟採集の関係」、「なぜシマウマは家畜にならなかったか」、「家畜がくれた死の贈り物」、「文字をつくった人と借りた人」、「発明は必要の母」などなど。
16世紀に起こった「スペイン人とインカ帝国の激突」では、現代の我々から見ると目を覆いたくなるような悲劇であるが、スペイン人ピサロがインカ帝国を征服した主な勝因が「銃・病原菌・鉄」なのだという。
スペイン側は、たった167人でインカ帝国を征服せしめた。彼らは、銃器・鉄製の武器、騎馬を使った軍事技術、また天然痘などの病原菌、航海技術、ヨーロッパの集権的な政治機構、そして文字などをヨーロッパから持ち込んだ。
ところが、インカ側はこん棒を主な武器とし、始めて銃や馬を目にし恐れおののき、ピサロがやってくるよりも前にすでに天然痘が大流行していて(病原菌の移動は人の移動よりも早い)、人口も減っていて、文字を持たない彼らは、事前にスペインの情報を得ることができなかった、というのだ。
ヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘は、南北アメリカの先住民の95%を葬り去ってしまったという。
またハワイ諸島では、ヨーロッパ人が次々と持ち込んだ梅毒、淋病、結核、インフルエンザ、腸チフス、天然痘の流行によって、1779年に50万人いた人口が、1853年には8万4千人に激減している。
そう考えてみると大航海時代とか、新大陸の発見とか、聞こえのいい言葉で飾られている歴史というものが、違った観点で見えてくる。
当時のヨーロッパ人は世界に暴力と病原菌を輸出し、征服し、植民地化し、先住民たちを滅ぼし、搾取し、自分たちの帝国を肥え太らせてきたということだ。
また決してヨーロッパ人が優秀で、こういう結果になったのではなく、たまたまユーラシア大陸に家畜に適した動物(馬・牛・豚・羊・山羊など)が生息していたり、栽培に適した植物の野生種が自生していとことが大きかったということを著者は主張している。
決してヨーロッパ人が優秀で、植民地化された地域の住民が劣っていたのではなく、すべてはその土地にあった動植物・気候風土・環境によって、人類の発展が左右されるというのが、新たな観点である。