続編〜 HUET PARIS TRITONIX 6×36 解体新書 | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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注 ※ 本ブログの全ての記事は、極力 PC版にて、

  ご覧になられる事をお勧め致します。

  スマートフォン版だと、非常に読み辛いかと思います。

  スマホでご閲覧を頂いてます方々には、

  ご不便をお掛けします事、どうかご容赦願います。

 

 

さて、前回の続編である。

 

前回記事 ↓

 

 

 

フランス軍 双眼鏡マニアの間でも、あまり知られていない、

 

現在世界中で、恐らくは100台も現存していないのでは?

 

と推測される、HUET PATIS TRITONIX 6×36 の

 

内部をこうして公開されるのは、世界で初めての事であり、

 

双眼鏡の歴史的にも極めて貴重な記録として、

 

以下、記事に残しておきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早速まずは、対物部の様子であるが、

 

対物部を分解するには、小さな止めネジを

 

緩める必要があるようだった。

 

 

見過ごしてしまいがちな、この小さなネジによって、

 

対物筒が固定されているので、

 

知らずにうっかり対物筒を外そうとすると、

 

痛ましい結果を招いてしまう事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

流石に、約100年も前の製造個体なので、

 

経年の汚れが、各所凄まじいものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらの汚れを、まずは徹底クリーニングするところから始まるのだが、

 

クリーニングと言えば、私はレンズクリーナーは勿論の事、

 

全てのクリーナー等のケミカル製品には、かなり強いこだわりがあって、

 

これまでも良さそうなモノは、片っ端から試して来た。

 

 

例えどれだけ高価であっても、高性能で高品質であれば、

 

躊躇無く、採用する事にしている。

 

常に、その時点で考え得るベストな製品を

 

使用する事にしている。

 

 

なので結果的には、クリーナー類やケミカル製品の殆どは、

 

かなり高価なモノが多くなってしまったが、

 

コストよりも、品質最優先、双眼鏡ファーストの姿勢は、

 

決して妥協したくない私の信念でもある。

 

 

さて、オーバーホールを行った対物部の部品達は、

 

年代的に、贅沢にも真鍮製のものも多く、非常に美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

対物レンズには、コバ塗りが施行されていたが、

 

奇跡的に、剥げる事なく良い状態を保っていた。

 

 

古い個体は殆どの場合、対物レンズのコバ塗りが剥げており、

 

我が国が誇る Nikon製品なんかでも、

 

昭和時代のモノは、大抵の場合、

 

対物及び接眼レンズのコバ塗りが剥げてしまっているので、

 

本来の見え味、性能を発揮出来ていない場合が多い。

 

 

これだけ良い状態が温存されているのは、

 

極めて稀な事例である。

 

 

もしかすると、後から修復された可能性もゼロではないが、

 

その辺りは知る術も無い。

 

ただ、当初の対物部の状態から考えると、

 

恐らくはオリジナル状態だと考えて良いかと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に接眼部であるが、やはり各所に小さな止めネジが存在する。

 

何とも芸が細かい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

接眼筒を外し、プリズムカバーを開ける。

 

プリズムカバーも、汚れと腐食で、

 

刻印された文字も判別出来ない状態であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムカバーの汚れを落とし、軽く研磨すると、

 

黄金の真鍮色の地金が現れ、刻印された文字が浮き上がる。

 

 

真鍮製のプリズムカバーは沢山見てきたのだが、

 

本機の真鍮は、とりわけ非常に美しかった。

 

まるで、純金のようであった。

 

 

プリズムカバーの止めネジも、全てオーバーホールを行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリーニングと研磨を行った後は、

 

カバー裏側に、シーリング処理を行う。

 

 

このシーリング材が、また驚く程高価なのだが、

 

現時点では、他に代わるモノがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムカバーを開けて驚いたのであるが、

 

何と、プリズムが四方八方、石膏で固められていた。

 

接眼側、対物側、全てのプリズムが同様であった。

 

さすがに、心が折れそうになった瞬間であった(笑)

 

 

ここまで徹底的に、石膏で固められている例は、

 

これまでで初めて目にした。

 

 

 

 

 

この石膏のお陰で、まるで化石を発掘するような作業が続き、

 

プリズムを取り出すだけで数日を要してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムには、コバ塗りが施行されていた形跡があったが、

 

接眼側のプリズムは、何とも奇妙な事に、

 

上部にだけ、コバ塗りが施行されていた。

 

 

これも初めて目にした例で、

 

合理的と言えば合理的ではあるが、

 

何とも珍しく、奇妙な例ではある。

 

 

ただ、本機に限っては、あまりにもレア過ぎて、

 

他の個体を確認する事は、ほぼ不可能だ。

 

 

恐らくは、石膏から出ている箇所にだけ、

 

コバ塗りを施行したのだと思われるのだが、

 

とりあえずは、元通りに上部にだけコバ塗り施行を行った。

 

 

ところで、この時代の双眼鏡は、

 

プリズムにコバ塗りが施行されている事が非常に多い。

 

第一次世界大戦頃までは、どの双眼鏡も、

 

ほぼ必ず、コバ塗りが施行されていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズム押さえの金具には、錆が盛大に出ていたので、

 

こちらも極力、錆を落としてクリーニングを行った。

 

 

 

 

 

 

 

接眼側の右側の鏡体にのみ、「R」の文字が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

鏡体内部の内壁には、黒塗りがされていた様子だが、

 

かなり薄くなっていたので、再施行を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、プリズム台座の中央部分にまで、黒塗りがされていたが、

 

こちらも修復を行った。

 

何とも丁寧な造りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に接眼部を完全分解して、オーバーホールを行う。

 

 

接眼レンズは、3群5枚構成のエルフレ型と思われる。

 

 

 

 

 

 

 

3群5枚構成の接眼レンズには、

 

全てのレンズに、コバ塗りが施行されていた。

 

 

ただ少々残念な事に、バルサムの状態に少し難があった。

 

 

本来なら、バルサムで貼り合わさったレンズを一度剥がして、

 

レンズの再接着を行いたいところなのだが、

 

本機があまりにも稀少な機種故に、

 

万が一のリスクを考え、今回は現状維持に留めておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

下陣笠部も分解し、クリーニングを行う。

 

 

 

 

 

 

 

全てのクリーニングとオーバーホールを行った後、

 

プリズムをセッティングしたのだが、

 

ここで、プリズムが石膏で固められていた理由が判明した。

 

 

プリズム押さえの金具のバネが、かなり緩くて、

 

金具でプリズムを押さえた状態だけだと、

 

すぐにプリズムが動いてしまうのである。

 

 

これだけ緩いバネのプリズム押さえ金具も、

 

初めて見る例であった。

 

大きなプリズムと、緩くて華奢な金具が、

 

何ともミスマッチに思えたが、

 

フランスを感じた瞬間!?でもあった(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極力、オリジナルを尊重したいのは山々なのであるが、

 

再度石膏で固めるのは、さすがに憚られるので、

 

光軸を調整した後、エポキシ系樹脂で固定した。

 

1990年以降の双眼鏡によく見られる手法である。

 

 

 

 

 

 

 

 

本機は決して気密性の高い構造では無い事は百も承知だが、

 

念の為に、内部にアルゴンガスを封入し、

 

最後に組み立てて完成である。

 

 

ちなみに アルゴンガスは、よく使われる窒素ガス以上に

 

不活性率が高いので、より強力な防カビ効果、

 

及び、防錆効果、結露防止、等が期待出来ると共に、

 

窒素ガス以上に、ガスが抜けにくい性質を持つ。

 

加えて、全ての波長域に対する透過率がほぼ100%と言った、

 

理想的とも言える気体である。

 

 

経年によって塗装が剥げて、真鍮の地金が出た部分と、

 

上質な塗装の黒色のコントラストが、何とも美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーバーホール前後のビフォーアフター。

 

 

 

 

 

 

 

さて、無事に全てのオーバーホールを終えた、

 

HUET PARIS TRITONIX 6×36 の見え味であるが、

 

これがまた、覗いてみて驚かされたのである。

 

 

FOV = 184m/1000m ( 10°30) の広い視野は勿論の事、

 

SARD Mk43 6×42 や、blc 8×60 等と同様に、

 

覗いた際の視野環が非常に広くて大きく、

 

何とも広々とした、開放的な視界であり、

 

像の抜け感や透明度が抜群で、解像度も非常に高い。

 

 

接眼レンズのバルサムの再接着を行ったとすると、

 

更にレベルが上がるかと思うと、恐ろしく高性能である。

 

 

特筆すべきは、周辺像の崩れの少なさで、

 

特に非球面レンズを使ってる訳でも無く、

 

エルフレ型であるにも関わらず、

 

見事な収差の少なさ、良像範囲の広さである。

 

 

エルフレ型で、尚且つ これだけの広視界で、

 

ここまで良像範囲の広い機種は、

 

他にはあまり見た事が無いように思う。

 

HUET PARIS 恐るべし!! である。

 

 

先日の、広視界6倍機の名機でもある、

 

ROSS RONDON STEPNAC 6× よりも、

 

確実にランク上の像を見せてくれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれ、これだけ稀少な機種を、

 

こうして皆様と共有出来る事は、正に奇跡であり、

 

何とも幸運で光栄な事だと、改めて感じ入る次第である。

 

双眼鏡の神様に、感謝する以外にない。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

※ 記事を執筆するに当たって、本機のオーナーX様、

 ハンスシーガー博士、フランス Pietrini 氏に、

 深く感謝申し上げます。

 

 

〜 お陰様で5周年 〜

皆様方には、心より感謝申し上げます。

 

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