デルタレム DELTAREM 8×40 完全レストア | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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〜 SINCE 2015.4.8

 

CARL ZEISS JENA DELTAREM 8×40

 

大変幸運な事に、私はこれまでに、

 

5台以上の、この唯我独尊の名機を手掛けさせて頂いた。

 

 

また、大変興味深い事に、その殆どのオーナー様が、

 

星見を趣味とされる方々であった。

 

 

折りしも、つい最近 CARL ZEISS から、

 

同じ 8×40 と言う大変に珍しい規格を持つ新製品、

 

SFL 8×40 が発売されたばかりであるが、

 

時の流れを感じさせると言うか、

 

それぞれの時代を反映していると言うか、

 

見た目の印象も、全く異なるのが面白い。

 

 

さて、CARL ZEISS JENA DELTAREM 8×40 、

 

8×40 瞳孔径 5mm、FOV= 198/1000m ( 11.2° )  と言った、

 

古今東西、本機以外には他に例のないような強力なスペックと、

 

非球面レンズを採用しているとは言え、

 

周辺まで歪みの少ない像とは決して言えないのだが、

 

それでも、このデルタレムが見せてくれる像には、

 

本機でしか表現出来ない、独自の世界観や美しさがあり、

 

星見をされる方には、とても魅力的なのかも知れない。

 

 

いずれにしても、このような魅力的な双眼鏡は、

 

もう2度と、この地球上で作られる事はないだろう・・・

 

 

 

デルタレムは過去にも2度、記事を書かせて頂いたので、

 

参考までに、以下に添付させて頂きたいと思う。

 

 

こうして振り返ると、結果論ではあるが、

 

2年毎にデルタレムの記事を書かせて頂いているようだ。

 

 

実は、本記事は今年の6月にアップ予定で、

 

途中まで書いていたのだが、なかなか仕上げる時間も取れず、

 

ようやく今となってしまった。

 

我ながら、呆れるくらいの筆不精である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のデルタレムも、ノンコートのバージョンであった。

 

と言うよりは、恐らくなのであるが、

 

ノンコートレンズが、元々のオリジナル状態であり、

 

最初の記事のレンズコーティングバージョンは、

 

後から別途、レンズコーティングをされた可能性が高いように思う。

 

 

ただし、それが CARL ZEISS JENA による、

 

当時のアフターサービスが存在したのか、

 

それとも、何処か民間業者によるものなのかは、

 

現時点では定かでは無い。

 

 

何故、ノンコートがオリジナルだったのか、

 

その理由は、CARL ZEISS JENA では、戦前はまだ

 

民生機には レンズコーティングを行なっておらず、

 

民生品の双眼鏡に初めてコーティングがされたのは、

 

確か、1945年であったはずだからである。

 

 

量産体制として、レンズコーティングが採用されたのは、

 

その2年後の1947年からだったように思う。

 

そして、1951年からは、1Qバージョンが開始される。

 

 

 

話を本題に戻させていただく。

 

今回、ご依頼を頂いたデルタレムは、

 

プリズムカバーも含めて、外観が少々残念な状態であった。

 

 

その為、通常の光学系のオーバーホールだけでなく、

 

プリズムカバーの再塗装や、割れ部分の修復など、

 

外観の修復作業も加わったので、かなりの時間を要してしまった。

 

 

ほぼ全ての光学系にも、カビが盛大に発生しており、

 

文字通りの、フルオーバーホール、フルレストア、となった。

 

 

 

まずは、こちらが完成後のデルタレムの勇姿である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当初、右のアイカップに割れが生じていたので、

 

これをパテで埋め、修復させて頂いた。

 

 

デルタレムのアイカップは艶やかで、とても美しいので、

 

極力、大切に扱いたいものである。

 

 

 

 

 

 

上陣笠の留めネジは欠損していたので、

 

在庫部品より補充させて頂いた。

 

また、位置もズレていた。

 

 

 

 

 

 

この部分の、留めネジの欠損や破損、位置ズレは、

 

デルタレムに限らず、中古個体には多く見られる。

 

 

 

接眼レンズのコバ塗りも、修復させて頂いた。

 

 

CARL ZEISS JENAに限らず、Nikon機などでも、

 

対物レンズや接眼レンズのコバ塗りが、

 

経年によって、剥げてしまっている個体は本当に多い。

 

 

と言うよりも、殆どの場合、

 

剥げていると思って間違い無いように思う。

 

 

例えば、以下はNikon機の例だが、

 

殆どの場合はこのような状態である。

 

 

 

 

 

 

 

当然、剥げてしまった状態では、

 

当初の性能は発揮されないと思われるので、

 

ここはやはり、丁寧に復旧しておきたいポイントである。

 

 

画像の一番右側は、非球面レンズのユニットである。

 

 

 

 

 

 

また、接眼レンズにはカビが発生していたので、

 

これらもクリーニングを行い、再発を予防する為にも、

 

殺菌処理をさせて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

ついでに、対物レンズ枠周囲のコバ塗りも、

 

再塗装させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

全体的に、カビの発生が酷かったので、

 

鏡体内部を徹底的にクリーニングを行い、

 

及び、殺菌処理をさせて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

フォーカスリングも固着して、少し固くなっていたので、

 

完全に分解して、オーバーホールを施した。

 

 

デルタレムは、デルトリンテムリヒターに代表されるように、

 

1932年10月より新たに始まった試みである、

 

鏡体の材質を、それまでのアルミ合金から、

 

エレクトロンと呼ばれる、マグネシウムが主体の合金で出来ており、

 

鏡体の徹底した軽量化が図られている。

 

 

尚、以前の過去記事では、

 

デルトリンテムリヒターモデルや、デルタレムは、

 

「ヒドロナリウム合金で出来ている」、と

 

間違った記述をしてしまい、大変申し訳なく思うと共に、

 

この場をお借りして、深くお詫び申し上げたいと思う。

 

 

今後、適宜修正して行く予定ではあるが、

 

正確には、リヒターモデルもデルタレムも、

 

エレクトロン が正解である。

 

 

そして、このエレクトロンが採用された個体のフォーカスリングは、

 

独特の、樹脂製のような材質で出来ており、

 

ここでも、軽量化が図られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、本機のプリズムカバーであるが、

 

当初は錆によって、かなり悲惨な状態であった。

 

 

先述の、CARL ZEISS JENAの新しい試みである、

 

鏡体の軽量化に伴う、エレクトロン合金の採用は、

 

何とも皮肉な事に、後に経年変化によって、

 

マグネシウム独特の腐食が散見されるようだ。

 

 

この年台のものに、腐食した個体が多いのは、

 

エレクトロン独特の、酸化による腐食である。

 

 

さて、錆をある程度落とした後は、再塗装を行う以外に、

 

美観を復活させる方法はないように思えた次第である。

 

 

プリズムカバーの再塗装は、光学系のオーバーホールとは、

 

また全く違った難しさがあり、塗装の奥の深さが窺い知れる。

 

 

極力、オリジナルと違和感が無いように善処させて頂いたのだが、

 

如何だろうか。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以外にも、ネジ部品など、錆が出ている箇所は、

 

錆を除去し、研磨させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムカバーの留めネジの質感が、まるで変わって

 

見違えている事も、ご確認頂けるかと思う。

 

 

 

対物レンズを固定する留めネジも在庫部品より、

 

補填させていただいたが、これがあるかないかで、

 

光軸の狂いが、かなり抑えられる。

 

 

ただし、光軸を合わせた後、留めネジを締めると、

 

それでまた、光軸が微妙に狂ってしまうので、

 

( それくらいシビアな設計となっている。)

 

それも計算した上で、光軸を合わせる必要がある。

 

 

これは、デルタレムに限った事ではなく、

 

全ての機種に共通する事である。

 

 

結局は、トライ&エラーの繰り返しで、

 

少しづつ追い込んで行く訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、1935年から、生産が始まったと思われる、

 

この DELTAREM 8×40 で培われた技術やノウハウは、

 

後の大戦時に、ナチスドイツ主導の元で造られた、

 

U-BOAT GLAS または、COMMANDER GLAS としても有名な、

( blc 8x60 U-Boot Kommandanten's Glas )

 

CARL ZEISS JENA 双眼鏡の最高傑作と言われる、

 

blc 8×60 にも、脈々と受け継がれているように思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

例えば、blc 8×60 と、DELTAREM 8×40 の接眼レンズは、

 

サイズが違うだけで、構成は全く同じなのである。

 

この事は、大変に興味深い。

 

 

 

 

 

DELTAREM 8×40 と、blc 8×60 (Fat)

 

 

 

 

 

 

 

 

この、U-BOAT GLAS  blc 8×60 も、

 

いずれ記事にさせて頂く予定である。

 

 

CARL ZEISS JENA の双眼鏡を語る者としては、

 

絶対に外す事の出来ない重要な機種の一つである。

 

 

 

さて、またまた話が脱線してしまったが、

 

完成したデルタレムで、早速景色を覗いてみた。

 

 

この機種独特の、何とも水々しく潤ったような、

 

艶っぽい像が目に飛び込んでくる。

 

広大な視野と相まって、この視界は唯一無二の快感かも知れない。

 

視界を限界まで広げている分、周辺には歪みも見られるが、

 

そんな事は、この魅力的な世界観の前には、どうでも良くなる。

 

ただ、美しい像に酔えば良いのである。

 

 

今回も、貴重なデルタレムが1台でも多く、

 

最良の形で蘇らせてあげたいと言った想いから、

 

私に可能な限りにおいて、尽くさせて頂いた。

 

 

 

最後に、この貴重なデルタレムを

 

拙宅に託して頂いたオーナー様には、

 

この場を借りて、改めて感謝申し上げる次第である。

 

本当にありがとうございました。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

感謝

 

 

 

 

 

 

 

 

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