デルトリンテムは、1920年~1990年と、
製造期間が極めて長いので、
私は ふと 自分と 同年齢のデルトリンテム が欲しくなり、
ある時、それを探し続けた。
私は、1965年生まれなので、
ツァイスイエナのシリアルで言うと、
大体、341万台くらいからが、1965年製だ。
347万台になると、1966年製となる。
なので、その間くらいの個体が、1965年製だ。
また、私は11月生まれなので、そうなると、
大体345~346万台くらいだろうか。
そして、遂に見付けたのが、このデルトリンテム。
シリアルナンバー 345万台。
紛れもなく、1965年製である。
自分が生まれたのと、同じ頃に製造され、
自分と同じだけ、この世で時を刻んできたのか、と思うと、
非常に感慨深いものがある。
1965年という事は、ツァイスイエナの品質が落ち始めた、
と言われる時期と ちょうど被るので、少々心配であったが、
その心配は、まったくの杞憂に終わった。
1950年代の、最も造りが良いと言われる時代の、
状態の良い個体と比較してみたのだが、
全く遜色が無かった。
像の明るさ、中心像のシャープさ、魅力ある見え味、
そして、細部の造り込み・・・ いずれも全く同等であった。
どうやら、やはり 1967年くらいまでであれば、
造りの良さは、継承されているようである。
これまで、数十台の デルトリンテムを手にして来て、
個人的には、1967年辺りまでは、
塗装の質も、緻密な工作精度も問題なく、
それ以降の製品とは、明確に違うので、
アイスフェルド工場に完全に移転したのは、
1967年以降だと、推測している。
話を戻して、1965年製の デルトリンテムだが、
ところどころに、塗装の剥げなどは、見られるが
そもそも50年も前の製品なので、
実用可能なだけでも、奇跡的に素晴らしい事だ。
今の製品で、50年後 60年後、普通に実用が出来る、
そんな耐久性のある製品が、果たしてあるのだろうか??
この時代だからこそ、造る事が出来たクォリティなのだと思う。
それに、この塗装の剥げ具合が、何とも良い具合に
エージングされていて、ヴィンテージ感満載の味がある。
塗装が剥げて、真鍮のような、地金が顔を出しているのが、
また 何とも良い感じだ。
むしろ、これくらいが味があって良いかも知れない。
そもそも、この年代の双眼鏡に手を出すなら、
あまり細かい事は気にしてはいけない。
像の明るさやコントラスト、逆光性能、周辺像の歪み等も、
現在の双眼鏡に比べると、劣るのは当たり前だし、
少々の小傷や塗装の剥げも、あって当たり前だし、
レンズの曇りや、小さいカビもある場合も多い。
レンズのコーティング技術も、
この時代はまだまだ未熟だったようで、
エタノールで拭いただけでも剥がれてしまったりする事もある。
と言うか、そのコーティング自体、あまり見え味に
貢献していないような!?気もする。
そういうレベルのコーティング技術の時代だ。
私は、極め付きのマニアではないので、
あまり そういった細かい事は気にせずに使用しているし、
購入もしている。
対物側から、窓辺にかざしてみて、
レンズに酷い曇りやカビ、明らかなパフォーマンス低下に繋がる、
そういった現象がなければ、それで良し、としている。
LEDライト等で、接眼レンズ側から照らし、
対物側から確認する方法で、チェックすると、
この年代の双眼鏡は少なからず、曇りや汚れがある事が多い。
ただ、その方法でチェックすると、
見え味には、あまり影響が無いような ごく些細な汚れまで、
浮き彫りになってしまうので、イタズラに神経質になってしまい、
精神衛生上、よろしくない。
LEICA等も、ほんの 10年くらい前の製品を見ても、
この方法で見た時、薄っすらと曇っていたりするものも多い。
と言うか、殆どが そうだと思う。
例え、LEDライトでチェックして、多少の汚れや曇りがあっても、
普通に実用する限りでは、十分に素晴らしい見え味であり、
何の問題もない事も多いのだ。
もっとも、どうしても、そういう事が気になるなら、
最新の新品の機種を購入するか、もしくは、
手に入れてから、業者にメンテを依頼すれば良いと思うし、
私自身、そうしている。
それくらいの割り切りがなければ、
この時代の双眼鏡には、手を出さない方がいいだろう。
とは言え、私自身が人様に、お譲りする際は、
「曇りがあります。」 と明記しているモノを除き、
基本的には、例え、LEDライトでチェックしても、
レンズやプリズムに、曇りも汚れもない、
クリアなものだけを、お譲りするようにしている。
光軸も含め、光学系に問題の無いモノだけを、
お譲りするようにはしている。
何にせよ、普通に双眼鏡を使用するだけなら、
先に紹介したような、Vixenの双眼鏡で十分だ。
それこそ、新品で買えば、些細な汚れもカビも曇りも全くない。
光学性能だって、必要十分以上のレベルだ。
しかし、光学性能だけではない、
言葉に出来ない 様々なファクター、
使い勝手の良さや、手にする喜び、覗く喜び、
シャープで立体的な見え味、モノとしての造りの良さ、
そして、手にした時に感じられる、何とも言えない 浪漫が、
このデルトリンテムや、オーバーコッヘン、古いLEITZ にはある。
私は、それが好きなのである。
なので、最近のZEISSやLEICAには、全く興味がない。
先日も、LEICA ULTRAVID や、
最近のZEISS コンクエスト シリーズ等、色々覗いて来たが、
デルトリンテムや古いLEITZで、私には十分だと思えた。
クラシックシリーズもあるので、それらで 今の所は十分だ。
この時代の製品が、私は好きだし、今後も愛用するだろう。
この自分と同年齢のデルトリンテムを持って、
山や海に出掛けて、覗く景色が また格別なのである。
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