家庭医医療という分野について習っています。
一般のクリニックでは、毎日の中の多くの患者さんは定期的に通院している人だそうです。
高血圧症とか糖尿病とか。
ですから、日常的には大きな体調不良もなく、「元気に」通院してきます。
そんな中で、世間話のように趣味の話なんかもしているそうです。
何とも、穏やかで微笑ましい風景が浮かびます。
しかし、これは別に何となく時間があったからしているわけでも、親しみやすさをアピールしているわけでもないそうです。
例えば洋裁を趣味にしているおばあちゃんがいました。
洋裁では針に糸を通さないといけません。
ですから、この人にとっては洋裁ができる程度に目がしっかりしていること、手先が動くことは結構重要なわけです。
一方ではそこまでの視力や指先の器用さを必要としない人もたくさんいます。
そうすると、客観的な体の状態は同じでも、それを病気だと捉えたり、困ったりするのは結構人それぞれの状況によると言えます。
そして体の状態をどう感じるかは、その人の生活に大きく関係します。
膝の調子が悪くても日常生活に問題が無ければいい人と、アスリート並の身体能力を目指す人とではだいぶ違うわけです。
病気であってもなくても、身体機能の低下についてそれがどのような意味を持つのか、個別性の高い問題に対応することも家庭医の先生は、自分たちの役割のひとつだと考えています。
一見病気とは関係のないような趣味の話をしたり、家族関係や社会背景にも目を配ることには、そのような目的もあるようです。