本気ですよね。

監督:ジャン=ジャック・アノー

出演:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレーター

原作:ウンベルト・エーコ


2時間越えの見ごたえある作品です。


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【お話】

 14世紀、イタリア。ベネディクト修道院を訪れたバスカヴィルのウィリアム(ショーン・コネリー)と弟子のアドソ(クリスチャン・スレーター)は、最近、若い修道僧が不審な死を遂げたことを知る。修道院では「悪魔の仕業ではないか」と騒ぎになっており、修道院長に依頼されたウィリアムは、騒ぎを鎮めるために謎の解決に乗り出す。亡くなった僧は優れた写本絵師であり、彼が携わっていた本に秘密があるのではないかと調査を進めるウィリアムだったが、ある朝、修道僧が大瓶にさかさまに突っ込まれて死んでいるのが発見される。


【感想】

 修道院(ロケ)、セットや小道具など、細部までしっかり作ってあり、正しいかどうかは私にはわからないわけですが、とても説得力がありました。

 何せ部屋が暗く冷たく、寒そうで(吐く息が白い)、衣装はごわごわ。映像からにおいが漂ってきそうです。きっとすごくくさい。


 お話は、先にエーコの小説を読んでいましたが、「面白かった」以外ほとんど忘れていたのでほぼ初見状態です。

 中世の歴史ものとしても本格的、ミステリーとしても面白い。動機については、予備知識があったらわかりやすいかもしれませんが、無いほうがかえって強烈に受け止められるかもしれません。


 ショーン・コネリーの静かで、でもどこか茶目っ気がある感じが素敵でした。どこまでも厳しい印象だと、お話全体が暗くなりすぎたと思います。

 ウィリアムとアドソは、ホームズとワトソンの関係で、二人でというよりはおもにウィリアムが謎の真相に迫っていくわけです。アドソがウィリアムを尊敬しており、でも時には納得がいかないこともあり、でもやっぱり先生はすごい、と思っている。ウィリアムはウィリアムでアドソにいろいろと教えますが、思想を教えるというよりは自分の考え方を示す、というスタイルが、師弟の在り方としても「いいな」と思えるし、ミステリーの中でもうまく機能していました。


 歴史のお勉強にもとてもいいと思います。大学の資料室に収められた小道具もあるとかで、かなりこだわって作ってあり、特に写本がとてもきれい。それに、迷路のような図書館の塔が圧巻。

 ぜひじっくりご覧ください。


 DVD版には監督の解説付きバージョンがあり、本編と解説付きを1回ずつ見ました。

 DVDにはときどきこういうオマケがついていますが、どれも面白いです。アノー監督はかなりざっくばらんに話していました。

 007にウィリアムしてもらっても……とかいって(笑)


<以下、少しネタバレ>

 ところで、最初に亡くなる修道僧は自殺で(話の早いうちに結論が出る)、あとは殺人(事故もありますが)で、その動機となり「凶器」となるのは、本です。

 まず、ベネディクト修道院はその名の通りベネディクト会の修道院であり、ショーン・コネリー演じるウィリアムはフランシスコ会の修道僧。会派が違うということは教義も違います。


 この作品では「笑い」をどうとらえるか、について老僧とウィリアムが論争する場面がありました。

 ブルゴスのホルヘ(修道院の文書館の長老みたいな人。監督お気に入りのシャリアピン)は、笑うだなんて言語道断、という考え方で、修道僧たちは笑いを禁じられている。ウィリアムは、会派の代表というよりは個人の考えでもって述べているようですが、これに対し反論する。その時に、アリストテレスの『詩学』が引き合いに出されますが、この笑いに関する部分は原典が散逸している。


 その散逸したとされる『詩学』の二巻がこの物語のキーになります。

 聖書の解釈が問題になるのならすっとわかりますが、「なんで?」となりませんか。

 このへんはヨーロッパの人々と我々とでは違うところで、ちょっと勉強しないとわかりませんね。


 アリストテレスはギリシャの哲学者ですが、彼の著作や知識体系は、中世にキリスト教神学に取り入れられました。詳しいことは、えーと、ご自分で調べてください(逃げた)。

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 こないだ↓こんな本を読みました。プラトンとアリストテレスとキリスト教等々の話が書いてあった気がしますが、やっぱり面白かったことは覚えているけれど、詳細は忘れてしまった。

反哲学入門 (新潮文庫)/新潮社

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