『エリジウム』を見てきました。


エリジウム ビジュアルガイド (ShoPro Books)/小学館集英社プロダクション
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監督・脚本:ニール・ブロムカンプ『第9地区』

出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー

公式サイト:http://www.elysium-movie.jp/


◆お話


 22世紀、貧しい人々は荒れ果てた地球に住む一方、富裕層は「エリジウム」と呼ばれる宇宙コロニーに移り住んでいた。エリジウムはまさに天国。あらゆる病気が克服されている。

 マックス(マット・デイモン)は、地球に住む工場労働者。犯罪歴があり、警察にはつい反抗的な態度をとってしまうが、工場に勤め真面目に生きていこうと考えている。


 しかしある日、ある事故がもとで、余命5日を宣告されてしまう。

 生きるためにはエリジウムに行くしかない。

 だが、エリジウムに住めるのは富裕層だけ。地球からの「移民」は強制送還されてしまうのである。


 マックスは、エリジウムへの不法侵入の手引きをしているスパイダーのもとを訪れるが、そこでひとつの条件を持ちかけられる。

 それは、エリジウムの住人をひとり誘拐し、その頭の中にあるデータを盗み出すことだった。



◆思ったこと(一部ネタバレあり。反転してください)


 ひとことでいうと、「いまひとつ」でした。

 あ、でも、期待してハードルがぐーんと上がっていただけで、面白くなかったわけではありません。


『第9地区』と同じく「移民」の問題がキーとなります。

 前作は、南アフリカに突然やってきて棲みついてしまったエイリアン(エビ)と、彼らを「移民」として迎え入れる人間の話でした。

 今回は人間同士。宇宙まで行ったのに、スケールはしぼんでしまった感じがしました。


 体がぶっちぎれたりぶっ飛んだりするB級感は残っていました。スーツを体に直接ボルトで留めちゃって血がにじんでいたり。「あだだだだ」みたいなのはありました。

 でも、ぶっとび感も痛みの後のすっきり感(=強くなった感)も少ない。ちょっと爽快感に欠けるというのか。


 そう、全体的に、「なんか遠慮してるの?」という……。


 まずね。


 エリジウムの描写がかなり少ないのです。エリジウムに住んでいる人間たちが、とにかく優雅に暮らしているのはわかるのですが、地球にいる人々を、そして彼らがやってこようとしているのをどう思っているのかわからない。

 ジョディ・フォースター演じるデラコート長官が一人、不法侵入を「違法」な手段を使ってでもはねつけ続けている、その理由は本人が語る一言しかない。長官が移民を恐れて嫌っているのはその一言でわかるのですが(役者の演技に依るところが大きいでしょう)、話が進むと権力主義者のようにも見えてくる。

 その割に危機管理力に乏しい(笑)

 あのラストからしたら、さっさと医療ポッドを送ればいいじゃん。そしたらわざわざ地球から来ないって。


 あと、マックスはロボコップ手術を受ける(エクソ・スーツのことだよ)のですが、なぜかシャツの上から手術されてしまう。確かに、あのデザインだと、あとから服着られないですよ。でも、そりゃないだろって。

 そんだけ(?)苦労しているのに、あんまり強くない!

 最初だけちょっと強かったけれど、クルーガー(シャールト・コプリー:『第9地区』の主人公ヴィカス)があんまりにも強くて嫌な奴(こいつは遠慮していない)なので、迫力負けしている。

 ところで、クルーガーが持っている日本刀みたいの、かっこよかったです。


 マックスが遭遇する事故は怖かったです。「ありうるな」と。

 工場労働者がどんな境遇で働いているか。そして事故が起きたとき、管理者は、社長は、どんな対応をするのか。

 このへんの描写は優れていると思いました。本当に怖かったです。


 しかし。


 字幕訳の問題ですが、「照射線を浴びた」と書いてありましたけれど、要するに放射線ですよね? 違うの?

 ぐーぐる先生に聞いてみましたが、「照射線量」とか「照射する」という言葉はすぐ出てきますが、「照射線に被曝(ひばく)する」って言わなさそう。

 英語がよくわからないから、なんともわからない。

 でも、少しあとでマックスは「間接被曝させてやる」ってスパイダーを脅していたから、やっぱり放射線のことじゃないんだろうか。(ちなみに、この「間接被曝」の使い方は間違っている気がする。映画の中の人物の認識、ということだろうから責めないけれど。)


 まぁ、それは訳の問題として、お話に戻ります。



 いろいろおかしいなと思うところはあって、たとえば……


 マックスは誘拐のターゲットに、自分が働いていた工場の社長カーライルを選ぶのですが、このカーライルの頭の中にはエリジウムを揺るがすようなすごいデータが入っている。もちろん、マックスはこのことを知りません。単に復讐のつもりで選んだのでしょう。

 このへんのストーリーの展開は面白かった。



 ただ、カーライルは自分の頭から問題のデータを抜き取ると死ぬように設定していたのですが、なんでそんなことしたの??

 だって、「俺が死んだら大事なデータもパーだぞ!」と駆け引きすることはできても、「俺の頭からデータを抜き取ると、俺は死ぬぞ」って何の役にも立たないじゃん。(何か見落としているだけかもしれないのですが、現時点では理解できていません。)

 これは単なるラストへの布石だったのでしょうか。

 まあ、この設定がなきゃ究極の選択にならんわけだが。


 ラストと言えば、マックスの幼馴染で看護師のフレイとその子マチルダ。フレイの身の上話はまったくなされず、「複雑なの」(本人談)で片づけられてしまう。

 まぁいいですよ。私はあんまり興味ないから。

 でも、マックスはかわいそうすぎるよ(笑)


 スパイダーは面白いキャラクターでした。

 マット・デイモンはもちろん実力派なんですけれど、ちょっと(元)犯罪者っぽさが薄くてお上品というのか、どっちかというとエリジウムにいそう……という気はしました。


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第9地区は面白かった。

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