現在、日本の外交問題は北朝鮮による拉致被害者関連一色だ。
日本は空気が支配する国(「空気が醸成される原理原則は、対象の臨在感的把握である。そして臨在感的把握の原則は、対象への一方的な感情移入による自己と対象との一体化であり、対象への分析を拒否する心的態度である。」山本七平「空気の研究」)だが、あえて水を差してみる。(まだあまりここ見ている人もいないし、まさに自分のための試考の記録だよね)
そもそも、世論が納得するところの拉致問題解決ってどういうことなのかってこと。そもそも拉致された人たちは今、どれだけの人が生きているのだろうか?確かに横田めぐみさんに関しては、死亡時期が定まらず、最近までの目撃証言もあってまだ生きていると思わせるふしはある。だけど一般市民があれだけ餓死するような国で大半の人は?もしも、死亡を疑い得ない悲惨な証拠が山ほどでたらどうなるの?おそらく今度はそんな国に対しては制裁だーという議論になるんじゃないの?すると北朝鮮としては協力しようがしまいが世論を向いている限り同じだ。むしろ風化を待った方が空気に対するには有効だ。横田さんの両親を始めとして拉致被害者の直接の肉親が高齢で亡くなったら、感情移入の対象がなくなるしね。
確かに国家として国民の生命財産を守るというのは最低限の義務だけれど、感情論は一文の利益にもなりません。北朝鮮に日本を征服する力はない以上、国益という観点からの懸念は核とミサイルと押し寄せる可能性がある難民だ。また国交正常化にともなう国家賠償問題もある。以下それぞれ検討を加えてみる。
核・ミサイルのような国防問題に関しては、もはや日本には何もすることはない。直接の脅威にさらされているのは、中国(韓国・日本・台湾とドミノ倒しのように核武装したら中国の極東における軍事の比較優位が崩れる)、アメリカ(核・ミサイル拡散はテロリストにわたる可能性大)である。ということは両国が責任を持ってなんとかするだろう。ここに日本が介在する余地はない。日本はアメリカだけを向いていればいい…他人任せという悲しい結論だけれど、むしろ日本の政治家が国防うんぬん言う時は選挙目当ての世論迎合の感情論と兵器オタクでむしろ国益を害する可能性が高いしね。
金正日体制が崩壊した時訪れるのは、締め付けがとれて雪崩だす難民だ。韓国や中国が太陽政策やら物資援助に応じるのは、同胞だとか戦友だとかのきれいごとではない。単にその混乱が怖いから、日本に次ぐ経済力を誇った西ドイツと東側諸国の中で比較的進んでいると思われていた東ドイツとの統合ですら、いまだにその断線は塞がれていない。ましてや韓国と北朝鮮の統合なんて…ありえない、おそらく日本に要請される支援は数兆円。しかもその数兆円は北朝鮮に対する国家賠償という形をとり、国際社会の圧力の下、日本に否定することはできないだろう。すると現実的に最低限の体制維持には協力するのが安上がりということ。その場合でも殺さぬように生かさぬようにというより「急激には殺さぬように生かさぬように」位が国益に叶う。ある程度の餓死者が出続けることによって、後の負担を減らすべきだ。食糧支援についてNPOや国連組織の監視下できちんと下々まで行き渡るような援助の仕方は最悪、国家に直接渡して闇に流れて無益なものになってもらわないと、人が減らない。
また国交正常化も粘って焦らすだけ焦らした上で現在独裁体制の国とした方が安く付く。先方からすれば喉から手が出るほど欲しい大金、しかし今なら過去の歴史問題と拉致被害者問題を過失相殺の形で大幅な減額交渉、及び独裁国家ならではの個人補償こみこみという条件も通る可能性が高い。例えば金丸訪朝時の1兆円としても半分は継続的な食糧支援で済ますとかね。
他にも北朝鮮への送金停止を口実として、パチンコ業界等に対する徴税を強める(もちろん財政再建が狙いだよ~)とかいろいろと考えられるんだけれど、そういう議論ってないよね。