振り込め詐欺が孕む諸問題 | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

本日のニュース振り込め詐欺 によると、

>少年らは「田舎の老人がため込んでいるタンス預金をおれたちが使って景気をよくしてやろうと思った」などと供述。5人でスーツを新調して、都内の1泊4万円の高級ホテルに宿泊し、6万円のフルコースを食べるなどして使っていたという。

大雑把に理解しているところで言えば、総需要=総生産(投資+消費)だから、ただ徒らに貯蓄に励むのは国民経済全体にとってはむしろ害悪だということ(もちろん、投資が盛んで資金需要が旺盛な高成長時代には高貯蓄もむしろ望ましいが、資金需要がそれほどない中で貯蓄により資金がだぶつかせても死に金が増えるだけで国民経済全体にとっては罪)、というのがケインズ の論旨だ。つまり得た収入は存分に消費に回すことで経済は成長していく、じゃんじゃん金使えってことだから…この犯罪者達が何処まで理解しての言行動か(単に聞きかじったことをそのまま使っているだけと思うけれど)、犯罪行為を行っているということを別とすれば正しいよ!

いい加減な経済ヒョーロンによれば、以前は国民に金使えというよりむしろ国が金使うということが主流だった。例えば、橋本元首相から故小渕総理の経済せーさくとかで国・地方含めて膨大な財政赤字を積み上げました(参考;日本の借金時計 )。
それでも経済は回復しませんでした、まあリチャード・クー氏 やミラーマンのようにこれだけしたからこそこの程度で済んだという意見はありますが。基本的にはGDPのおよそ7割を占める国民の消費に火がつかない限り経済は本格的に回復しません(もちろん外需や景気サイクルで一時的に持ち直すことはあってもね)。

もう一点犯罪者たちの発言で気になるのが、世代間格差・公平感というものだ。つまりバブルでいい思いをしたはずの老人から、その資産を収奪するのは正しいという思想だ。確かに、上の世代が先送りにし結果積み上げてきた負債の処理にあたるのはこれからの若い世代だ。上述の国の債務や年金問題に関して若い世代怒れ!上の世代のやり逃げを許すな!と「正論」を長年吐き続けてきた金子勝教授 の言説はまさにこれです。

最後にこのような享楽的な若者を生む要因については、偶然見た12月14日 視点・論点「ステイタスの格差」 山田昌弘教授 の言説が説得的。つまりオールドエコノミーからニューエコノミーへの経済の転換に伴って働くという行為の質も転換し、単純労働に従事すると、正社員の一部との間で、希望を持てるか否かの格差が広がっている。希望を持てない若者(主に大半のフリーター、ニートを指している)に対してそうでないやりがいを感じる仕事をというけれど、難しいよね。


「機会の平等における弱者はゲームにまともに参加できない人にすぎない。あえて嫌な言い方を使えば単なる可哀想な人になるのだ。だから機会の平等を掲げる社会では誰も自分を弱者だと認めたがらない(中略)構造的に不利益を被っている人、自分のせいではなく痛みを強いられている人たちの多くが、弱者と名乗ることも弱者と呼ばれることも欲しなくなるのだ。」

                  佐藤俊樹「00年代の格差ゲーム」