全24話が終了しました。最終話、期待を裏切らない素敵な見るものを幸せにさせてくれる美しいお話でした。第1話と対になった構成、クリスマスという名前が母親との最後の幸せな思い出に基づいていたこと、エンディングのクラウが暗闇で見上げていたのはクリスマスだったことが明らかになったこと、ひとつひとつの積み重ねの中で最後に「懐かしい宇宙」が流れたとき心の汚れきった私にもリナクスではなくて涙が溢れました。このような素晴らしいアニメを送り届けてくれたスタッフ(アニメーション制作 ボンズ、監督 入江泰浩、シリーズ構成 吉永亜矢、音楽 勝木ゆかり(S.E.N.S.))に感謝、おかげでいいクリスマスを迎えられそうです。
この作品を語る上ではずしてはならないのが、オープニングテーマ「懐かしい宇宙(うみ)」新居昭乃氏、 エンディングテーマ「Moonlight」・挿入歌「Lonely Freedom」勝木ゆかり氏(S.E.N.S.)の歌です。これら珠玉の作品群がなければ作品の魅力は半減してといっても過言ではないほどに素敵な胸うつ歌です。
そして光の使い方が印象的な作品です。「リナクス」という設定を十二分に活かして、この物質が粒子状の何かなのでその分解や結合において光をもって表現し、リナクス同士の戦闘等においてもリナクスの力を用いると発光する(足跡とかね)シーン、溢れだすリナクスのシーンは特に印象的でした(ただオープニングの街に降り注ぐリナクスという美しい情景の足元では大虐殺が繰り広げられているのですけれどね)。また月の光、弔いの灯篭流し、蛍、雪(蛍雪の光ですね)などの幻想的な光の美しさはじんわりと心に映えます。
そして何よりクリスマスというキャラを魅力的に描くことに注力した点で楽しませてくれました。
ただ、惜しむらくは脚本が…、その全体を通すとバランスが悪いというか、つまりは中弛みしてしまいました。それは平均視聴率1%前後という数字にも如実に表れています。その支離滅裂の物語が激しく受け入れる人を選別してしまいました。物語を捨象して音楽と映像の力を純粋に楽しめる人にとっては幸せな作品でした。
ただ設定をうまく活かせばきっときっと…と思うところ
①リナクスの設定をはっきりさせなかった。折角科学者を主要人物に揃えているのだから科学的に説明させた方がよかった。本編では単なる万能の力となってしまい説得力を欠いた。例えばどうしてクラウとクリスマスだけがお互いをこの世に生み出せたのか(女性だから?)とかね。
②「対」概念はリナクス特有の、広い世界に憧れるがゆえに世界の広さを前にして孤独を知り特有の誰かを求めることと定義し、それを最終話ではリナクスだけでなく人間一般(クラウ-母親)に拡張した。この特定の誰かを求めざるをえないということを描きたいのならば、第1話であっさり片付けたが、父親と融合クラウの和解を2話ぐらいかけてじっくりと描くべきだったし、最終話においてクリスマスと人間クラウ、父親の交流を描くべきだった。
③ヒーローとしてのクラウを活かす話が少なかった。これはリナクスという設定をおざなりに力をきれいに描きたいということであったならばなおさらだった。つまりはリナクスの力を縦横に使って「エージェント」として純粋に活躍する話をクリスマスを登場させる前に5話前後するべきだった。後半において力の使用に躊躇しひたすらぼろぼろに傷付くのみのクラウではヒーローではない。
④敵の行動があまりにもお間抜けだった。②や③を一気に走りぬけ「逃亡者」のように行く先々での人々との交流を描きたかった割には、GPOの不手際により新しく登場した人物を死なすのみという展開はあまりにもあんまりだ。翻って逃亡するクラウ、クリスマスの魅力も減退させた。パパの対であった市瀬という悪科学者に至ってはいつフェードアウトしたのかも曖昧だった。また過去話まで描いたアヤカに至っても結局、長官がリナクス部隊ともどもあっさり消滅してしまったためにその設定も活かせなかった。
ただ脚本の細かい不満はともかく、個人的には非常に好きな作品でした。何より誰もが幸せなハッピーエンドで本当に良かった。大好きなサントラ含めクリスマス(←ここ重要)のことを決して私は忘れません。