新刊漫画感想6月後半 | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

切込隊長さま「メディアシフトのなかで揺れる活字文化振興策」
>いろんな紆余曲折のあった活字文化振興策については、とりあえず一定の線で落ち着いたらしい。法律にするようなもんなのか、という疑問は残るけど。「活字文化議員連盟」とかいうのがやっているらしい。

この連盟のいんちきくささ(新古書店についても)関しては万来堂日記さまに詳しいので一読をお勧めいたします

>「活字離れ」に関する賛否というのは昔からあって、否定する人はたいてい「ネットは活字です」とか「メールで若者が大量の文章交換をしている」とかそういう話になりがちだが、たぶんここで規定されている活字文化というのは「良書」(敢えて鍵かっこつきで書くが)に対する興味関心の減退と、国家が抱えるべき教養の水準が低下するのはいかんのではないの、という議論なのだろうと思う。

鍵かっこつつきと皮肉りたくなる気持ちはとてもよく分かります。「良書」「教養」って言われてもまずはそもそも議員様方の読書生活をまずは赤裸々なものとしてもらいたいですし、学校の読書感想文で分かるように強制しない限りその種の本を上から押し付けることは無理だし、それはそのまま読書嫌いに育て上げる可能性大です。自発的に読みたくなる環境をどのように整備するかそれこそ知恵の絞りどころでしょうが教育学の守備範囲ですね。そしてそれは直接「良書」というよりも読書習慣を身に着けさせること以外の何者でもない。数多く本を読みさえすればいずれは良書に辿り着くこともあるでしょうという程度の。

>美辞麗句をきちんと並べてありつつも、公貸権がボトルネックになって議論してるうちに文教族の皆さまが乱入されなし崩し的に「活字文化を守れ」的なギミックに集約されていったような気配がいたします。もちろん大事なことだけどね。

ちなみに図書館の利用者増に関しては閉館時間を二時間延長 とか、漫画喫茶を潰すこと厭わずで漫画を更に充実させるなど当たり前のことをすれば普通に伸ばせると思いますよ。それが議員様方の望むところかは知りませんが…。

>そういう公貸権と再販制度の制度疲労みたいなものがブックオフに突かれたりテレビやネットに客を取られたりして事態が拡大し、結果、書籍流通の現場が泣きながら大量に刊行される書籍を裁いている現状をどうにかしたいのだろうと。活字離れと言いつつ、出版物の刊行点数は高止まりしたまんまだもんな。

('A`)マー


以下 漫画感想

【幸せを届けてくれた作品群】

「蟲師」6巻 漆原友紀

幼稚園~小学生低学年当事、唯一購入していた漫画が「火の鳥」と「ゲゲゲの鬼太郎」ということもあって、妖怪そして関連として民話には思い入れがあります。他にも妖怪が登場するだけの漫画はやまほどありますが、あえて妖怪を登場させるという意味を考えている作品がどれだけあるのでしょうか?それは妖怪の目を通すことで語られる社会批評であり、自然や物を擬人化することで感情移入への敷居を下げて得られる妖しさだったりするわけです。水木先生の作品群は一見、妖怪たちの表面上の滑稽さに惑わされますが、その裏には戦場において死と隣り合わせた極限状況下の圧倒的な経験の裏打ちがあって、可笑しくもやがて哀しき、あるいは無邪気な残酷さやらが散りばめられています。

当作では蟲を自然の具象、媒介として人と自然の交わりを淡々と粛々と描いています。お読みいただければ分かりますが、コマ割もセリフを禁欲的なまでに抑えて、かつ背景としての自然、蟲を徹底的に描き込んでいます。別に作者が登場人物に能弁に語らせなくても作者の意図するところが静々と伝わってきます。よくいわれるような人と自然を二項対立のものとして描くのではなく、あるいは人も自然の一部として描くのでもなく、自然はあるがままで自然であり、人とは別個の世界に圧倒的な迫力で聳え立つ。その境界を意識させるものとしての蟲なわけです。もちろん人同士の関係も描いていますがその存在感の希薄さ(描写が薄っぺらいという意味では断じてない)は、まさに自然の大きさとの比較によります。人はその五感だけでなく、日常では感じられない何かをも含めて自然の大きさを伝える媒介として物語に配置されているにすぎないように思います。平面としても深さとしても広大に広がる海、山に降り積もる雪その美しさの前に何かを無くし、何かを得ることを考えさせられます。

「しゃにむにGO」20巻 羅川真理茂

第3部最終部が始まりました。主人公たちがついに最高学年となり、また新しく新入生が入ってくるという彼らが作った奇跡を伝統として継承していける何かに育て上げられるか、そして彼らの高校生活の集大成がどこに行き着くのかが同等のものとして描かれていくことになることが当巻から窺えます。

別れがあって出会いがあるそのことをきちんと描くことで、特別な事件(もちろん大活躍も特別といえば特別ですが)で無理やり引き上げるのではなく、主人公たちが力強く成長していく姿を見るとその始まりに思いを寄せて幸せな気持ちになれます。誰もがいくばくかのいろいろな事情を抱え、個人の物語を精一杯に生きているという当たり前のことを当たり前に描くそのまさに地力に感動させられます。


【購入に値した作品群】

「たそがれのにわ」1巻 高坂りと

前作のデビュー作にあたる「プラネットガーディアン」 が好きだったので迷わず買いました。確かにその投げ槍気味、適当な収束の仕方には若干引きましたがそれでも主人公の女の子をきっちりと活きたキャラクターとして…単純に黒い女の子が私のツボなんです、ごめんなさい。当作においてもその現実主義、利己的な性格満開でとっても魅力的です。そして今回は前作を踏まえて確実に進歩のあとが窺えます。一点は大地の力の回収と世界をバランスの崩壊に起因する危機から救うという明確な話の軸の設定。二点目は前回はキャラクターのみの変な(それが魅力だった)リアリティーの追及だったのに対して各話それ自体でそれを実施している。第1話のある意味当然のオチ、第2話の救いのないオチととても素晴らしいです。そしてそれらを踏まえての主人公の心の強さの秘密も追々明かされることを期待しています。

「マリア様がみてる」4巻 漫画;長沢智・原作;今野緒雪

原作のある作品を他のジャンルに遷していく際に最も重要なのは、原作に対する愛情であるという至極当然のことを教えてくれる作品となっています。それは原作にはないエピソードや地に手書きで書き込まれている遊びの会話(聖さまと祐己のパジャマの匂いのセクハラとか)にも現れています。ちょうど↑に「しゃにむにGO」があるのであえて残酷な比較(原作の方)をすると、キャラクターが生きていると感じるかどうかはいかにリアリティーを作品内で確立するかにかかっている。もちろん現実をなぞらなければいけないということではなくて、どの程度のリアリティーを構築するかは世界観に因る。その点で世界観を現実と共有するならば時間をきっちりと経過させる必要がある。何が言いたいのかというと人気があるからといっていつまでも卒業した前薔薇様方をゲスト扱いで引き摺るのはいかがなものかということ。それだけ「愛しき歳月」の感動が薄れると同時に新キャラのおまけ感が拭えなくなってくる。


【暇潰しにはなった作品群】

「神無月の巫女」2巻(最終巻)介錯

アニメ版に忠実でした(細部は異なるが、その精神という点で)。しかし最近漫画に関して少年、少女問わず性描写に関する自主規制はどこへ行ったのでしょうね。

「ぱにぽに」7巻(初回限定版)氷川へきる

サイン会行って感激した身空なんでその~何ともいえないですけれども、ところどころで挟まれる思わせがちなシリアスな伏線はいらないです。言葉遊び(意味だけでなく音として)とキャラクターの融合で繰り広げられるシュールなお話だけでいいです。そんなことよりなによりも祝アニメ化!!!と絶叫したいところなんですが監督が「月詠」「なのは」でその勇名を轟かした新房昭之… ヽ(゚∀。)ノアヒャヒャヒャヒャorz


【なぜ手に取ったのか理解できない作品群】

「99(つくも)ハッピーソウル」大岩ケンヂ

何、その適当にエロと戦闘を織り交ぜただけの設定(構図含めても既視感漂いまくりですよ)。今までどおり原作のあるものを手がけられることを心からお勧めいたします。


【惰性と言う慣性の法則が働いている作品群】

「スクールランブル」9巻 小林尽

播磨が選ぶのは八雲(ツインテールも中々おつです)なのか、ツンデレなのかというその一点で読み続けているのですがそろそろ辛くなってきました。この種の作品は「いちご100%」だけでもうお腹いっぱいです。せめてギャグの部分がもう少し笑えるといいのですがキャラに頼りきっていますからね。


【実物を前にして逡巡、血涙を流しながら決断、そして残るは絶望、涙、涙、涙】

「ボクを包む月の光 『ぼく地球』次世代編」1巻 日渡早紀

一度は見送ったのですけれど結局手にとってしまいました。そして現在、大切なものを汚された悲しみで涙がとまりません(←本泣きです!もう3日位ずっと鬱です!)。近所に開店した中華料理店行ってみたらチャイナドレスを着たお姐さんがいっぱいいたんだけれど全然慰められないです。決して現段階でそこまでの駄作だとは言い切ることができようとは思いません。ただどうして、どうして前作で既に悩んで悩みぬいて解決したはずの過去生と現在の生の乖離、融合の問題を安易な多重人格設定で蒸し返しますか?絵もどうしてこんな味のないつまらないものになってしまったんでしょう(「未来のうてな」以来拍車がかかっていますが、まさに生きていない無機質なつるっとした感じです)?ボクの輪や亜梨子が…。

次のまとまった漫画感想は「ぼく地球」に決定です(´・ω・`)