新刊漫画感想10月前半 | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

少女マンガに関するアンケート

これが非常に興味深かった、是非ともリンク先に添付されているPDFレポートをお読みください、以下それに基づく雑感。

1.少女マンガ購読状況

レポートでは小学5・6年でピークに達し、中学から学年が上がるごとに減少していくとまとめていますがよく読んでいるとの回答が一貫して過半数を超えていること、全く読まないと回答する層が1割未満で増減がほとんどないことから未だに少女マンガ(少年ジャンプの普及をみると性差による特性を離れ、キャラクターマンガとして収束していく可能性も読みとれますが)が思春期の有力なメディアとしての役割を終えていないことが窺える。

2.よく読む・読んでいた少女マンガ雑誌

幼少期、低学年においてちゃお、りぼんの強さが圧倒的なこと、そして年齢があがるにつれて少女コミック、マーガレットの購読が増えていくことが窺えます。むしろ驚くべきはりぼん、ちゃおの購読がそれほど減少しないこと。つまり対象年齢からは外れているであろう雑誌を卒業することなく、そのまま物足りない分を別の雑誌でもって補っていく層が結構いることが窺えます(花ゆめ、LaLaも調査して欲しかった)。

3.少女マンガを読み始めた年齢
4.初めて読んだ少女マンガ雑誌
5・少女マンガを読んでからの年数

レポートのまとめどおり歳が上がってから少女マンガを読み始めるということがほとんどなく、小さい内にマンガに触れているかどうかでその後の人生が決まってしまう(誇張あり)ことが明らかになっています。鉄は熱いうちに打て!←微妙に違う。

6. 1ヶ月の少女マンガ購入数

一貫して1冊の回答が多く、2冊までとあわせると全年齢でほぼ6割に達していることから、たまにデータを張っている少女マンガの売り上げデータについて改めて考えると複雑な気持ちになります。今ならばNANAの既刊が上位を占めているわけで、するとその人たちにとって他の単行本を購入する余地がないということです。昨今の少女マンガの売り上げで一部の売れる本と大多数の売れない本の格差が著しいのはここに原因があるというわけです。1~2冊しか買わない人たちにとってお約束として著名どころを押さえれば他の本に手を伸ばす余地がなくなってしまう。

雑誌だけ読む0冊の人が10~20%近くいることを考えると、出版社は人気があるからといって同じ類の本ばかり揃えても見合うところがない(少女コミック連載本を念頭においています)理由はこの辺りにあるのでしょう。その単行本だからこそ買いたいと思わせる本を送り出すこと、3冊以上買いたいと思うファンを育てることが必要ということです(具体的な対策としては直販で購入数に応じた割引とかできるといいのに)。

7.少女マンガを読んでいる理由
8.読んでみたい少女マンガのストーリー

こういう質的データは面白くて大好きです。全面的に同意というものから、ネタじゃないの?というものまであって楽しいです。一部抜粋ということなので必ずしも明らかになっているわけではないですが、成長に従って求めるものが深化、多様化しているという傾向は窺えると思います。成長に従って簡易なモデル、夢としての少女マンガ、等身大かどうかは別として自分自身を重ねて恋愛という幻想、人間関係(対自を含む)を育む少女マンガ、そしていつかは懐かしむ少女マンガへと…。自分たちが眩しげに見上げていた主人公を現実において追い抜いて、現実に対する屈折した複雑な思い、気恥ずかしさ覚えながら眺める立場になっていくそういう媒体だと私は思っています。


"漫画とかライトノベルの作家たちってどうやって生活しているかが気になる。"

いくらメディアミックスが仕掛けられても、原作者に落ちるのは雀の涙ということだけは知っておくべきことですか。また印税といっても週刊連載の少年漫画だと数十万部出るものもざらですが、少女マンガの場合一桁少ないものがほとんど。しかも週刊と月刊の差で単行本が出る間隔が大違い…でますます収入に格差が生じると(その分、漫画家としての寿命は少女漫画家の方が長いですが)。

世界開放系「なぜエロマンガはエロゲーのような批評の対象たりえないのか?」
世界開放系「考えるエロ」

私自身はエロマンガを買わないのでよく分からないけれども(それでも白泉社繋がりで数冊で切った「ふたりエッチ」や、甘詰 留太先生の諸作は目を通したけれど)、あなたが傑作と考えているエロマンガを紹介してくださいというカタチから始まり論点が徐々に広がっていくさまがとても面白かった。言わんとしているところは整理すると以下の3点になると思う。

①世に蔓延るメディア悪影響論(エロ・暴力)と戦う正当性

この点は現在神奈川県担当者の解答待ちですが、正当性は規制する側が示すものであって、影響があることを示すほうが先決だと思います。影響が「ない」全否定命題を現実において実証することは永遠にできないことは論理学の示すところです。…まあそうはいっても非科学的・非論理的人間が多いのが世の常ですけれどねorz

②エロゲーに比べて傍流に追いやられている感の否めない現状

これはまさに偶々一定の市場規模がありつつ、参入の敷居も低いという時期を見込んで、才能がエロゲー周辺に90年代後半に集ったことが大きかったのでしょう。それは葉鍵や型月のスタッフのコメントを読めばよく分かります。かつて80年代にはロリコン雑誌が人材輩出源だったことは大塚英志氏の著作を読めば分かります。型月は逆行していますがパソゲーから同人ゲーに才能が移りつつあるのも同様のことでしょう。その意味でエロマンガが復興する可能性は一人の天才が出てくるのを祈る以外ないのではとしか言いようがありませんが、今の少コミの隆盛はほとんどエロマンガと大差ないような気がしますorz

③作品におけるエロの必要性

性が人にとって主要なテーマであるということと、具体的な性行為の描写を描くことは若干距離があると思います。ただ建前の綺麗ごととは別に本音として性に対する欲望=需要がある限りにおいて、それを満たす商品=供給は氏j本主義社会において必要だと思います。綺麗ごとを抜かす大人に限って売春行為は平然としているものです、聖人君主なんてこの世に数えるほどしかいません。


以下 単行本感想「夏目友人帳」( 1) 花とゆめCOMICS (著)緑川ゆき だけは一食抜いてでも買って読んでください!この無上の幸せは一人でも多くの人と分かち合いたい!)

【幸せを届けてくれた作品群】

「夏目友人帳」1巻 緑川ゆき

読み終えたときにふぅ~と思わず息が零れてしまいました。こういう言葉では到底言い尽くせない感情を抱かせてくれる至福のひととき、この刹那のためだけに生きているといっても過言ではありません。もうすぐアニメ放映も始まる「蟲師」が人と蟲(=自然)の画然とした距離感を描くとするならば、こなた人と人、人と妖怪の距離感を等間隔に隔絶したものとして描いています。そして隔絶としているがゆえに惹かれあうその想いが言葉ではなくて作品全体から薫り立っています。

緑川先生に対する記録という名のラブレターは近い内に必ずあげます。


「青色図書館」 林みかせ

私自身が無類の本好き(最近は本を読む前に必ず手を洗って、途中で邪魔されないように連絡手段を断つといった読む体勢を整えてから読むくらい)なんでこういう設定には無条件で白旗♪

前作の「地球行進曲」でもそうでしたが主人公の女の子の意思がはっきりしているのが好みにあっています。また柱で使いたいトーンにあわせて話を組み立てている旨を記しておられますが、確かに背景が作品の中で重要な位置を占めていることがわかります。ただまだ新進の漫画家ということで全体的に軽い(人物の性格設定のみならず、話そのものがあまりにも素直で捻りがない、裏がなさすぎて先の展開が完全に予想の範疇に収まってしまう)のは、今後の成長に要期待ということで。

↓でイラストを拝むことができます。
林みかせ先生公式ページ


【購入に値した作品群】

「お伽もよう綾にしき」1巻 ひかわきょうこ

今作でも安定したファンタジーを届けてくれることは間違いなしという始まり方です。絵柄が映えないという点だけで随分損していると思います(前作「彼方から」を人に勧めたら絵が受け付けないからパスって言われた_| ̄|○)。今回は異世界ものでない分、世界設定という点で練り込みはまだ感じられないけれど、その分政治上の駆け引き(世継ぎ争い、勢力拡大・均衡など)が盛り込まれる予感。


【なぜ手に取ったのか理解できない作品群】

「トカゲ王子」2巻(最終巻)和泉明日香

トカゲ王子という設定がどう活かされているのかが全く分からない。1巻で終えておけば良かったのに…この無駄なファンタジー設定と明るさ、摩擦係数0な人物設定という感想は誰かの作品に似ていると思ったら川瀬夏菜氏に対するものと全く同じですね。

それにしても同時併録された短編(←私にとって何よりも好物なのに)が兎化する男ってどうよ、そういうものを続けざまに描いてしまったのか、わざわざ選んで入れたのかいずれにせよセンスを疑います。


658 名前:花と名無しさん 投稿日:2005/08/15(月) 00:03:31 ID:???0
>>657
為替(注)為替=川瀬夏菜を結構好きとかいってる奴らに聞いてみたところ、

「ウジウジしてなくて楽しく読めるところがいい」

という風な感じの意見だった。まあ、気持ちは解かる。個人的に今回のは大ハズレだったけど、、お姫様とできてりゃ面白かったのに・・・

659 名前:花と名無しさん 投稿日:2005/08/15(月) 00:10:20 ID:???0
ああ、あの 前向きだけど足元見るの忘れて 犬のウンコとかガムとか踏んじゃってそうな あの作風がウケているのね。

662 名前:花と名無しさん 投稿日:2005/08/15(月) 12:19:19 ID:???0
>>659
荒んでるなw


「飛べない僕らは風を見る」 山本修世

新進作家なのに早くもジェットコミックス(橘裕先生以来?)という少女漫画の枠外で勝負するというので、前作で切ったはずだったのについ手にとってしまいました。…どう作風に変化をつけたのかが全く分かりません(あえて探すと一線を越えたことを匂わせる絵が1コマ、一つ目の話であった程度)。


【惰性と言う慣性の法則が働いている作品群】

「いちご100%」18巻 河下水希

いよいよ次巻で最終巻ですか、長かったよ~。これで書棚の一角に無駄に陣取っていたシリーズ全巻を早速ダンボールに移してスペースが空けられます。

ようやく一線を越えてカップル確定しましたが特に感慨ないです。なんだろ、最後ご都合主義全開で皆幸せになりましたというものをもってこられても全く問題ないな。


Comments
わはは大王さん、はじめまして。丁寧にコメントありがとうございます、こちらこそこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします。

>山本修世サンですが、新進作家と呼ぶには余りにも遅咲きですよね。確か、高屋奈月サンと同期

そうなんですか?びっくりしました。それだけキャリアがある人にしてはあまりにも絵がこなれていないような(作風は既にがちがちに固まっているようですが)。

>枠外で勝負、よりも、今まで応援してくれた人向けのプレゼントのような気がしてます。

それだけキャリアがある人だからこそこの扱いだとするならとても納得できます。新進作家(と思っていた)の初期作品集をこのような形で出すなんて通常では考えられないだけに納得できる理由付けです。
commented by 遊鬱
posted at 2005/10/16 23:27
いつも楽しく読ませていただいてます。

山本修世サンですが、新進作家と呼ぶには余りにも
遅咲きですよね。
確か、高屋奈月サンと同期で、初コミックスが去年
ですから、よく我慢したなぁ、と。

今回、新刊がジェッツコミックで出たのも、枠外で勝負、
よりも、今まで応援してくれた人向けのプレゼントの
ような気がしてます。
commented by わはは大王
posted at 2005/10/16 14:56