売れない漫画誌 作品の複雑化が要因、新人育成に障害
今の少女漫画について想うこと
今の少女漫画について想うことⅡ
今の【少女】漫画について想うことⅢ
の場外戦。
まさにタイトル通り(それでは総て反対じゃないの?ということなんだけれど)、問題意識は同じなのに???という論説。
>漫画の単行本は読まれるのに漫画誌が売れない。読者の漫画誌離れの背景には、作品が複雑化し、連載で読むには適さなくなったことなどがあるようだ。漫画誌の衰退は漫画の多様性を損ない、新人の育成に大きな障害をもたらすと懸念する声も大きい。
↑私のこれまでの投稿記事を読んでいただければ分かるように、言わんとすることは同じなのに因果関係がまるっきり逆。漫画離れの背景には携帯(メール)の普及が最大の要因だと思うけれど、それを除いても???なので処方箋がエエェェ(´Д`)ェェエエということになる。単行本を読むということは読者が漫画をきちんと選別しているということ、そして漫画誌自体に魅力が乏しいということ。
>たとえば、『NANA-ナナ-』第十二巻は百八十万部を記録したが、同作品が掲載されている月刊「Cookie(クッキー)」の発行部数は二十万部。また単行本を出すたびに二百万部以上を売り上げる大ヒットシリーズ『バガボンド』を連載する週刊「モーニング」も六十万部に過ぎない。
↑正に事実として認識しておくべきこと。
>読者の漫画誌離れについて、ある大手出版社の漫画誌編集者は「今の読者は複雑なストーリーを持つ長編作品を好む。たとえば浦沢直樹さんのヒット作『MONSTER(モンスター)』や『PLUTO(プルートウ)』のように、長大で複雑な話を漫画誌で細切れに読んでも話が見えず、面白みが伝わりにくい。『漫画誌はやめて、単行本が出てから一気に読もう』となってしまう」と嘆く。
↑だから漫画誌では漫画誌の売り上げを大々的にとりあげなくなってきたということです。そもそも利益を産み出すのは単行本(特に作者にとっては切実です)なので、漫画誌は締め切り代わり、広告媒体と割り切り始めているのでは?そして必然的にタイアップ企画が増えていくことになると(ゲームと連動よりも最近は具体的な商品カタログの代用という傾向)。
>読者が漫画誌を読まなくなったため、「売れている単行本」に人気が集中する。そして、漫画誌は減り続ける読者を逃すまいと、ターゲットを極端にしぼり、同じような作品ばかりを掲載する傾向が顕著になってきた。
↑これが根本的問題です!
ただし、卵が先か鶏が先かという問題は若干ある。漫画誌が読まれなくなったのが先か、ターゲットを絞りすぎたのが先かはきちんと分析してデータを出して欲しい。少なくとも同じような作品ばかり掲載することが漫画誌離れ(そして漫画離れ)を促進しているというのが今までの私の考え。
>漫画評論家の村上知彦さんは現状を「憂うべき事態だ」と判断する。
「多様な雑誌が多様な作品を発表してきたからこそ、日本の漫画文化は発展した。また、漫画誌は新人発掘の重要な場でもある。漫画誌の編集者たちは『毎号漫画を読ませる』ことの意味を考え直す必要がある」と話している。
↑この「多様性」ということこそ、私がくどいほど繰り返してきた本丸です。この文章が結論部に来ると作品の複雑化を問題意識としている冒頭の結論部分が???作品が複雑化すれば必然的に多様化するんですけれど???つまり複雑な作品が少ないからこそそのような作品が売れる。それはきちんと作品として評価して購入したいと思わせる魅力があるということ。手元において繰り返し読みたくなるような魅力ある本は売れるという証明になっていると思います。一過性の消耗品として勝負する漫画誌は、アンケートで好評というだけの浅薄な作品を並べた結果、その他の消耗メディアとの競争に晒され敗北したというにすぎません。
ちなみにアンケートで浅薄な作品に人気が偏るのは、
>『テレビが低俗なのは人間が低俗だからではない。人間の興味や関心が多種多様な中で性的なものや猥雑なものへの興味だけが広く共通しているにすぎない。』
ジョージ・ギルダー
ということだと思います。
そして最後に前回と同様にゲーム業界からの光もいれておきます。発熱地帯さま「小利口と蛮勇と」
>「小利口」な戦略を取り続ける限り、競争は小利口な結果にしかならないのです。小利口な選択をするなら、トップシェアのハードにだけソフトを供給し続ければいいわけですし、
(中略)
>ファミコン20年の歴史において、ゲーム機競争で敗北する企業は、1歩踏み込むべき所でその1歩が踏み込めず、小利口な選択をしているのです。勝利あるいは大きな成果をあげた企業は、肝心の1歩を踏み込んでいるのです。その1歩をして「蛮勇」と呼ぶ人もいるでしょう。
↑はジャンルは違えど作品を届けるという上でそのとるべき王道は同じということをよく示しています。