赤の女王 | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

「思索なんかする奴は、枯野原で悪霊にぐるぐる引き回されている動物みたいなものです。その外回りには美しい緑の牧場があるのに。」
                        ゲーテ「ファウスト」

先日の記事 あまりに不景気でしたので口直しです。
そう、今日はイルミネーションに彩られ、街には恋人たちが溢れだし愛を語らう日です。その中にキリスト教信者がどれだけいるかは非常に疑わしいけれど、キリスト生誕を祝う日に愛し合うということは、世界を祝福するという本旨として非常に正しいと思います。

今までさんざん「この世界で」の恋愛に呪詛の言葉を振り撒いてきたようですが、それは私個人にとってであって他者が「近代恋愛幻想」を楽しむこと自体を否定する気は毛頭ありません。

「恋愛は論じるものではなくてするものだ、と同じように性にまつわる事柄は論じる前にされてしまっていることだ」
                         吉本隆明「対幻想」

近代文学において恋愛がテーマとなったのも、家族や社会的身分といった秩序や理性を吹き飛ばしてしまうその破壊力によるところが大きいわけです。いかんともしがたい想いに振り回されるのは仕方のないところです。

いちいち損得勘定(例えば、お互いの需要と供給が交わるものとして恋愛をイメージしたり)していたらそれは恋愛ではないとよく言われます。ただ無意識レベルでは好きになるという至近要因には、究極要因として生殖本能が根ざしている以上、「好きになる」という行為自体にその相手との子孫は残しやすそうというような計算は働くでしょうけれどね。

一人ではなかなか味わえない自己肯定感、他者との連帯を味わい、甘い快楽(精神的・肉体的ともに)に包まれる。きっとそれは幸せな思い出になることでしょう。大いに恋をして、大いに世界を肯定してください。幸せな人が多ければそれだけ世界自体が幸せになることでしょう。

「他人の不幸を見るのは楽しい。それが不幸だからではない、他人のものだからである。他人が死んだり、危険にあったりすると、その場に駆けつけるのはそのためである。同様にして他人の幸福を見るのは悲しい。幸福だからではない、他人のだからである。」
                 トマス=ホッブズ「リヴァイアサン」

あなたたちに降り注ぐイルミネーション(ホワイトクリスマスにはならなかったかな?)は世界もあなたを祝福しているように感じることでしょう。いまや世界はあなたたちのものです。大いに飲んで食べて交わってください。楽しい至福のひと時は一瞬に過ぎ去るように感じられるかもしれませんが、また来年にも聖夜が来ます。それに年越しイベントも待っているしフラグ立ちまくりです。幸せですね~、大いに消費して少しでも景気を盛り上げてください。そろそろ内需に火がつかないとまずいですよ~。いつまでも続くと思うな親と外需頼みってなもんです…あれ?

あなたが生涯というのは大げさとしても好きで好きでたまらない人と巡りあい、そして今日という恋人たちにとって特別な日に一緒に過ごせるようになるまでにはさまざまな困難があったことでしょう。そのような好きになれる相手を見つけられたことに、そしてその相手もあなたを好きになってくれたという奇跡について神に感謝の祈りを捧げましょう。

「一夫一妻の結合が通常だが多くのオスが情事に耽り、時には一夫多妻を成し遂げるオスもいる類人猿である。低い地位のオスと結婚したメスはより高い地位のオスの遺伝子を獲得するためにしばしば夫を裏切る類人猿である。雌雄相互に非常に強い性淘汰を受け、その結果メスの多くの形質(胸・ウエスト)と雌雄の知力(歌。ステータス願望)がパートナーを巡る争いで用いられるようにデザインされた類人猿である。」
                    マット・リドレー「赤の女王」

その素敵な幻想からできるかぎり醒めないように私も祈っています。

世界中の恋人たちに幸あれ!メリークリスマス!