「ブギーポップ・デュアル 負け犬たちのサーカス」~絶望のち諦念ときどき希望~ | あざみの効用

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『―――人間の可能性は善にも悪にも開かれている 二流の社会生活に押さえつけられた可能性が独立して存在を主張するのが多重人格だと私は考えている それがどんなに病的で本人や周囲に対して破壊性のあるものでも―――可能性に善悪の区別はない』

                  霧間誠一「心の中の叫び」


一応記念すべき?10万Hitということで、今回はこれまで何度か断片的にメモだけしてきたブギーポップ、上遠野先生に関する纏めみたいなものを、ラノベではなく、派生というよりも波及というほうが霧間先生的には言葉遣いとして正しいかと思われる「ブギーポップ・デュアル―負け犬たちのサーカス」 (著)高野真之をとりあげつつ書いてみようかと。

【参考】
http://newmoon1.bblog.jp/entry/151695/ (「BLOODALONE」1巻感想)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/213514/ (2巻感想)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/307830/ (3巻感想)

「ブギーポップ・イントレランス」の感想として記したことの繰り返しにもなるのだけれど、ブギーポップをブギーポップたらしめているのは、上遠野先生が尊崇しておられるJOJOばりの超能力バトルではない。そのようなものがメインを貼ったものはことごとく駄作になっているとすら個人的には思っている。そうではなく、各巻、各巻ごとに主役を張るキャラがなんだかんだとものくさし妥協しもって生きてきながら、ある種の「大人」としての分別をかなぐり捨てて、妥協せずに現実に孤独な戦いを挑むことにある。そしてここからが上遠野先生の本領でもあるのだが、必ずその青臭い思想、正義は「世界の敵」として、残酷な世界=現実の前に無残なまでの敗北を喫する、敗者復活などない、命を失うこともざらである。

しかし、そこで小器用に立ち回ってそこそこの妥協をするという選択肢はない、ブギーポップは圧倒的な力で最後の最後に立ち塞がる壁でありつつ、世界から背を向けて逃げ出すことも許さない呵責な存在である。だからこそ、ブギーポップの出番は分量としては少量に過ぎない、重要な岐路、選択の後にしか登場しないからだ。しかし、生を正当化する可能性は「世界の敵」としてでしかありえないと。

…ところが、この漫画版では前提たるブギーポップもまた敗北するものとして描いてしまっている、その後のブギーポップとでもいうべき異色の作品となりえている。そしてだからこそ、主人公は秋月くんではない、五十嵐先生である。

あまりにもブギーポップが弱いと原作のファンなら憤慨を覚えるかもしれないが、所詮は不気味な「泡」、かつ消えかつ結びて、久しく留まるまることなしなものにすぎない。いつかはお役御免になる日がくる、そうでなければ自動的ではなく、固有の存在となりうるはずなのだから。五十嵐先生の喪失感、寂寥感は「若さ」に対するいろいろとない交ぜになり、酸っぱい想いとして綺麗に描かれている。

そして大事なのは一度敗北したらそれで終わりでは決して無いということだ、たとえ特殊な能力を失ったとしても(これはそのまま若さに置き換え可能)、諦めずに戦い続けること、歳をとったればこそ可能な戦い方というものも出てくる。その方向を突き進めることで「世界の敵」たりえたのが霧間先生であり、水乃星透子さまというのは余談かな。原作であるラノベが思春期ただなかの若者向けの著作だとすれば、これはもう少し上の世代向けの作品といえる、しかしその根幹の部分でこれほど繫がっていると感じられるオリジナルのメディアミックスはお目にかかったことはない。

またそのような物語部分とは別に高野先生の艶っぽい、黒を色々な色に見立てた彩色表現豊かな画を観賞するだけでも十分楽しめます。

あと、漫画版ブギーポップの能力が空気砲のようなもので、猫草にヒントを得ているのかもと考えるとそのオリジナルなオマージュの用い方としてもGreat!

204 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/09/22(金) 20:07:54 ID:bkYGztue
奈須もかどちん読んでるよ。ファウスト5のインタビューで明かされてる。

西尾:『ブギーポップは笑わない』がなかったら今の僕は居なかったと思いますよ。僕だけじゃなくて、佐藤さんも、もしかしたらあの奈須きのこさんでさえいなかったかもしれないんじゃないでしょうか。

太田:それについては以前、奈須さんも実際に同じことを仰ってましたね。奈須さんは相棒の武内崇さんと武内さんのお兄さんに、ある日突然『ブギーポップは笑わない』を渡されて、「これがお前のやりたいことだ!」って一方的に宣言されたらしいですよ。このように優秀な小説家には優秀な小説家を目覚めさせる力があるんですね。

西尾:まさに、上遠野さんは、僕たちにとっての『霧間誠一』なんですね。

上遠野:そんな綺麗にまとめようとしなくても……(笑)

この上遠野先生を特集した号のファウストに関してはどこかのブログのコメント欄で愚痴った覚えがあるんだけれど思い出せないorz

39 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:25:56 ID:sr8Y2i+d
統和機構の実態がいざ蓋を開けたらかなりガッカリだったのと一緒で透子たんの神聖性を保つためにはストレインジは書きたくないのかもナ

宗教の救済とか天国の描写と同じだよね。

40 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:27:29 ID:Qhmvfgta
>ラストというのは終わりの話っぽいもの(ストレインジ)のことですよね。それは今ちょっと悩んでいるところです。四冊やるか、四つの話を一冊の短編集でやるか。どちらにしても四部構成というのは決まっているんですが。で、まあ、四冊書いてもいいんでけど、それだと一年以上他の仕事ができないので、上遠野は消えたとかいわれてしまう。時間を取られるからだめということでもないんですけど。本当にちょっと悩んでいます。

>それに、四部作の一話目はブギーポップは出てこないし、そこもね……。ただ、これがラストだからといって、この後でブギーポップの出てくる小説は一切書かないか、というと、これはなんともいえないです。

41 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:35:43 ID:dtqzE55N
活字倶楽部か。また特集組んでくれれば買うのに。

42 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:35:49 ID:0tM6Pw/O
つうかブギーシリーズにブギーの存在は必須ではないと思うのだが

必須だよ、それは分量の問題ではなくて「世界の敵」認定として。

44 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:45:15 ID:Qhmvfgta
――『ロスト・メビウス』『ジンクス・ショップへようこそ』で今まで横に広がってきたシリーズが縦に、時間軸が前に進みだしたように感じたのですが。

上遠野:縦に進めようという意識はありません。『ブギーポップ・ストレインジ』(6)というタイトルだけが決まっている作品があって、そこに作品を絡めていこうとしているので、縦に進んでいるように見えるのかもしれませんね。『VSイマジネーター』で冒頭から死んでいた水乃星透子透子が別の作品に登場するのも『ブギーポップ・ストレインジ』を念頭に置いているからなんです。

――『ブギーポップ・ストレインジ』は『VSイマジネーター』と深く関わっている作品なんですか?

上遠野:そうですね。『VSイマジネーター』の前に『ブギーポップ・ストレインジ』を書かなかったのが、漠然と広がっていく世界というシリーズの方向性を決定づけたのかもしれない。『ブギーポップは笑わない』が変則的な話だったので、その単純な続編をすぐに書いたらみんなが失望するかもしれないと思って……自分でいっていて昔はそんなことを思っていなかったような気がしてきた(笑)。

――今、作った記憶ですか(笑)。

上遠野:『VSイマジネーターPart1、2』で書いたことって、まだ気持ちとしては終わっていないんですよ。だから関連している作品である『ブギーポップ・ストレインジ』を書きたいんです。

パブリックエネミーナンバーワンの会話でもって、書きたいことのエッセンスはほとんど示されていると思いますが。

――『ブギーポップ・ストレインジ』はいつ頃、書かれる予定ですか?

上遠野:まだまだ先になりますね。この作品を書いているときは、きっと他の作品は一切書けなくなると思う。それくらい集中して書こうと思っている作品です。

(6)これは四部構成でそれぞれ主役が、
第一部 黒田慎平
第二部 水乃星透子(生前)
第三部 宮下藤花
第四部 竹田啓司
……ということになっている。しかしホントにいつ書けるのか……。

45 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/10/16(月) 00:48:49 ID:0tM6Pw/O
まだ四部作の一つもてつけてないんだろ…

十二国着の新刊なみに望みがないと思われ

_| ̄|○

145 名前:インタビューにて。 投稿日:2006/10/19(木) 01:53:53 ID:7UDZ2yp6
――『事件シリーズ』はキャラクターと旅をしたい、というのが書くきっかけだったそうですが?

上遠野:『殺竜事件』はそうですね。キャラクターに旅をさせたい。だから世界を作ろうと。それが出発点です。

――なぜ異世界を舞台にしたんですか?

上遠野:世界のことを表現しようとするときに、現実世界を舞台にすると、現実の政治や思想などに引っかかりすぎて、いいたいことが読者に届かないだろうなと思ったんです。俺のこの気持ちを伝えるにはファンタジーが向いているんじゃないかな、と。

――ファンタジーにミステリーを持ち込んだのは斬新でした。

上遠野:そうそう。『殺竜事件』はそれを意気込んでやったんですよ。そしたら、ものすごく空回り(20)しましたね(笑)。見事に書けたな、と自分では思っていたんだけど、そういった反応が少なかった。だけどシリーズはやめない、という意地はありましたよ。ムキになって嫌がらせのようにやめないぞ、という(笑)。

最新刊はもはやミステリーの体を成していませんがね('A`)

――そんなに評価がよくなかったんですか?

上遠野:一致した評価があるわけじゃないですけどね。絶賛する人と批判する人との間にあるものはなんなんだろう、というのは疑問ですね。きっと、批判される理由というのは、何をしたいのかわからない、に集約されてしまうのだろうと思うんですよ。俺は何を書きたいのか明確にしていると思っているから、そこにギャップがあるのかもしれない。もしかすると、ちょっと独善的(21)になっているのかな? 評価はともかくとして、作品がたまれば、その位置づけはできるようになるだろうと思って、書き続けているというのもあります。

かどちん本人による解説
(20)→ちなみにRPGゲームの舞台設定のようだと当時言われた。ドラクエ……ということであろうか。Ⅶを中途半端にしかやってないんですが。勉強不足がたたったのかもしれない。
(21)→かもしれない、ではなく明確にあるなー、これは……。

146 名前:続き。 投稿日:2006/10/19(木) 01:55:18 ID:7UDZ2yp6
――今の段階では位置づけ不能な作品かもしれないと。

上遠野:そうですね。ファンタジーとミステリーの食い合わせが悪かったのかもしれない。だけど、ミステリーの部分では最初にちゃんとルールを設定した、という意識はあるんです。ピンと来ない人が多いのかもしれない。ルール設定がうまくできる人とできない人に分けるなら、自分はそれが下手な作家なのかもしれないなぁ。

――ミステリー的な部分は魔法があっても変わらないんですよね。

上遠野:魔法という言葉を使ったのは、修飾的な意味が多分にあったので。あの世界の文明は魔法で作られています。科学的分析という代わりに魔法的分析があって、魔法は分析できる対象なんですね。だから、魔法を使ったから不可思議ということにはならない世界なんです。魔法という部分で引っかかってしまう人がいるのは、いろんな要素を詰め込みすぎたせいかもしれない。

147 名前:続きの続き。 投稿日:2006/10/19(木) 01:56:27 ID:7UDZ2yp6
――巻が進めば進むほど世界を深く理解する部分が魅力的である反面、深すぎてよくわからなくなってしまう読者が出てくる可能性もありますよね。

上遠野:「事件」といっているのはそこらへんに理由がありますね。ファンタジーというくくりだと世界が広すぎて漠然としてしまうので、そうならないように事件という狭い焦点から世界を見てもらおう、という。

――なるほど。ものすごくすっきりと『事件シリーズ』が理解できました。

上遠野:すっきり(笑)。でも後から読み直してみると、あのすっきりはなんだったんだろうって思うんじゃないですか?(笑)

――いやいやいや(笑)。これからシリーズを続けていくと、キャラクター同士の争いなどがメインになって、事件がなくなったりはしませんか?

上遠野:キャラクターの対立と事件が別の形で起きるという展開になるでしょうね。キャラクターの争いがあって、事件があって、その二つがクロスオーバーしながら、なんらかの解決を迎えるという。実は次回の作品『残酷号事件』(23)で、そういった部分をどうするべ、と頭を抱えているところなんです(笑)。

かどちん本人による解説
(23)→要は、改造人間サトル・カルツの魂の遍歴を書くのか、彼の起こす世界への影響を書くのか、ということである。全然“要は″になってないが気にしないで下さい。混乱してるんです。

・・・かどちん、残酷号早く書いてくれ。

( ;´・ω・`)人(´・ω・`; )

847 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/06(月) 22:55:37 ID:f+Qg/dQh
そういやしずるさんの一作目を新装版と旧版両方買ったなぁ
もちろん中身が同じだってちゃんとわかってたんだからねっ!

848 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02:29:45 ID:snjp+nWw
>>847
中身同じなのを知ってて同じ本2冊も買うなよwwwwww
まぁ、俺の百合本棚にも旧版と新装版二冊並んでるんだけどね。

849 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02:32:25 ID:44dKEw3d
おまwwメ欄にナニ書いてんだwwww

「少女セクトは3冊…」って書いていましたw

49 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/11(土) 16:41:43 ID:3HIrAnIY
知ってるかい、ブギーは映画化もしたんだぜ?

51 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/11(土) 16:44:44 ID:rH1Bs66s
>>49
ブギーはアニメ化も映画化もしてないよ 何言ってるんだ

53 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2006/11/11(土) 17:01:09 ID:WPwf+FR0
>>51
痛みから目をそらしちゃいけないよ

(∩゚д゚)アーアーきこえなーい


【参考】
http://newmoon1.bblog.jp/entry/127728/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/157587/ (水)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/186937/ (水)
http://newmoon1.bblog.jp/entry/206603/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/273713/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/300535/
http://newmoon1.bblog.jp/entry/325551/


「あの時は…もう気付いていたんだ。自分の言葉にある特定の人達を狂わせる力があることを。それは―――小さなつまづきや失敗で失望しあきらめてしまったり―――自らの負けを心のどこかで認めてしまった連中だ…ちょうど―――今のキミのように~ダメだよ、たとえどんなに小さくてもここにある――絶望の兆しは私には隠せない」