危機的な時代劇 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

私の子供の頃は、沢山の時代劇があってお茶の間を賑わせていた。

あの頃は良かったなぁ。


しかし、時代劇というのは製作費が莫大に掛る。

だって、我等の日常とは違う世界を描くのですから、背景となる場所じたい特殊である。

ちょっと前までは、その辺の河原でなんとか撮影できたけれど、今は高層マンションがスラーっと並んでいたりして・・・ロケなんてできる場所を探すのが大変ですよね。

また、時代劇というのは、昨日や今日の人たちが作れるものではないのですよね。

あるインタビューで松方弘樹氏が

「ここからそこまで歩いてごらん」と言われて、時代劇の撮影で歩ける役者がほとんどいないと思うと言っていた。

きっとたぶんそうだと思う。

時代劇って、独特な所作がある。その所作を獲得できている人が少ない。

歌舞伎の人がいるじゃないか!いやいや、歌舞伎と映像の時代劇とは基本世界が違う。

映画・テレビの時代劇は、その世界の諸先輩から伝わっている伝統がある。

所作のような決まり事は諸先輩を見て覚えるものである。

時代劇スターというのは、まず乗馬ができなくてはいけないそうだ。そして、殺陣。

この二つを習得するだけでも大変な事である。

松方氏曰く、

若い人に伝統を伝える「人」がいなくなっているらしい。

また、今時の若い方々は忙しくて習得しなければならないものを習得する時間がないとか。

フムフム。分かる、分かる。


時代劇を構成するにあたって、時代劇を掛ける作家がまずいなければならない。

そして、それを演出できる人間がいなければならない。

そして、そのドラマを支える事のできる裏方スタッフがいなければならない。

そして、演じられる役者がいなければならない。

今、それらすべてが皆無になりつつあるようだ。


襟の合わせを反対に着せられた着物姿のお姫様が出てきても、

「それって、違う」と指摘できる人がいなくなっているという事ですね。


私は時代劇の現場で育っているので、本当に本当に寂しいのです。

御当人はぜんぜん忘れていらっしゃると思いますが、松方氏にも色々と教えていただいた事がありました。

もう、私の時代から

「時代劇は製作費が掛る」という事でどんどんなくなっている時代でした。

ああ、悲しい時代ですね。