阿古屋というと『壇浦兜軍記』という歌舞伎のヒロイン。
平景清の恋人。平家滅亡後、鎌倉幕府に追われる身となった景清。傾城の五条坂の阿古屋は景清を追う秩父庄司重忠と岩永左衛門に尋問を受ける事になる。
『壇浦兜軍記』の三段目は有名な阿古屋の琴責めの場面。
「景清の行方は知らない」という阿古屋の言葉の真意を知るために、阿古屋に琴・胡弓・三弦を弾かせ、その音の乱れ(心の乱れ)の有無を探られる。阿古屋は見事三つの楽器を演奏して「本当に知らないのだ」という事で釈放されるというお話。
・・・
阿古屋は本当は知っていたのですよね。それなのに・・・凄い!
心底景清を愛する阿古屋。
しかし、調べていたら、とんでもない結末に出会ったのでした。
『出世景清』という浄瑠璃では、
阿古屋(阿古王)は景清との間に二人の子供を設ける。幸せ・・・いやいや違うのです。
実は、景清は熱田神宮の宮司の娘と結婚していたのですね。
つまり、三角関係という事です。
所詮は傾城ですから、色香を商売とする女の定めなのかも知れませんね。
この物語での阿古屋は嫉妬心の強い女として扱わられているようだ。
結局、違う女と結婚してしまった事に嫉妬して、幕府側に「景清はここにいるわよ」とチクるのでした。
この所業・・・。『壇浦兜軍記』の阿古屋とは結びつかない。
この所業のもう一つの理由は、教育ママゴンでもあった阿古屋さん。平家の残党と成り下がった景清との間に生まれた可愛い二人の子供たちの行く末に悩んだとか。
確かに、指名手配犯の子供ですからね。行く末が心配ですよね。
この物語では、
景清は幕府に囚われ牢につながられる。
ある日、情夫を裏切る結果を生んでしまった阿古屋は二人の子供を連れて、牢につながられている景清に許しを乞いに訪れるが、当然の事、許しを得る事ができず、
阿古屋は二人の子供を殺害して、自分も自害するという悲劇の結末らしい。
しかし、実は・・・
阿古屋の裏切りに怒った景清は二人の子供を殺害。そして、一端は逃亡するのですが、妻と義父が囚われてしまい、その身の上を案じて自首する。
で、阿古屋は・・・
情夫を裏切る所業が源頼朝の怒りをかってしまう。なんと罰として簀巻きにして川に沈められちゃう。
チクッたのに、、、
普通は褒美が出るでしょう。とんだご褒美が出てしまったという結末。
この阿古屋の結末。
あの長唄の『三曲糸の調』に出て来る阿古屋像からは想像もつかない結末。
本当にショックです。