32回杵屋会 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。


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今日も冷たい雨でした。

でも、なんかムシムシする感じもするし、この季節は嫌いです。


さて、今日はイイノホールで開催された杵屋会に伺いました。杵屋宗家である、杵屋喜三郎氏と杵屋寒玉氏お二人の主催する会である。

お囃子の師匠がご出演という事で足を運んだ。


イイノホールというと、昔は温知会もここのホールでした。

改装するという事でしばらくお休みだったのですよね。

何か、昔ながらのボロボロのビルというイメージがあるのですが、なんとずいぶん立派で綺麗なビルになってしまって吃驚。おかげ様で迷子になるところでした。



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以前よりモダンなイメージのホールでしたが、もっともっとモダンなホールになっていました。

国立小劇場よりも、紀尾井ホールよりも私は良いホールだと思いました。

ホールによって、残響音の加減で邦楽には不適切なホールもありますが、客席で聴いた感じではそんなに違和感ありませんでした。舞台の方はどうなのかしら?!

客席もゆったりしていていい感じ。

ただ、ロビー外のトイレ・・・。

男女共同で個室が二つしかないのがちょっとなぁ・・・。

共同というのが・・・特に嫌だなぁ。


さて演奏は


『外記猿』

女流の三十二挺三十枚と大勢の大舞台。迫力でした。

「弾きやすいところはノリが崩れて走りがちに、不得意なところはもたれ気味になりがちになりやすい」

三味線を弾く人が誰もが思い当たる特性だ。そうならないようにどの方もきっと注意し、そしてそうならないように稽古を積んでいる事と思う。

しかし、こういった大勢で演奏する時って、注意していても走りやすいところは走り、もたれやすいところはもたれる。そして、ばらつきが目立つものですね。

それが、惜しいと思われるが、一曲を全体に評価すれば、美しくまとまって素敵な外記猿でした。


『神田祭』

なんの間違いもないのですが、何か全体の呼吸が乱れていたように思う。聴いていて肩についつい力が入っている自分に気が付く。

個々の方々、みんな素晴らしい演奏なのに、何気に個々が違う呼吸をされている感じ。

良い演奏だったけれど、何かもったいない感があった。

君三郎氏の木遣のところが良かったなぁ。


『月の巻』

女流の方々の演奏でした。

この曲は本当に楽しい。名作ですね。この曲の太鼓地は大好きです。

大好きだけれど難しい。

ラッキーな事に師匠の太鼓でした。

あの時に注意されたことや、あの時に目指したものを思い出しつつ、

師匠の打つ音、フォームをじっくり拝見しました。

不器用な私。なかなか生き写しのように真似る事ができないのが悲しい。

あのように打てたら・・・。カッコいいのになぁ。まだまだ目標は遠いです。


『綱館』

杵屋直吉氏の唄、杵屋勘五郎氏の三味線。迫力があり、とても素晴らしい演奏でした。

勘五郎氏の三味線は歯切れがよく、パワフルで。なのに荒っぽくなく、何気に繊細だ。

久々にすっきりする三味線を拝聴した気がする。

直吉氏の唄は本当に色気がある。それも厭らしい色気でなく江戸前である。

従妹同士のこの舞台。女房役の勘五郎氏は、直吉氏の魅力を100%以上引き出しているように感じた。

演奏オンリーなのに、そこに綱がいて、鬼女がいて・・・。そんな光景が見える演奏でした。


『安宅の松』

女流の方の出し物でした。お囃子が入らなく、ちょっと残念。

この曲の一調は素敵なのに・・・。お家元がいらっしゃっていたので、お家元の一調が聴けるかとちょっと楽しみだったのですが、プログラムを見てちょっと残念でした。

いやいや、この会は長唄の演奏会でお囃子の会ではないのだから、演奏を楽しみましょう。

・・・と思うのですが、お囃子っ子の私は残念な気持ちが先行してしまった。


『靱猿』

会主お二人の演奏。私にとってこれがメインでした。

師匠の太鼓で、

「私の好きな曲」のベストテンに入ります。

この曲の前半にある辻内。二回あるのですが、あとの方の辻内が大好き。

師匠の華麗なる撥さばき。いつもいつもうっとり見惚れてしまいます。

見ていると簡単そうなのですが、真似をすると私はタコになります(恥)

今日は、お家元のスキルに惚れ惚れ。軽いタッチで透き通るような乙の音を出す。

まあ、楽器の違いもあります。

私のコバチャンでは、あんな音はどう頑張ってもできません。小鼓は技術と楽器ですね。お家元は、その楽器の持っている能力を100%引き出して、それを自由に扱っている。本当にすごいです。

さて、喜三郎氏の唄は年々渋みが増しますが、なのに分かりやすく説得力のある唄だと思います。

寒玉氏の三味線も素晴らしい。ご高齢なのに、歯切れの良さはぜんぜん変わっていないのが不思議です。ご子息の勘五郎氏がワキに付き、三枚目・四枚目はお孫さんだ。

三枚目に並ばれている廣吉氏。何年か前の温知会で初めて演奏を拝聴しましたが、あの頃に比べたらすっかりプロに成られています。やはり芸と言うのは日々の積み重ねだと思いました。

長唄も三味線もお囃子も素晴らしい演奏でした。大感動♪でした。