今日から三日間、国立劇場で「日本舞踊協会公演会」が開催されます。
たまたま、今日はお休みだったので行って参りました。
ラッキーな事に今日はお囃子の師匠が囃子方で出演されていて、師匠の演奏姿を観て勉強にもなりました。
昼の部・夜の部の二部制。私はどちらとも鑑賞しました。
全部で十七曲。。。すごい!「私も好きね」という感じです。
でも感想を書くには余りにもいっぱい。
今日は印象的だったものだけにします。
「とっぴんしゃん」
初めて聴く長唄です。東音会の菊岡裕晃氏の作曲のものだそうです。主題は「ねずみ」だそうで。。。「ずいずいずっころばし」をもとに作られたそうです。
女性七人の踊りでとっても華やか。三味線も上調子・低音三味線が入っていい感じでした。・・・でも、四丁四枚・・・ちょっと寂しい。最低でも六丁六枚は欲しいな・・・
と思いつつ、とってもコミカルな曲で良かったです。踊りも面白かったです。けれど、ふと思いました。あの踊り子さん達は鼠なんでしょ???鼠が七匹も目の前に現れたら、きっと大絶叫の末に私は気絶しちゃうかも。。。(汗)
鼠というキャラクターって不思議ですよね。ミッキーマウスもジェリーも可愛い。この踊りのねずちゃん達も可愛い。でも、実際の鼠って・・・私はちょっとゴメン被りたい。その感覚の差って何なのでしょうね。
さて、この曲は始めて耳にする曲ですけれど、やっぱり演奏としてもあまり出ない曲のようです。
長唄の三味線って暗譜が基本ですけれど、こういった曲の時は皆さん楽譜を観ています。それも、すごいかぶり付きよう。楽譜を出して演奏というのは良く目にしますけれど、あそこまで踊りそっちのけで楽譜にかぶり付く演奏家さんも珍しいなと思わず可笑しくなっちゃいました。たぶん、手が細かいのでしょうね。
「後面」
岩井流の伝承曲なんだそうです。本名題は「柳雛諸鳥囀(やなぎにひなしょうちょうのさえずり)」というそうで、六変化舞踊だそうです。その中には、あの有名な「鷺娘」も入っているそうです。
本日ナンバーワンの面白さでした。踊りは松本錦升氏(市川染五郎氏)でした。
本当に若いだけあって玉様真っ青な美しさでした。ただ、ちょっと男っぽい。その怪しさがまた良かったりして。
幕が開いて登場したのは、一人の尼さんでした。
うーんなんか地味!
でも、なんか頭が変だよ。後ろがポッコリしていて。。。そうか、曲の途中で引き抜きか何かあって娘に変身。つまり下はカツラ。。。それにしても、衣装は引き抜きがある割りにはペラペラだな。。。
引き抜き大好きな私の期待を裏切って、なっ何と!そのポッコリは狐のお面でした。
つまり、この尼さんは狐が化けたものなんですね。
そうか!だから、スッポンからドロで登場したんだ!
正体の現れた狐は、尼さんに変身したり正体を現したり。。。こんな感じでお話は展開していきます。
一人二役。。。それも狐の時は後ろ向きで踊っているのですよね。まるで正面を向いているように踊る染五郎さん!
彼の体の柔軟さに吃驚です。まあ、実際には無理があって後ろ向きに踊っていますというのは分かりますけれど。。。
さて、こういった会に付き物は、説明したがりのご婦人。
「あれって後ろ向きで歩いているのよ」とか
「まあ柔らかいわよね。お若いから」。。。
演技中の私語は謹んで欲しいです。後ろでブツブツ煩いよ!説明されたお友達だって、観ていれば後ろ向きに踊っているくらいわかります。
「雪の道」
この曲は大和楽です。
おおっ台詞付きの踊りでした。
舞台は大阪。嫁入り先で辛い思いをしている主人公。ある雪の降る日、歩いていると下駄の鼻緒が切れちゃうのです。そこへ通りがかりの男性が優しく鼻緒を直してくれました。
その男性。。。なっなんと昔の恋人。彼女の事を「とおはん」とか呼んでいたから、彼女の実家の使用人だった人ではないでしょうか?
彼は、彼女の様子を見て結婚後不幸な日々を送っている事に気が付いて、彼女を幸せにしてあげたいと思ったんでしょうね。
おおっ!昼メロだ!うんうん、絶対この二人は不倫に陥るぞ。それで二人で駆け落ちしてハッピーエンド!
と思いきや、そんな単純じゃなかった。
彼女は江戸時代の人。
彼女もほぼ90%は彼の胸に飛び込みたかった事でしょう。
しかし、彼女は辛い人生を選択したのでした。
うーん。。。今時だとすぐ不倫に行っちゃうのに、やはり昔の人は今と違うのですよね。
なんか、樋口一葉の世界という感じで暗い物語でしたけれど、なんか感動しちゃった。
昼メロタッチの物語に感動するようになった私。
昔はネチネチして好きじゃなかったのに。。。何か複雑。
「連獅子」
勇壮な獅子の姿を期待していたのですが、今日は素踊りでした。たまにはこういった踊りも良い物です。
そうそう、もし衣装付きなら変身の時間調整のために胡蝶がいるはずですものね。けれど、出演者は二名だけ。
何で気が付かなかったかな?!
素踊りの時は乱序・露がないのですね。
幕が開いて。。。なんだ素踊りかと落胆したのですが、観ていてだんだん面白くなってきました。
たぶん、踊っている方が「素」に耐えられる方だったのでしょうね。
たぶん、衣装付きだと姿の華やかさに技術不足の部分を補えますが、素だとごまかしが効きませんものね。
地味な連獅子でしたけれど、幕が降りて衣装付きの連獅子を観た後と同じような「良かった!」という感動がありました。
「水仙丹前」
長唄の丹前もの。「廓丹前」「高砂丹前」に並ぶ代表作です。
粋で華やかな舞踊でした。
そうそう、一つ疑問が。。。
水仙ぽい色合いの衣装だったのですが、何故か柄が「竹」でした。
「竹丹前???」
何か意味あるんでしょうか。。。それとも、たまたまなのか?!
まあ、竹に水仙も美しい絵になりますが。。。
けっこう楽しそうな曲で。。。
「廓丹前」「高砂丹前」のお稽古しましたから、この曲もいつかはお稽古したいものです。
「山姥」
踊り手は人間国宝の花柳寿南海氏でした。
うーん上手い!とっても地味な出し物でしたけれど、上手さでは本日ナンバーワンでした。
さすがにお膝が弱くなっているようですけれど、今日の演目には何の支障もなく自然でした。
決まった姿が絵になっていて素敵。とっても味わいがありました。
河東節。。。珍しい!
長唄の中にも、河東節から来た「助六」とかありますけれど、長唄とは全然違いますね。
三味線の「ハオーゥ」とか掛け声がとっても古臭い感じがして味わいがありました。
唄も長唄と違って、味わい深い。
唄われている方がお歳のせいなのか、それとも河東節というのがそういうものか不明なのですが、低音で渋みの掛かった唄い方!素敵と思いました。
河東節なんて、踊りの会くらいしかお目に掛かるチャンスがない。とっても良い経験をしました。
今日は朝からずっと国立劇場で過ごして、ちょっと疲れました。けれど、とっても楽しい時間を過ごす事ができました。