『鏡獅子』は長唄の石橋ものに分類される曲。『石橋』とか『連獅子』とかと同じで能の『石橋』がベースとなっている長唄です。
『石橋』って・・・。ご存知と思われますが一応ストーリーを・・・、
「中国・インドの仏跡を巡る旅を続ける寂昭法師は、中国の清涼山にある石橋付近に着きます。そこにひとりの樵の少年が現れ、寂昭法師と言葉を交わし、橋の向こうは文殊菩薩の浄土であること、この橋は狭く長く、深い谷に掛かり、人の容易に渡れるものではないことなどを教えます。そして、ここで待てば奇瑞を見るだろうと告げ、姿を消します。
寂昭法師が待っていると、やがて、橋の向こうから文殊の使いである獅子が現われます。香り高く咲き誇る牡丹の花に戯れ、獅子舞を舞ったのち、もとの獅子の座戻る」というお話。
さて獅子は中国の架空の聖獣。
でも、元祖はアフリカのライオン。アフリカからインドに。そして、シルクロードを通って中国に。その長い旅路に姿がどんどん変化して“獅子”になったとか。日本の狛犬も獅子なのだそうで。
ライオンはネコ科の動物なのですが、なぜか日本に上陸すると“犬”になってしまいました。面白い。
獅子は文殊菩薩の乗り物。この獅子にまたいで文殊菩薩は天界を右に左に。
文殊菩薩は普賢菩薩と共に釈迦如来の供侍として脇を固めています。
普賢菩薩は白い象にまたがっている。
このお二人は中国の古い小説の『封神演儀』という物語に登場しています。崑崙十二大師で主人公の姜子牙(太公望)に力を貸す仙人。文殊菩薩は文殊広法天尊といい五竜山・雲霓洞の仙人。普賢菩薩は普賢真人といい九功山・白鶴洞であった。
この二人はのちのち仏教に帰依して菩薩になったらしい。
普賢菩薩は四川省の峨眉山、文殊菩薩は山西省の五台山(清涼山)を修行場にした。
そういえば峨眉山というのは中国のいろいろなお話に出てくる山だ。『三国志』に『西遊記』。中国を舞台にした芥川龍之介の『杜子春』にもこの山が出てくるなぁ・・・と・・・またまた脱線しそうになってしまった。
荼枳尼天は白狐に乗って天空を移動する。『封神演儀』の登場人物で峨嵋山羅浮洞の仙人である趙公明は黒い虎に乗って天界を駆け巡る。神様・仏様、そして仙人というものは吃驚しちゃうものをマイカーに使っている。それだけでロマンチック。ファンタジーだなぁ。
ところで文殊菩薩というお方は、兎年の方々の守り神様だそうです。
また、「三人集まれば文殊の知恵」というくらいに、文殊菩薩は知恵の神様(いやいや仏様)でもあります。
今年は兎年。今年誕生したお子さん方は文殊菩薩様のご加護を受けて、きっと賢く育つことでしょうね。
・・・長唄を通して雑学を。
獅子から文殊菩薩へと話が広がってしまいました。