本日は、イイノホールで開催された温知会に行って参りました。
今回が、イイノホールでの演奏が最後のようです。
次回からは、国立小劇場で開催されるようです。
なんか、どんどん老舗のホールが姿を消すという感じです。
温知会。。。今回で第123回目なのだそうで。。。
すごい、長寿の演奏会です。
超流派の演奏会で、なかなかこのメンバーの演奏会を一つの演奏会で堪能できるなんて滅多にない事です。
『外記節猿』
唄 杵屋彌十郎、他
三味線 稀音家六治、他
お囃子 藤舎呂船、他
全体的には、お江戸の華やかさというより、粋な感じが表立った演奏で素敵でした。
本日は、小鼓の一調を勉強させて頂きました。
私は、まだ『外記猿』のお囃子って、大皮でしか習った事がないのですが、この曲の一調は大好きです。
今日の一調は、私のお稽古している流派のお家元先生なのですが、とても味わいのある素敵な一調でした。
江戸庶民の素朴さと、江戸の粋が一音一音に感じるようなそんな一調。
こんな一調が打てるようになれたらいいなぁ。
『都風流』
唄 宮田哲夫、他
三味線 杵屋寒玉、他
本日の『都風流』は杵屋寒玉氏らしい歯切れのよいものでした。
三枚目の三味線の方。。。今日はじめて見る若者でした。
たぶん、お孫さんかな???
親子三代・・・の舞台???
『都風流』というと、シャラシャラという曲想をついつい思い込んじゃう。なので、最初はちょっと吃驚しましたけれど、いつの間にか、寒玉ワールドにはまってしまいました。
最後の“雪の合方”感動しました。
宮田哲夫氏の唄は、いつも杵屋五三郎先生の三味線とか、東音会系の方々の三味線でしか馴染みがないのですが、ぜんぜんカラーの違う寒玉氏の三味線にもマッチしていて、なんかとても新鮮な気持ちで拝聴しました。
温知会はこれが楽しいのですよね♪
『賤機帯』
唄 杵屋巳紗鳳、他
三味線 杵屋五三郎、他
お囃子 藤舎呂船、他
本日の楽しみ演奏でした。
お囃子、本当は朴清先生だったのに、休演で急遽、お家元先生がなさる事になったみたいです。
朴清先生の演奏、楽しみにしていたのになぁ。
朴清先生の翔り、聴きたかったです。
我を失った人の解釈で、亡くなった大皮の師匠と大喧嘩。
二人で、都内のM病院という精神科の病院の外来に行って、一日を過ごし、そこに来る患者さんの様子を観察し二人で翔りの研究をしたそうで・・・。
朴清先生の『賤機帯』の翔り。その息を勉強したかったのですが・・・。
私は、けっこう日常的に我を失ってしまっている方と接する機会が多いのですが。。。ぜんぜん、翔りの息がつかめません。
はあ。。。いかに毎日、漠然と生きているかですよね。。。
さて、演奏の方ですが、巳紗鳳氏の唄は年輪と共に味の素が加わり、更に更に味わいがあって良いものでした。
昔から美声で素敵な唄方さんでしたが、さすがに、若かりし頃のお声とは違いますが、良い時を過ごされているんだなぁと思いました。
五三郎先生の三味線はさすがです。
音もさることながら、間に魂がこもっていて聴き応えのある演奏でした。
『秋の色種』
唄 杵屋喜三郎、他
三味線 松永忠五郎、他
今日の演奏の中で一番、私的には好みの演奏でした。
演奏に一工夫、二工夫があって、進化する長唄。成長する長唄でとっても楽しめました。
若手の方々の演奏会では、良くホーォと思う工夫された演奏を耳にする事がありますが、温知会でこういった演奏を聴けるなんて超感動です。
杵屋喜三郎氏の唄は本当に味わいがあります。
江戸前な長唄で、レトロな味わいが加味されて、もっともっと聴かせて下さいという感じです。
色種は、本調子から二上がり、そして三下がりとどんどん本数が上がるので、高音が厳しそうでしたが、その厳しそうな声でもしっかり歌詞が聴こえるという事は、並大抵のものではないですね。
杵屋宗家のお唄は、今風の長唄に比べて、味わいがとても深いです。色々な演奏会で色々な唄方さんの長唄を聴いていますが、どうも今風の透明感というか鮮麗というか・・・そういった方向性に傾いているように思うのですが、日本人が絶対に失って欲しくない、そんな味なんですよね。
『船弁慶』
唄 岡安晃三郎、他
三味線 今藤政太郎、他
お囃子 望月太喜雄、他
とっても迫力ある演奏でした。政太郎先生らしい繊細かつ力強い演奏だったと思います。
いやいや、『船弁慶』のお囃子は、前半からずっと大小鼓だけで、太鼓は後半の知盛のところからなんですけれど、早笛で一気に主役を持っていかれちゃいますね。
とっても迫力ある良い演奏だったのですが、太鼓が入って更に曲が締まって素敵になりました。
今日の演奏会。
けっこう、長く長唄に付き合っていると、心が不自由になる傾向があります。そんな私の目からウロコ。
聴きなれた曲も新鮮な発見がいっぱいありました。
次回も期待です。