真しほ会 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

昨日は人形町にあります日本橋劇場で「真しほ会」が開催されました。
「真しほ会」は私のお稽古しているお囃子の流派、藤舎流の先生方の演奏会で、毎年一回開催されています。
お囃子ばかりでなく、地方の方々も超一級の方々がご出演されています。

さてレポを・・・尚、演目のご紹介では出演者の方々の敬称を略させていただきます。・・・スミマセン

「竹生島」
唄   今藤政貴・今藤長一郎・今藤政之祐
三味線 杵屋栄八郎・今藤長龍郎・今藤政十郎
小鼓  藤舎清鷹・藤舎呂裕
大鼓  藤舎呂凰
太鼓  藤舎悦芳
笛   藤舎推峰

この曲は、琵琶湖に浮かぶ竹生島に参詣に訪れたある都人が、竹生島の弁財天や龍神の恩恵を得るといったようなストーリーの曲で、謡曲の「竹生島」から来たものです。
数多い長唄の中、私の大好きな長唄の一つです。
始めは「次第」から長唄の謡掛りになります。
私はこの「次第」の入る曲って大好き(*^_^*)
もう、演奏を聞きながらワクワクしちゃいました。
さて、
次第が終わると道行になって、演奏を聞きながら私の脳裏には長閑な湖上に浮かぶ小船がユラユラと竹生島に向かうその風景が浮かびました。
曲の中盤から後半は、長閑な様子からうって変わって神舞・早笛とノリがよくなっていきます。
神舞は弁天様が舞う部分・早笛は龍神の出現。
今日のここの部分はもうすっきりするくらいにノリノリの演奏でした。
「竹生島」は静⇒動⇒静という感じに非常にめりはりのある曲で素敵です。
今日もたっぷりワクワクと曲を鑑賞しました。

「軒端の松」
唄   杵屋祟光・今藤長一郎・今藤政貴
三味線 今藤美治郎・松永忠一郎・松永和寿三郎
小鼓  藤舎清成・藤舎呂英
大鼓  藤舎清之
太鼓  藤舎円秀
笛   藤舎貴生

この曲「軒端の松」というお酒のコマーシャルソング!
長唄には、このコマーシャルソング類の曲が幾つかあります。浴衣の宣伝「あやめ浴衣」・お茶の宣伝「花の友」などなどが代表です。
ある遊郭のリニュアル開店のために出来た「松廼寿」という曲なんかもあるそうです。(この曲は稀曲で題名は知っていますがどんな曲かは知りません)
さて、「軒端の松」というと私はお囃子なしの演奏しか聴いた事がないので、とっても楽しみでした。
小鼓の打ち合わせがあったり、けっこう面白いお囃子が付いているんだなぁ。。。
けっこう、どの曲もそうですがお囃子のあるなしで、その曲の雰囲気はガラッと変わります。
今日はとっても新鮮な「軒端の松」を堪能しました。

「舞扇」
唄   東音村治利光・松永忠次郎・今藤政之祐
三味線 稀音家祐介・今藤長龍郎・今藤政十郎
小鼓  藤舎千穂
大鼓  藤舎朱音
太鼓  藤舎花帆
笛   藤舎理生

藤舎流の女流お囃子演奏家の先生方の出し物でした。女流のお囃子方さんだけでという舞台面はとっても華やかで素敵でした。
さて、この「舞扇」という曲は本日始めて耳にする曲でした。解説を読むとどうも「平家物語」の「祇王・祇女」のお話がベースになっている曲のようです。
清盛の寵愛を受けていた祇王。けれど、白拍子仏御前の出現で祇王に注がれた清盛の寵愛が仏御前の方に移ってしまうのですよね。失意の祇王は妹の祇女と共に出家。また、彼女の母親は自害してしまいます。
清盛は移り気の男性ですから、いつしか仏御前も祇王と同じ運命を辿るんですけれど。。。これが「祇王・祇女」のお話。京都で京都駅から嵐山にバスに乗ると、たしかこの「祇王」のお寺があったような気がします。
この曲は主人公は仏御前だそうで、仏御前が女暫の姿で出てきて、清盛の悪行を諌め舞を舞うといったようなストーリーの曲だそうです。
華やかさになんとなく物悲しさを感じるそんな曲でした。
とってもいい感じの曲でした。

常磐津「三社祭」
唄   常磐津兼太夫・常磐津仲重太夫・常磐津和英太夫
    常磐津秀三太夫
三味線 常磐津文字兵衛・岸沢式松・(上)常磐津菊与志郎
小鼓  藤舎華鳳・藤舎呂凰
大鼓  藤舎呂裕
太鼓  藤舎呂雪・藤舎円秀
大太鼓 藤舎清成
笛   藤舎正生

お囃子の演奏会というと長唄の出し物という印象が強いのですが、今日は珍しく常磐津の出し物があると楽しみにしていました。
私はだいたい邦楽の演奏会というと、長唄ばかり聴いていて、日本舞踊の会や歌舞伎を観に行く以外で常磐津とか清元とか、長唄ではない部類の邦楽にはあまり縁がありません。
でも、何故か長唄より清元や常磐津の唄声が好きなんです。
三味線も義太夫などの太棹の三味線の方が私にはとても心地よい音なんですよね。
もっともっと様々な邦楽の演奏を聴きたいのですが、なかなか時間を取るのが難しくて。。。

今日はそんな訳で、初めて踊りのない常磐津の演奏を聴く事が出来て嬉しかったです。
さて、肝心な演奏。これも最高に楽しかったです。
御簾内の楽器も登場してとても賑やかでした。
演奏はまだ幕が降りた状態。。。つまり幕内から始まるんですけれど、もう幕が上がる前からワクワクになってしまいました。
全然、舞台装置とかの演出はありませんが幕が開いた瞬間、江戸の華やかな街の風景が目に浮かびました。
粋でとってもいい感じ!
「三社祭」は長唄にもありますが、私的好みで言えば常磐津の方が粋で素敵!
それにしても大太鼓の音ってすごいインパクトです。
いつも大太鼓は御簾の中で打たれるものですが、今日は舞台上にあって演奏されました。そのせいか、音のボリュームが普段耳にするものと大分違って「スゴッ!」と思っちゃいました。
お囃子あるなしでも曲の感じが変わるといいましたが、こういった御簾内の楽器が登場すると曲に膨らみが出て華やかだし、曲の風景をとても分かりやすくしてくれます。
つまり、地方さんの演奏でイメージのデッサンがされて、通常のお囃子で白黒の映像が出来上がって、御簾内の楽器が加わってカラーになるって感じかな?あるいは、お囃子が入って静止画が浮かんで、御簾内の楽器が入る事で動画になるとか。。。そんな感じです。

「都鳥」
唄   杵屋直吉・松永忠次郎
三味線 杵屋五三助・松永忠一郎
笛   中川善雄

超大好きな直吉氏と中川氏の舞台。ウットリと聴く事ができました。
「都鳥」はとても短い曲で、「えーっもう終わっちゃうの(涙)、もっと聴きたいなぁ」という感じでした。
「都鳥」はよい曲なのですが、短いせいかこういった演奏会で聴くという機会がとても少ない感じがします。
なんか、生の演奏で聴くと言えば素人さんのお浚い会で聴く事が多く、考えて見たらプロの方の演奏でこの曲を生で鑑賞したのは初体験かもしれません。
とってもオーソドックスな曲なんですけれど、そういう事もあるんですね。

正治郎「船弁慶」

唄   宮田哲男・福田克也・渡辺雅宏・村治利光
三味線 杵屋五三郎・杵屋五三助・杵屋五吉郎・杵屋五吉雄
小鼓  藤舎呂船・藤舎呂英
大鼓  中井一夫
太鼓  藤舎清之
笛   藤舎名生

藤舎流家元と地方は人間国宝!さすがトリの演目はメンバーが凄い!
「船弁慶」は普通は演奏会だと勝三郎の「船弁慶」。この正治郎の「船弁慶」は歌舞伎の長唄。ですから、演奏会でこの曲を聴くというのはとても珍しい事です。
本日は演奏用にまとめたものでした。(歌舞伎の長唄なので途中に芝居が入ったりするのでまとめないとダメなんでしょうね)
という事で、曲の抜き差しなどが沢山あったのでしょうね。
三味線の演奏家さんは、皆様カンニングペーパーを舞台上に置いていらっしゃいました。
さてさて、そんなあら捜しなんてどうでもいいのですよね。
やっぱり、「船弁慶」のお囃子ってカッコいいです。
静の舞のお囃子の所、そして後半の知盛が出てくる部分は本当にドキドキワクワクです。
静と知盛は同一の役者さんが演じるので、間合いに船頭さんの余興みたいな部分が入ります。
女は足手まとい。。。というか、昔は女性を船に乗せるのを嫌がるんですよね。
都落ちする義経に同行していた義経の愛人の静だったのですが、ここでお別れ。。。泣く泣く静はこの港で義経とお別れする事になるんですよ。
ここの静の切ない気持ちが今日の演奏でも伝わってきました。芝居が無くても音楽だけで登場人物の感情って伝わってくるんですね。すごいです。
で、静は後ろ髪を引かれながらも去っていくんですが、その切なく重々しい雰囲気から一転して、曲はガラッと三枚目の雰囲気になります。
この「船弁慶」は一時間近くの大作ですから、静の部分も重いし、次の知盛の部分も重いので、重い重いでは観客は飽きちゃうというか、気分的に疲れちゃいますよね。
で、間にガス抜きで三枚目の雰囲気を入れているんだと・・・ちゃんと観客への心遣いもなされた素晴らしい構成だと勝手に理解しています。
後半は、おどろおどろしい雰囲気なんですけれど、知盛の悔しさ悲しみそういった幽霊の気持ちが本当に伝わってきます。
本当に感動の一曲でした。

初体験がいっぱいの本日の演奏会。とっても楽しかったです。
先日はゴールドフィンガーの演奏会、そして今日は「真しほ会」。一杯一杯良い演奏を聴くチャンスがあって幸せです。
昨日は夜勤明けでちょこっと仮眠を取って出かけた演奏会でしたが、発見がいっぱいあって眠さも吹き飛びました。
演奏会の後は、ネットの知人に誘われてお食事会に参加しました。またまた、こちらでも色々な方と出会う事ができまして、昨日という一日は私にとって「出会い」というキーワードの一日でした。楽しかったし、とても充実した一日でした。