今藤政太郎邦楽リサイタル | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
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今日は紀尾井ホールに行って来ました。邦楽の演奏会というと普通は紀尾井小ホールでやるのが普通なんですが、今日はクラッシクコンサートをやる「紀尾井ホール」でこの演奏会が行われました。
小ホールには緞帳があるんですけれど、オーケストラには緞帳は使用しませんので、このホールには緞帳がないのです。どんな演出で行われるのかすごっく楽しみでした。
暗転を使うのか・・・、はたまたお能のようにしすしず出演者が出てくるのか・・・。結局、後者でした。

紀尾井ホールは洋楽の為のホールなので音響が全然違うのですよね。なんか全然マイクを通した音ではないのですが、エコーが効いちゃって銭湯で鼻歌を唄っている感じの音響なんですよ。なんかステレオ効果が強くて音が四方から聞こえてくるそんな感じでした。
今日は前列二番目の中央の席だったのですが、演奏者を正面に見る感じじゃなくて、ちょっと天井をみる感じで音楽を聴くとすごっく良い音で聞こえました。ちょっと効き辛いと思ったら天井を見る。すると不思議に良く音響が聞こえるようになるんですよね。

今日の演目は、
「藤船頌」
これは三世今藤長十郎が四世藤舎呂船の襲名披露演奏会の為に作曲したもので、昭和32年頃に発表された比較的新しい長唄です。
そうそう・・・この夏頃に私がお稽古して頂いた曲です。
この曲は、今藤流(長唄)にとっても藤舎流(お囃子)にとっても非常に大切にされている曲なのだそうです。
今日は今藤流きっての名演奏家の今藤政太郎氏の三味線・今藤尚之氏の唄、そして藤舎流家元の藤舎呂船氏の小鼓でした。
こういった曲は演奏者のそれぞれの曲の解釈・演出が良く分かるのですが、「ふーんこういった解釈か・・・」とか「そうかここの解釈が良く分かんなかったけれど、そう解釈すればいいのですね」という感じに一つ一つの音がとても勉強になりました。
四世藤舎呂船氏が打った「藤船頌」の演奏もテープで聴いた事がありますが、全然解釈が違って面白かったです。
四世は穏やかでゆったりと粋な演出をされていましたが、六世はやや激しい水の流れを感じさせる演出法だったように思います。

次に「四季-篠笛によせて-」という今藤政太郎氏の作曲された曲を聴きました。
篠笛と清元の三味線で冬を、篠笛と唄で春を、篠笛と太鼓・桶胴で夏を、篠笛と琴で秋を表現していました。
笛は大好きな、中川善雄氏の演奏でとっても素敵でした。
なんか妖精が出てきそうなそんな感じでした。
中川善雄氏の笛の音色は本当に素敵でもううっとりとしてしまいます。曲もとてもメルヘンチックでした。
あの紀尾井ホールは笛にはとっても適しているホールのように思えます。素敵な音色に膨らみが更に加わって無重力の宇宙の空間に身を置いているようなそんな感じに笛の音色が伝わってきます。とっても素敵・・・素敵過ぎでした。

最後に「英執着獅子」でした。
三味線は今藤政太郎氏、唄は人間国宝の宮田哲男氏で、お囃子は望月朴清氏(小鼓)・堅田喜三久氏(太鼓)と二人の人間国宝、そして笛に中川善雄氏でした。本当は藤舎名生氏が笛を演奏する予定でしたが休演で中川善雄氏が代役されました。
笛の音色に超感動しちゃって涙が出ちゃいました。
朴清氏と喜三久氏は一つ違いのご兄弟です。
私の亡くなった大皮の師匠は、このお二人と幼馴染です。よくお二人と過ごした青春時代の話しを聞かせてくれたものです。
あの大皮の位置に亡くなった師匠が座っていたらどんなに素敵だったか・・・あっ!誤解しないで下さい。今日の大皮の方が悪かったわけではありません。私の当時夢見ていた夢の舞台なんです。当時は流派が違う事もありますが朴清氏と喜三久氏が同じ舞台に立つ事が少なかったし・・・そういう夢を当時は妄想していたのです。今はお二人とも人間国宝になられて一緒の舞台というのが結構あるのですが、もし師匠が生きていらっしゃれば私の夢の舞台も実現していたのになぁ。なんて。。。
美しい笛の音色についつい亡くなった大皮の師匠の事を思い出しちゃったのです。なので、ポロポロと涙が出てきちゃって「涙よ止まれ」と言っても止まってくれなくて、ちょっと困っちゃった。

今日はとてもとても素敵な演奏会でした。
クラシックコンサート用のホールで音響がいつもと違ってすごっく幻想的で本当に不思議な感じで良かったです。

そうそう全然違いますけれど、演奏者の皆様。いつもは緞帳が下りた状態で舞台に座られているので、舞台を歩くのがなんかすごっくぎこちなかったのが面白かったです。
お芝居でも、ただ歩くお芝居って台詞を言って演じているよりも緊張するんですよね。「下手から上手に歩く」このお芝居ってすごっく難しかった事を思い出しました。
ついついナンバ歩きになっちゃったりするんですよね。