一昨日、ざっと当日の感想を書き連ねましたがあれじゃあ「ただ感動した」しか伝わりませんよね。
という事で改めてレポを
昨日の藤舎会は大盛況でした。
藤舎流は確か京都の先斗町の見番でお囃子を担当しているので、たぶんその縁なんでしょうね。藤舎流の大きな会に行くと舞妓さんを目にする事ができます。昨日の会にも舞妓さんが来ていました。
舞妓さんにすれ違うと鬢付け油のいい匂いがしますよね。
私の師匠が太鼓を打たれるという事で、弟子関係者は太鼓よりの席が用意されていました。
私は三列目の下手側。。。太鼓のまん前の席でした。
いやー悪い予感していたんですよね。
最初の「操り三番叟」の幕が上がった時、本当にまん前で視線に困ってしまいました。
師匠だからってあんまりジロジロ見るのもなんだし。。。いえいえ、例えば全然しらない方だったらジロジロ見ちゃうのですが。。。
お陰様で師匠の舞台はとっても緊張しちゃいました。
舞台の上で緊張なら分かりますが、客席で緊張というのは可笑しな話ですよね。
けれど、太鼓側というのは小鼓の調べの握りが良く見えてすごっく勉強になる席というのを発見しました。
私はいつも、だいたい中央で立鼓の方の前あたりに陣取るのが好きなんですけれど、そうか、肝心の調べの握りを見るのにはこの位置がいいのねv(^ ^)v
けれど、太鼓のまん前と言うのは、インパクトの強い音を出す太鼓や大皮の近くなんですよね。迫力のある部分は大皮の音しか聞こえない、そんな感じになっちゃいます。
「操り三番叟」は唄が今藤尚之氏、三味線は松永忠五郎氏でした。あらあら、すっかりおじ様に・・・ちょっとショック。私の知っている松永忠五郎氏はもっと油ギッシュだったような。。。それだけ年月が経ったのですね。という事はそれだけ私も歳をとったという事。時々、こういった演奏会に行くとショックを受けちゃったりします。
ワキ唄が杵屋祟光氏でした。相変わらずの美声でした。
「三番叟」もので「操り三番叟」は起承転結がはっきりしていてとても楽しい曲です。
ついこの間、お稽古して頂いた曲ですので色々な確認をする事ができました。
この曲は「下り端」からスタートします。
下り端というのは「廓丹前」「鏡獅子」。。。色々な曲に使われているお囃子の手です。
舞踊音楽の長唄の場合、登場人物の出に用いられるものなのだそうですが、本来の能とか狂言では天仙や大勢の人間が明るく浮きやかに登場する時に用いられるものだそうです。
そういえば、この下り端の部分の三味線を聴いているとなんかとってもウキウキするんですよね。
普通は、この「下り端」からスタートして千歳のしっとりした場面、そして翁の威厳ある場面、力強い三番叟の場面。
最後は「鈴の段」で終わるんですけれど、今日は普段省略する踊り地が。。。エネルギッシュな三番叟の舞から急にはんなりとした「松尽くし」の踊り地の場面展開になって鈴と移行していきました。
私としては、とっても素敵な場面なんですけれど、なぜこの踊り地が省かれるようになっちゃったのでしょうね。とっても疑問です。
この曲は五世杵屋弥十郎が作曲したものなんですが、その後杵屋勘五郎が手を加えたんですよね。
現在はこの杵屋勘五郎が手を加えたものが主に演奏されていると聞いていますが、たぶん勘五郎さんの趣味にあの踊り地が合わなくって省略するようになっちゃったのではと私は睨んでいます。・・・はははっあくまで私の想像ですよ。実際はどうしてか分かりません。
さて「狂獅子」は三味線が稀音家祐介氏と岡安晃三郎氏の唄でした。稀音家祐介氏はその昔は「天才少年」という事で邦楽界にデビューされた方です。
もう以前から大ファンです。若手の三味線弾きでは一番好きな方です。音がすごっく繊細で魅力的なんですよね。
けれど、今日の「狂獅子」はお囃子が非常にパワフルです。
ちょっとちょっと三味線方さん頑張って!全然、三味線の音が消えちゃっているよ。。。(汗)
今日ばかりは、芸風が変わっちゃうかも知れませんが、うーんもうちょいパワフルに三味線を弾いて頂きたかった。。。
この曲のお囃子の作調は、四世藤舎呂船師だそうです。
この四世呂船という方は当時天才的な小鼓の名手だったようです。色々な素敵なお囃子を作調されています。
先日の「今藤政太郎の会」で出た「藤船頌」もこの方の作調です。どの曲も大変凝った素敵な手が付けられていて、さすが天才!なんというか「普通はこう行くだろう」という凡人の予測のウラをかいてくれるような手が付いているんですよね。この「狂獅子」もたぶんそうなんだろうな。。。何回か鑑賞した事があるんですけれど、お囃子はどんな構成なのか全然知らないのです。
機会があったらお稽古して頂きたい曲です。でも、まだ無理だろうな。。。最初が難しそうだにゃん(-_-;)
さあ、いよいよ「廓丹前」!
太鼓がお二人、そして男性チームと女性チームの大小鼓。
お笛もお二人。。。総数十名のお囃子です。超華やか!ついでに御簾内で大太鼓も入っています。
唄は今藤尚之氏、三味線は松永忠五郎氏で六丁六枚。
曲の「廓」にぴったりの華やかさでした。
けれど、幕開き前にナレーションが入って曲が始まるまですごい間があって何が起きたの?状態でした。
舞台の近くが座席だったので、幕の向こうの舞台でドスバタ音がしていて、何かハプニングがあったんだろうなぁなんて思いました。
まったく舞台監督さんしっかりして下さい。
「廓丹前」には藤舎流独特の手が付いているところがあります。私のお稽古では望月流の方が打っている音源をお稽古で使用したので、「藤舎流は本当は違う手が付いているんだけれど、今回はこれで」と望月流の手でお稽古しました。
時鳥の羽ばたきのようなそんな手が付いているんですよね。
という事で望月流の手よりもやや技術が要求される手が付いています。がんばって「時鳥の羽ばたき」を打てるようになりたいものです。
さて休憩を挟んで「木賊刈」という曲が演奏されました。
地方は二丁一枚。。。つまり独吟。
小鼓一人、大皮一人、笛一人と大変渋い演奏です。
三味線は今藤政太郎氏、唄は人間国宝の宮田哲男氏でした。
小鼓を打たれた方は藤舎呂秀氏と仰って89歳と、お囃子界最高齢の方だそうです。すごいです。
私は、商売柄そういった年齢の方とは常々お付き合いしているんですが、現役で頑張っていらっしゃる方がいらっしゃるのですね。
「木賊刈」の主人公は年老いたおじいさん。
物語的に言うと、おじいさんが木賊(木賊とは植物です)を刈っていると旅の僧に出会いました。おじいさんは以前息子さんを亡くされてその悲しみを僧に話しました。
僧は一人の少年を連れていました。どうも話しの様子から。。。そうなんです!その少年がおじいさんの息子さんだったのです。亡くしたと思った最愛の子どもに再会というハッピーエンドのお話がこの曲のもともとのストーリーです。
この曲は主人公が年老いた人という事から大変渋い曲なんです。
大概、演奏者の還暦とか喜寿とかそういったお祝いを兼ねた記念で演奏したりするものです。
小鼓の方は昨年が米寿だったんですね。ぜひ、白寿のお祝いでもう一度この曲を演奏して頂きたいです。
呂秀氏の小鼓の音は、本当に素晴らしいものでした。
いくら練習しても、いくらよい楽器で打ったとしても今の私には出せない音です。
長い年月の凝集された深みのある音なんですよね。呂秀氏から奏でる小鼓の音は「宝」の音です。
本当に、貴重な演奏を聞かさせて頂きました。
最後は「山月」という、現家元。。。六世藤舎呂船氏の作曲した曲でした。中島敦の「山月記」がベースとなっている曲です。
三味線・唄の入らない、素のお囃子の演奏の曲でした。
小鼓は唄う打楽器と言われますが、まさにそんな感じの曲でした。
素のお囃子というと、メロディーを奏でることのできる楽器は笛。。。という事で笛が主人公かなと思っちゃうのですが、四拍子が調和とれて全ての楽器が主人公の曲でした。
とっても熱く、清らかな感動が私の胸に届いた曲でした。
さてさて、まだ感動が先行して心の整理がついていない状態でレポを書いているのでわけのわからない文章になっているように思います。
今回が演奏会納め。よい演奏会で締め括る事ができて私って幸せです。
来年も沢山よい音楽を聴いて心の肥やしにして行きたいと思います。