『真しほ会』 | fuyusunのfree time

fuyusunのfree time

長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

昨日は真しほ会に行ってまいりました。
今年も良い演奏に出会う事ができまして幸せでした。
毎年、超寒い中の演奏会というイメージのあるこの会ですが、昨日はとても暖かかったです。

さて、またまた鑑賞の感想を。
あくまで個人的感想です。失礼等ございましたらご容赦くださいませね。

『雛鶴三番叟』
唄   今藤政貴・今藤政之祐・今藤龍之右
三味線 杵屋栄八郎・松永和寿三郎・柏要二郎
笛   藤舎推峰
小鼓  藤舎呂英・藤舎悦芳・藤舎朱音
大皮  藤舎千穂
太鼓  藤舎呂凰

この曲を生で全曲聴くのは初めてです。
けっこうカッコいいではありませんか。
なんか、いつもご祝儀曲のカットバージョンでしかこの曲聴いた事がなくて・・・。
モミダシ、三番地、太鼓地、チラシ、段切れとあっけない。
でも、きちっとやるとこんなに素敵な曲なんですね。
今残っている長唄の三番叟で『雛鶴三番叟』は確か一番古かったように思いますが、そんな感じですね。
ちょっと聴いた感じでは、非常に地味。でも、三番叟らしい華やかさ、重々しさ、躍動感、楽しさそういったものがいい感じでミックスされて心に伝わる。
一口食べると、何の変哲もない食べ物。でも、噛めば噛むほどその味わいがジワーッと感じられる食べ物ってあるじゃないですか。そんな感じです。
本当に、良い演奏を聴かせていただきました。
感動です。

『俄獅子』
唄   杵屋勝四郎・杵屋巳津也・今藤政之右
三味線 稀音家祐介・今藤長龍郎・今藤龍市郎
笛   藤舎貴生
小鼓  藤舎清鷹・藤舎呂凰
大皮  藤舎呂裕
太鼓  藤舎悦芳

先日、お稽古したばかりの曲。
歌詞が楽しく、聴いていると本当にウキウキします。
今日の演奏は・・・
そうですね。明るく楽しいというのが良く伝わってきました。
でも、私はこの曲には、楽しさの中に気だるい様な色気という隠し味が欲しいのです。
その気だるさというのが、あまり感じられなかったので、私としてはちょっと残念でした。

『多摩川』
唄   杵屋利光・杵屋巳津也・杵屋利次郎
三味線 杵屋栄八郎・松永和寿三郎・柏要二郎
笛   藤舎理生
小鼓  藤舎清成・藤舎朱音
大皮  藤舎円秀
太鼓  藤舎千穂

この曲にお囃子があったんですね。
けっこう楽しい♪
最後にサラシの合方。ここの合方。三味線はタテが替手で、本手とは全く違うメロディーを弾いて、一歩間違えると雑音になってしまいかねない微妙なハーモニーなんです。
そんなハーモニーにプラスお囃子で・・・想像しただけでも、スリルとサスペンスなんですけれど・・・。いやいや、さすがですね。そのきわどいハーモニー。三味線とお囃子が良いバランスでとても心地よく聞こえるのです。
いやいや、タテ三味線の栄八郎氏。上手いなぁと思いました。

『石橋』
唄   岡安晃三朗・西垣和彦・杵屋巳津也・杵屋利次郎
三味線 杵屋五三助・杵屋彌四郎・今藤龍市郎・(上)杵屋六治郎
笛   中川善雄
小鼓  藤舎華鳳・藤舎呂英
大皮  藤舎清之
太鼓  藤舎呂雪

一番の楽しみだった曲です。
ベテランの先生方の演奏ですので、安定性があり曲想のメリハリを感じる事ができました。
石橋は、獅子ものの一つですが、他の曲に比べて紳士という感じのする曲だなぁと思います。
本日、先生方の演奏を聴いていて、表現という部分がとっても勉強になりました。

『嫐』
唄   今藤尚之・今藤政貴・今藤政之祐
三味線 今藤美治郎・今藤長龍郎・柏要二郎
笛   藤舎名生
小鼓  藤舎呂船
大皮  中井一夫

嫐(うわなり)とは、後妻という意味だそうです。
また、二人の間に男一人という字の通り、三角関係という意味もあるそうです。
能の『葵上』で六条御息所が生霊となり、後妻となった葵上を祟り呪い殺すという怖いお話がありますが、そのお話しの長唄バージョンのようです。
歌舞伎十八番に『嫐』という演題がありますが、やっぱり同じ内容のようです。
この演目。今は耐えちゃったみたいですが、錦絵が残っていて面白そう、観てみたいという感じの演目です。
いやいや、幽霊も怖いですが、生霊はもっと怖い気がします。
この妻が嫉妬に駆られて愛人に酷い目にあわせるという事を『嫐討ち』というそうです。
この六条御息所のお話もそうですが、私的には源頼朝の妻、北条政子が愛人宅に夜襲をかけて滅茶苦茶にするお話の方がイメージです。
いやいや、三角関係というのは怖いですね。

さて、演奏の方ですが、もっと恐ろしい雰囲気の曲かと思いましたが、意外とさっぱりした雰囲気でした。
しかし、このさっぱりが怖いのかも知れません。涼しい笑顔の裏の氷の如く冷たい微笑。そして、青くメラメラと燃える嫉妬の炎。。。そんな感じかも知れませんね。
また、もう一度、聴きたい一曲です。

『紀州道成寺』
唄   杵屋直吉・杵屋利光・今藤政之祐・今藤龍之右
三味線 杵屋六三郎・杵屋彌四郎・杵屋六治郎・松永和寿三郎
笛   藤舎正生
小鼓  藤舎円秀・藤舎清鷹・藤舎呂裕
大皮  中村寿慶
太鼓  藤舎清之

最後は道成寺ものの大曲で締めくくりでした。
いやいや、最初から迫力で肩に力が入ってしまい、幕が降りたとき、演奏者の「終わった」という達成感を伴に感じる事ができた感じがします。
直吉氏の唄は本当に絶品ですね。力強く色気があって感動でした。
上段の長唄の演奏家の先生方、お囃子の先生方の迫力とパワーにすっかり酔ってしまいました。さして、あの段切れのあとの開放感・・・気分良かったです。