隔年暮れに開催される『藤舎囃子研究会』。今年はなんとクリスマスに開催されました。
年末の慌ただしい、それもクリスマスなのに客席はほぼ満席でした。
この会は藤舎流お家元主催の演奏会で、藤舎流の演奏家の方々の勉強会のような演奏会。
長唄に限定せず、常磐津や清元などプログラムに含まれている。なかなか面白い趣向の演奏会です。
今年は、常磐津に荻江節。チラシを手にした日からとても楽しみにしていました。
常磐津『竹生島』
浄瑠璃 常磐津兼太夫・他
三味線 常磐津文字兵衛・他
(笛)藤舎貴生(小)藤舎円秀・藤舎艘秀(大)藤舎呂裕(太)藤舎悦芳
長唄同様、謡曲の『竹生島』を題材にした曲だそうだ。
母は「長唄よりいいわね」と言っていましたが、私はどちらかというと長唄の方が好きです。
長唄の方がきちっとメリハリがあるという感じがする。まあ好き好きですので「よい」とか「わるい」ではない。
長唄の三味線は細棹なので歯切れがよく聞こえるのかもしれませんね。
しかし、常磐津のような語り物に合わせるお囃子というのはかなり難しそう。よいしょよいしょの部分が非常にソフトなのできっかけを盗むのが高等技術だと思った。
この曲の見せ所は素の「早笛」ですね。とても迫力があって手に汗を握ってしまいました。
長唄『春駒』
唄 今藤政貴・他
三味線 今藤長龍郎・他
(笛)藤舎理生(小)藤舎千穂・藤舎花帆(大)藤舎成光(太)藤舎朱音
この曲は曽我ものの一つだそうだ。初演は1791年(寛政三年)の中村座の正月興行の演目の一つだったようだ。
お正月らしい、明るい長唄でした。また、ちょっと古風な上品さがあって良い曲だと思いました。
大皮の成光氏以外は女性演奏家の方々の舞台で、とても艶やかで雰囲気がとてもよかったです。
荻江節『分身草摺引』
唄 荻江露成・他
三味線 荻江露延・他
(笛)藤舎秀啓(小)藤舎華鳳(大)藤舎呂英(太)藤舎呂雪
荻江節というのは長唄を母体として発展した三味線音楽の一つ。舞台を離れ吉原の座敷芸として発達したものだそうだ。
『分身草摺引』はもともとは長唄で1762年(宝暦十二年)四月に市村座で初演されたもので、初代荻江露友がほとんど原曲のまま荻江節に移したものだそうです。
この曲も曽我ものを題材としたものだそうです。
騒ぎで幕が開き、にぎやかな始まりでした。『勢い』とか『正札付』と同じような筋立て。
男っぽいのですが、何気に艶っぽさを感じる。
タテ三味線の荻江露延氏=清元美治郎氏。華のある三味線でした。ワキ三味線の荻江寿邦氏は長唄をやられている方。お二人の撥さばきをじっくり拝見。やっぱり露延氏は清元っぽい撥さばきでしたね。で、ワキ三味線の寿邦氏は長唄だなぁという撥さばきでした。パッと見た感じは三味線を構えて、撥で糸を奏でて音を出すだけなんですがね・・・やっぱり、違うものなんですね。
荻江節は長唄から発展した音楽なので、寿邦氏のような撥さばきが正統派で露延氏のような撥さばきは癖っぽいのかも知れませんね。でも、清元美治郎氏=荻江露延氏ですからね。癖っぽさも個性。華があって素敵ととらえる事ができますね。他の方だと「癖っぽいわね」とヒソヒソ言ってしまいそうですが、まあ人というのは非常に現金なものです。
長唄『新柱建』
(唄) 今藤尚之・他
(三味線) 今藤美治郎・他
(笛)中川義男・藤舎推峰(小)中井一夫・藤舎呂凰(大)藤舎清鷹(太)藤舎清之
以前、真しほ会で拝聴したことがある。やっぱりこの曲も曽我ものを題材とした長唄です。
今回は笛が二管。親子共演という贅沢な演出です。能管と竹笛のコラボなんかもあったりして素敵でした。
中井先生は大皮というイメージが非常に強いので、その中井先生が小鼓を打っている姿を拝見するとくすぐったい感じがします。
三曲曽我ものの曲が続きましたが、一番曽我ものらしい曲想のように思えました。
いいな。この曲、いつかお稽古していただきたいです。
長唄『犬神』
(唄) 宮田哲男・他
(三味線) 今藤政太郎・他
(笛)藤舎名生(小)藤舎呂船・藤舎呂英(大)藤舎勘秀(太)藤舎呂雪
何気に良い曲なのですが、あまり演奏会でお目に掛らない長唄ですね。それなのに、今年は二回もライブで拝聴しました。六月の東音会。あの時も唄が宮田氏だった。
うちにある『犬神』の音源は美学だから・・・やっぱり宮田氏。考えてみたら宮田氏の犬神しか聴いたことがないかも?!
よい曲でお囃子もけっこう簡単そうで難しかったりする。
でも、こうして客席で聴いていると「いい曲なんだけれど・・・」と言う感想を持ってします。
今一つ地味なんですよね。難しくて努力を要するんだけれど、その努力が報われない曲というのでしょうか。
この曲が演奏会などであまり選曲されない由縁なのでしょうね。
長唄『梅の榮』
(唄) 杵屋直吉・他
(三味線) 稀音家祐介・他
(笛)藤舎正生・藤舎伝生(小)藤舎清成・藤舎清之・藤舎悦芳(大)藤舎千穂(太)藤舎呂鳳・藤舎呂凰
最後はしっとりと決めてくれました。
この曲は三世杵屋正次郎が妻の岡安喜三梅と結婚した記念に作られたものだそうです。
長閑な春を思わせる曲想。また高島田の御殿女中風の姿の女性が踊っているようなイメージで初々しさと上品さを感じる曲ですね。
本日は太鼓二かんに笛二管と華やかさグレードアップでしたた。
『梅の榮』が演奏会で演奏される時って、お囃子が入らない場合が多い。まあ、それはそれで上品でよい曲ですが、やっぱりお囃子が入った方がイメージが膨らみますね。
まあ、自分がお囃子をやっているからそう思うのかもですが・・・
さて、今年の師匠の舞台は見納め。またまた来年が楽しみです。
毎年、この会がある時はこの演奏会で一年の締めくくりなのですが、今年は地震で延期になった会が明後日開催されるんですね。それが演奏会納めとなります。
一日、一日と2012年が近づいてきますね。