そして、二年目はそういった基礎を応用して演じる事を学ぶ。
二年前期は研究発表会。そして、二年後期は卒業公演。二回人前で演じる機会が与えられる。

前期の研究発表会はブレヒト作の『ハッピーエンド』という芝居を演じた。
ギャングに恋した救世軍の女の子の恋の物語。私は準主役の灰色の女という役。彼女は主役のギャングの親玉で、非道で人の命などのなんとも思わない冷徹な女である。裏切りや失敗を絶対に許さない彼女。「火を貸してくれないか」とタバコの火を借りる。これが処刑の合図。しかし・・・突然、生き別れた夫に出会い、夫思いの優しい女性に変身するという大どんでん返しがある。
この芝居はミュージカルっぽい芝居。まあまあ、この歌に大変苦労した記憶がある。
何せ、女ボスの心情を唄ったもので、人生を投げた荒くれ女の唄は本当に難しかった。
だいたい、私は唄が苦手だった。なのに人前で一人で唄わなければならないという苦痛。乗り越えなければ。
女優としての第一の試練。稽古が終わってみんなはそれぞれ遊びに行っちゃうのですね。私はピアノの先生と残って唄の特訓。遊びに行ってしまうみんなの背中を見送りながら羨ましくて仕方がなかった。
現在禁煙に成功してタバコを吸っていませんが、ついこの間まで超ヘビースモーカーでした。本格的にタバコを吸うようになったのはこの芝居がきっかけ。役作りのためにパカパカ喫煙していましたね。
女ボスのタバコの吸い方。
部下にタバコの火を借りる時は、どういう姿がカッコいいのかとか研究。
とにかく、その火を借りる行動は「お前を処刑する」という意味が含まっているわけだから、姿が決まっていないといけない。
まあ、この芝居が終わった頃にはすっかりニコチン中毒になっていましたね。
-つづく-