たまたま読んでいる本に「絵島生島事件」に関連したことが記されていた。
この事件。だいたい、大奥の権力争いによって起こった事件。
六代将軍家宣の側室で七代将軍家継の生母である月光院と、家宣の正室である天英院との間の権力争い。
正室あっての側室であり正室の方が位的には偉いのであるが、将軍生母ともなれば話は違う。
七代将軍の時代となって、権力のトップは将軍生母である月光院に。そして、絵島は月光院に仕えるお女中。絵島は大奥総取締役で大奥の最大権力の地位にあった人である。
まあ、とにかく大奥というところは女の世界ですから、妬みや嫉妬などから陰険でドロドロとした陰謀や権力争いのあった場所と予測される。
看護師という女の世界に在籍していて、本当に女の世界ってすごいところと思うけれど、似たような体質のところなんだろうなぁ・・・。男性には太刀打ちできないものかあるかも知れない。
この時代の人気役者のトップは初代市川団十郎。しかし、彼は生島新五郎の弟子である生島半六に舞台上で刺されて急逝する。そして、その初代の息子が二代目を継ぎ、初代の気づきあげた江戸歌舞伎の「荒事」を継承。市川家の確固たる芸を確立したと言われている。当初、若かった二代目は力不足に悩んでいたというが、生島新五郎などの庇護を受けて江戸庶民の期待に応えるように活動していたらしい。
生島新五郎は、そもそもは関西出身。関西の歌舞伎から江戸の歌舞伎に転身した人で、初代団十郎のおかげをもってトップスターの座についた人だったそうだ。それが故に初代団十郎に恩義を感じていたそうだ。しかし、その弟子の半六が大事件を起こしてしまう。新五郎はその責任を大きく感じていたのでしょう。二代目を何が何でも守るというスタンスを取っていたようです。
テレビも映画も何もない時代の庶民の娯楽は歌舞伎であったわけですね。
今の若い女の子たちがジャニーズのハンサムな若いタレントに対して黄色い声を上げているように、当時はカッコいい歌舞伎役者に黄色い声を上げていたのでしょうね。
大奥のお女中というのは、特別なことがない限り大奥から一歩たりとも外に出られない身の上。生まれてこの方外気にいっさい触れない身の上だったらまだしも、半端に外の情報が入ってくる。また、お墓参りと称して歴代の将軍の菩提寺に参拝。その帰りにちょこっと寄り道して歌舞伎見物なと内密に許されちゃっているものだから、巷で何が人気でどんな人がトップアイドルでなんてよく知っていたようですね。
この事件の絵島という人は超真面目な人だったようですが、やっぱり歌舞伎の大ファンで生島新五郎だけじゃなくて、二代目団十郎に対してもファンとしての好意を抱いていたようですね。
カッコいいものに対して憧れを持つというのは、どんな時代でも、身分の差も関係なく共通した乙女心というものでしょう。
その乙女心を利用して、陰謀の罠となったのが「絵島生島事件」だったようです。
しかし、権力者というのは自分の権力保持のためにぜんぜん関係ない人が巻き添えになってもなんとも思わないものですね。
だいたい、大奥の女中間の権力争いなのに、そのために一つの芝居小屋が潰れてしまうわ、当時のスターは罪に問われて流罪になるわ・・・すごいことになっちゃったわけでしょ。
多くの人たちが巻き込まれちゃって・・・。まあ、そこに利権があったとしてもですね。たかが、私の方が本当は偉いのに、側室だったあいつが偉そうにしているのが気に食わないとかそういうレベルの権力争い。たかがそんな争いなのに、この代償って・・・。呆れます。
大奥の事は大奥内で宜しくお願いしますと思いますね。
初代団十郎は甲斐の武田家の家臣の家柄の出身だったらしい。どこの出身でどんな家系にあったか・・・謎の多いお家だったらしいですが、のちのちの時代になって「武田の残党」というのが分かったらしい。
他人に自分の家の家系図を預け、自分の出自をいっさい分からないようにして千葉の方に移り住んだというのですからすごいことです。
ところで、絵島は三河出身。尾張徳川に仕えたのちに甲州徳川に仕え、その藩主がたなぼたの如く将軍になった縁で江戸城入り。
おおっ!団十郎も絵島も現在の山梨に縁ありか!!!
その本によると、絵島のご執心の的は本当は生島ではなくて二代目団十郎だった(?)という。
でもね、この事件の時、
二代目は絵島の誘いを袖にしたらしいのですね。で、代理で生島が・・・。
ムムムッ!
この事件の前に絵島は団十郎にビックなプレゼントをしたというお話もあるようで・・・。
本当は「絵島団十郎事件」となるべきだったものが、生島が罪をぜんぶ背負って三宅島に旅立ったのかもですね。生島の初代団十郎に対する思い。そして、二代目を身を持って守るという気持ちの表れだったのかもです。
しかし、絵島が門限に間に合わなかったのは絵島自身の問題であって、
その立ち寄った芝居小屋から付き合った役者まで罪を問われるなんて、何気に考えられない。
この事件で一番割を食ったのが絵島のお兄さん。旗本だったそうですが、武士なのに切腹でなくて斬首。相当重い罪に問われちゃったんですね。
でも、絵島にしろ、生島にしろ、みんなみんなもっと重い罪に問われ可能性もありで、流罪である意味済んでよかったものです。
権力者。権力保持の争いに民間人が何気に巻き込まれてもなんとも思わない。今も昔も変わりありませんね。