塾講師をしていたときの生徒Aくんとのやりとりです。
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Aくんが、わたしに「おい、くそばばあ!」と呼びかけたので
わたしは「ん?なに?」と、Aくんの方を向きました。
Aくんはきょとんとした表情で
「なんで、怒らへんの?」
わたしが
「なんで怒らへんのかと思うんやぁ。」
と返すと
「普通怒るやん。」
と、Aくん。
わたしは
「そうか。普通は怒るんやな。」
そこで、Aくんは笑い出しました。
「もうええわー。先生、普通とちゃうもんな!」
わたしは
「せやなー」
と、一緒に笑いました。
「さあ、数学やるでー」と、わたし
「えー、嫌やなぁ」と、Aくん
「そら嫌やよなぁ。嫌々やろかー」
と、わたしが言うと
「オレ、まあまあ好きやで。数学」
と、Aくんはノートを広げました。
***
わたしが出逢ったときのAくんは
斜に構えていて、いつもムスッとしていて不機嫌でした。
やる気がないというよりも
「どうせできない」と思い込んでいて
「先生は敵」だと拒絶している感じでした。
上の会話ができるようになるまでに
実は、2カ月ほどかかっています。
否定しない
批判しない
賞賛しない
追及しない
彼のありのままを認めること
わたしが続けたのは、それだけです。
それだけのことですが、とても大切なことなんです。
勉強なんて面白くない、できるわけない
と思い込み、やる気のなかったAくんが
「オレ、まあまあ好きやで。数学」
と言うようになったのは
ありのままの自分でよし
自分には力がある
ということを信じることができたからだと思います。
自分で自分を認めましょう
ということは、よく言われますけれど
そのためには
他の誰かに
ありのままを認めてもらうということが必要なんですね。