世界のシルクと民族衣装 | 風遊花(ふうか)~古布とうさぎとお雛様~

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~作品展 ものつくりをする仲間達 ギャラリー ショップ~
  大好きなもの 日頃の様子を気ままにご紹介します。

日本大通り駅近くにあるシルク博物館に 春の企画展 所蔵品展≪花嫁衣装―晴れの日の模様と彩り―≫を見に行ってきました。

 

館内に入ると

 

 

 

受付までのアプローチに並んでいたのは シルクで作った簪や手毬

 

 

 

 

そして 繭球を使って作った手芸品。

 

 

 

 

 

私も作品の材料に使おうと 洗顔用パフを作る材料として売っていた繭球を持っているけれど なかなか 繭球作品までは 手が回らず・・・ショボーン

 

 

 

ちなみにシルク博物館のゆるキャラは 繭球のまゆるんです。

 

 

 

 

受付奥の展示室には 養蚕からシルク製品ができるまでの工程が解りやすく展示されています。

館内全般は老朽化し 展示室の照明なども古いままで 写真うつりが悪いのが残念ですが 撮影禁止カメラNGのマークがあるもの以外は ストロボ無しで撮影OKOKだったので たくさん写真を撮らせていただきました。

 

1階の常設展コーナーは 養蚕からシルク製品ができまでの工程展示や 繭球の手芸品や機織りのワークショップスペース。

 

 

 

マネキンさんは 村山大島の機織り中。

 

 

 

こちらは 結城紬の機織り光景。

 

 

 

中央の球体に詰まった繭球は9000粒

着物一式を作るのに必要な繭の数だそうです。

    
 
 
1階スペースには 図書類も揃っていて 興味深い資料や展示が並んでいましたが 来園者は 社会見学の中学生が数人と 熱心に解説を聞いたり資料本を読まれていた海外からの方が数人のみ。
日本人の大人の見学者がいないのは 何だかもったいないな~~ 
 
 
2階が今回の特別展の会場になっていますが 入り口近くは 常設展示の≪世界のシルクと民族衣装≫のコーナーです。
今回は その民族衣装をご紹介します。
2階フロアーも 照明などが暗く うまく写真が撮れないのと 展示品に詳細解説が無かったり 特別展の図録も発行されていないので ネットで調べたことも添えて 資料代わりにブログに記録しておこうと思います。
 
 
民族衣装と言えば 私が一番に思い浮かべるのがサリー
展示されているのは インドのサリーでしたが ネパール スリランカ バングラデシュ パキスタンなどの南アジアの女性が着る民族衣装です。
サリーの名の由来は サンスクリット語の≪細長い布≫の事
一般的なスタイルは 5m程度の長さの布をペティコートに挟みながら腰に巻き 残りを肩の上に回す着方ですが 着方により 8m程度の布を必要とする場合もあります。
展示されているサリーは コバルトブルーの生地に シルバー色の模様やレースがあしらわれた とても豪華なサリーでした。
 
 
 
 
 
こちらは 東南アジアに住むモン族の子供の衣装。
この辺りは 少数民族が多く それぞれの文化が継承されている地域ですね。
ひとことにモン族と言っても 青モン族 縞モン族 白モン族などにより 下がスカートだったり ズボンだったり 上着に施される模様も異なる技法で仕上げていきます。
添えられていた説明版に 衣装の素材が記載されていませんでしたが モン族の衣装は亜麻から作られることが多いようです。
亜麻糸を織るとリネンになり 種は搾ると亜麻仁油になります。
亜麻から作られた糸は 死者の魂と先祖とを結ぶ懸け橋だと考えられ 民族衣装は伝統的な儀式にとって欠かせないものとなっています
 
 
 
 
モン族の衣装は 青モン族 縞モン族 白モン族などにより クロスステッチの様な刺繍を施したり リバースアップリケ(何枚もの布を重ね 様々な色が複雑に重なり合った文様を作り出すの手法)で衣装を仕上げていきます。
 
 
 
18世紀フランス ロココスタイルの 盛装用衣装 ローブ・ア・ラ・フランセーズ
マリーアントワネットの時代に近い頃の衣装ですね。
ちなみに ≪ローブ≫というのは 上下が一続きで 袖がついているワンピース型のゆったりとした衣服の事 ≪フランセーズ≫は ≪フランス風≫という意味です。
ローブ・ア・ラ・フランセーズは 前開きで背中に大きな襞(ひだ)がたたまれているガウンと 現在のスカートにあたるペティコート V字型のパネル状ストマッカー(胸衣)から成り立っています。
これらはコルセットとパニエ(ドレスなどのスカートを美しい形に広がらせるため スカートの下にに着用するもの)という下着で整えた後に着装されます。
 
 
 
最も人目を引く胸元のストマッカーには 豪華な刺繍やレース飾り リボン結びの列を並べたエシェル、時には宝石などをピンでとめ付け 立体的で多彩な装飾が施され 贅が尽くされました。
ガラス越しの遠目だったので はっきり見えませんでしたが 展示されている衣装には 胸元や袖のフリル部に小さい宝石が付けられているだけのようですが 生地自体に更紗か絣の様な模様が織り込まれていて 派手さはないものの とても手が込んだ衣装でした。
 
 
 
余談になりますが 皇室女性の正装として着られるドレスに ローブ・デコルテと ローブ・モンタントがありますが イブニングドレスの一種 ローブ・デコルテは ネックラインが深く大きくカットされ 肩や背中 胸の上部を露出したノースリーブドレスのことで 男性の燕尾服に相当する女性の最も正式な礼装として扱われる夜礼服です。

ローブ・モンタントは 高い立襟のドレスで 肩も背中も露出させない 昼の正礼装です。

 

 

 

3体並んだ衣装の右側は
 
 
 
ガーナのケンテ
 

ケンテは ガーナの男性が ブーバというシャツの上に着る 1枚布をサリーのようにまとった民族衣装です。

ケンテは 1057年に ガーナが長く続いたイギリス植民地支配から独立した後に作られた新しい民族衣装で ケンテの色彩には独立運動への誇りと 国土への愛情が込められています。

 

 
 
ガーナでは布地を織るのは男性の仕事で ケンテは 手織りで四種類のパターンを織り出した幅8~10cm 長さ3m超の細長い布を24枚接ぎ合せて作る大きな一枚の布を 右肩を露出し 体にゆったりと巻きつける貫禄のある民族衣装です。

ケンテに使われる生地は ガーナ国旗に使われているような鮮やかな原色の美しいもので 色彩にはそれぞれ意味があり 赤は自由のために流された血 黄はガーナで採掘されていた黄金 緑は自然 青は海 黒はアフリカの民としての自由を表現しています。

 

 
 
インドの男性用民族衣装
この衣装は パンジャブ地方の伝統的な上着が起源。
細めの縦襟で着丈が長いのが特徴のクルタと呼ばれる一番オーソドックスな衣装のようです。
とても動きやすく 風通しも良く 暑いインドには 最適の上着だそうです。
 
 
 
 
展示衣装は 絹で作られ 前立て部分に豪華な刺繍と 裾にフリンジも施されているので 正装用のクルタかな・・・?
 
 
 
写真がブレちゃいましたけど こちらは 中央アジアに位置するウズベキスタン女性の儀礼用の衣装 ハンアトラス
アトラスは絹100%の布のこと (絹と綿の混紡は アドラスと呼ばれます)

19世紀初め ウズベキスタンは3つの国に分かれていましたが その中の1つコーカンド・ハーン国がアトラスの発祥地。 

虹色のようにカラフルで手触りも良い生地は≪王室の布≫と呼ばれ 当初は 裕福な人々が着るために作られましたが 19世紀後半には庶民の間にも広がりました。

 

 
 
 
ハンアトラスは つやのあるシルクの縦絣布で 日本の矢絣のように大胆な柄ですが 花 蛇 月などの身近なものをモチーフとし 魔よけの意味を持つモチーフも使われます。
白 黄 紫 赤 黒などのカラフルな色は 原則として ザクロの皮 茜 果物や植物の葉や根からの抽出物 タマネギの殻などの天然染料を使います。
 
 
 
カンボジアの花嫁衣裳
 
カンボジアの結婚式は二日間にわたり行われ 1万$ほどかかる費用は 新郎側が全額負担することが多いそうです。
肩から掛けた布は 宝飾品がきらびやかに縫い留められたとても豪華な物。
ずいぶん 重みがあるだろうな・・・と余計な心配をしてきました。
アップ写真を撮って来たのに ブレブレで掲載できず 残念!!

 

 

 

ベトナムのアオザイ

 

世界で最も美しい民族衣装とも言わるアオザイは チャイナカラーの立襟に 体のラインに沿った細身のシルエットの上衣 太めのパンツ(クア)を合わせた衣装です。

≪アオ≫は上着 ≪ザイ≫は長いという意味で 合わせて≪長い上着≫という意味を持ちます。

日本の着物と同様 結婚式やイベントなどでの着用が多く 普段着にアオザイを着ることは少ないようです。

 

 

 

アオザイの色にもそれぞれ意味があります。

皇族の色である金は 王朝時代 王と女王に使われました。

赤いアオザイは 幸運と繁栄のために テト(旧正月)の期間や結婚式の新郎新婦が着用します。

そのため ベトナムの結婚式に出席する時には 新郎新婦の赤いアオザイと重ならないよう 別の色で出席することがマナーと言われているそうです。

日本で 白い服で出席を避けるのと同じですね。

白いアオザイは 純粋と無垢を象徴し、黒は葬儀で最もよく着用されます。

また ベトナム女性は生まれた年の風水(金、木、水、火、土)に基づいてアオザイの色を選ぶこともあるそうです。

 

 

最後は 幸せの国 ブータンの衣装

ブータン王国では 国家のアイデンティティ保護の一環として 政府や学校関係で仕事をする時や 王室や政府の公式行事に参加する場合 お寺や宗教施設の訪問時などには 民族衣装の着用が法律で義務付けられていますが 忠実に義務を守り 伝統衣装を着て生活をしている人も多くいるそうです。

 

 

 

左側の衣装は 男性用のゴ

素材は紬や木綿で くすんだ赤 緑 茶色などの格子や縞模様の布で作られます。 

ゴは前で重ねあわせ ケラという幅5㎝程の帯でしめるので 着方や形は日本の着物に似ていますが 裾を膝上までたくし上げ 一見スカートの様にも見えます。

下着には テュゴと呼ばれる長袖の白いシャツを着て 腕部分をゴとテュゴを一緒に折り返し 足はロングソックスの上に革靴やスニーカー 儀礼や行事の際は伝統靴を合わせます。

また 帯をしめる際に少し上半身部分はたるませることでお腹や背中の部分に空間を作り(部分)バッグがわりに使い 手には何も持たず出歩きます。

展示されているゴは絹地を使っていますが 一般的なゴには木綿が用いられ 赤や茶色が一般的です。

公式な場所や行事 ゾン() お寺などを訪問する時は ゴの上に幅90㎝ 長さ4.5mほどのカムニという礼装用の布を左肩から右脇に たすき掛けのような形で掛けます。

カムニには 着用していない時の持ち方やたたみ方など細かなルールがありますが 特に色についてのルールは重要で 身分や階級によって定められ 一般人が着用するカムニは白 村長は白地の端に赤いライン 副知事や次長は赤地の端に白いライン 局長及び県長は臙脂色 大臣クラスは緋色 国王と最高位の僧侶のみがサフラン色を着用します。

   チベットからブータンに逃げてきた僧侶たちが チベットからの攻撃に備える

    ために作られた城塞の役割をしていた建物で 現在では県庁兼寺院として使用

    されていることが多い

 

 

 

 

 

ブータン女性の民族衣装は グツムというスリップの上に 長袖ブラウスのケンジャや長袖上着のテュゴを着て 3枚の布を繋ぎ合わせたキラという一枚布を インドのサリーのように巻きつけ 肩部分をコマというブローチで固定 細帯のケラで締め付け着用します。

また 男性のカムニのように ラチューと呼ばれる肩掛けを身につけ おぶい紐や財布のようにして使います。

ブータンは寒さが厳しい山岳地帯に位置するため キラは目の詰まった厚手の織物で作られ 複雑な着付けによって体を何重にも保護します。

 

 

 

 

 

 

余談になりますが ブータン人は着道楽とも言われ 男女問わず富裕層は 衣装や装飾品に糸目をつけないことでも知られているそうです。
 
 

今回見てきた民族衣装は 少数民族のものがあったり 紛争地域の国のものもありました。

戦争や迫害により 貴重な文化が消え行く事がなくなるよう願うばかりです。

 

今回 2階フロアーでは 特別展も開催されていたため 普段展示されている 復元された古代からの日本の風俗衣装を見ることができませんでした。機会があれば 日本の衣装の移り変わりも見てみたいです。

今回一番の目的 特別展 花嫁衣裳の展示は 後日またご紹介したいと思います。