人は、現実の世界で起こっていることを、ありのままに捉えてはいない。
目を通して受け取った情報を、脳内で処理して、映像として知覚した瞬間には、もう現実のものとは違うものになっている。
映画のマトリクスで描かれた世界のように…。
肉体が接する世界に「道路」があり、それがリアルな現実だとするなら、脳内に浮かびあがった道路の映像は、現実の道路ではなく、それが記された「地図」のようなものにすぎない。
人は、その脳内の地図を頼りに、物事を認識し、現実の道の上を歩いている。
車を運転する時には道路地図が必要で、地下鉄に乗る時には路線図がなければ乗り換えられないように、人は地図に頼って、行動している。
しかし、現実の世界は常に変化しつづけている。
昔、そこにあったはずの道が、今はなくなっていることだってある。
地形が変わったのなら、それに合わせて地図を書き換えないと、道に迷うことになる。
古い地図は、役に立たない。
江戸時代の地図をもって、今の東京を歩いたら、どこにいるのかもわからなくなってしまう。
現実の世界は刻一刻と変わり続けている。
昔の地図は通用しない。
現実の変化に合わせて、脳内の地図を新しいものに書き換えていかなければ、人生だって行き詰まる。
時代とともに、働き方だってものすごく変わった。
高度成長期は、会社に就職して、長く勤めれば勤めるほど、給料があがったし、退職金ももらえて、老後の心配もいらなかった。
だから、多くの人が会社員になることを目指して、いい会社に就職することを目指して、必死に勉強した。
でも、状況はもう既に変わっている。
なのに、人間の脳内地図だけは、その現実の状況に対応して、書き換えられないでいる。
問題なのは、変わってしまった現実の状況の方ではない。
状況の変化を受け入れられず、書き換えられないまま放置された、人間の古い脳内地図のほうだ。
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