ダブルトリガーは重症OHSS防止に有効か?
■質問内容
採卵を決める日のホルモン値が高く(E2 3800pg/ml)、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)が重症化する危険性があるから、トリガーはhCG注射ではなく、点鼻薬(GnRHaスプレー)を使用する旨の説明を受けました。薬を変えても、採卵数、成熟率、胚の質に影響はないのでしょうか?
■当院からの回答
OHSSの予防策と治療について、米国ガイドラインASRMには次のような記載があります。
Fertil Steril 2016; 106: 1634
● OHSSハイリスクの目安
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 高AMH(AMH>3.4 ng/mL)
- エストラジオールE2( E2>3500 )
- 多数の卵胞発育(卵胞発育>25個)
- 採卵数の増加(採卵数>24個)
● OHSS重症化の予防策と治療
- 調節卵巣刺激アンタゴニスト法はOHSSのリスク低下につながる
- トリガーにGnRHaを用いるとOHSSのリスク低下につながる
- ダブルトリガー(hCG+GnRHa)を用いると成績が向上する
- ドパミンアゴニストをトリガーの日から用いるとOHSS発症率の低下につながる
- 全胚凍結はOHSS予防につながる
また、トリガーの優劣(胚質)についてのデータはありませんでしたが、正常胚はトリガーの種類で変わらないことが示されています
PGT-A に際して行わた研究から、正常胚率はhCGトリガーとGnRHaトリガーで変わらないことが報告され、OHSSリスクのある場合には、GnRHaトリガーが推奨されています(Fertil Steril 2019; 112: 258)
アンタゴニスト法で、hMG製剤とFSH製剤を用い、17〜18mmで採卵トリガーを実施し、採卵およびPGT-Aを実施した539周期を対象に、GnRHaトリガーとhCGトリガーによる正常胚率に違いがないかどうかについて後方視的に検討した結果、正常胚率はトリガーの種類で変わらないことが示されました。
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