僕の旅の醍醐味、それは移動
旅をする、という日本語は、移動する、という意味にも捉えられる。例えば、Travel、という英単語は、Trainで移動しても、Air planeで移動しても、Walkで移動しても何にでも使える動詞だ。僕は旅をすることは移動することだと思っている。一箇所に留まっていることは旅ではない。常に新しい土地を見ること、歩く、電車に乗る、なんでも良いが移動すること、それが旅の醍醐味だ。移動することは別の楽しみもある。景色が変わることだ。僕だけだろうか、バスでも電車でも、車窓から流れる景色は何時間見ていても飽きない。あの家に住んでいる人はどんな生活をしているのだろうか、あそこにいる動物はだれかに飼われているのだろうか、野生ならどこに巣があるのか、あの人はなぜあそこを歩いているのだろうか、そんなことを考えながら車窓を眺めていると長距離移動もなんてことないのだ。夜の車窓は困る。景色ではなく窓に映った僕の顔が見えるからだ。その時、改めて僕はどんな顔をしているか振り返る時間にもなる。僕の顔は活き活きとしているだろうか、目は輝いているだろうか、心や身体は元気だろうか。どんな人生を生きてきたのだろうか、これからどう生きるのだろうか。そんなことを考える時間を車窓が与えてくれる。僕はそんな移動が大好きだ。イエメンの首都、サナアから南部の都市エデンまで夜行バスに乗ったことがある。その時観光客は僕一人で大変心細かったんだけれど、車窓を見ていることでそんな不安は吹き飛んだ。夜は明かりがないところを走っていると何にも見えないんだけれど、僕は窓際の席を確保して、明かりの消えたバスの中でもカーテンの向こう側に顔をやって、窓の外をずっと見ていた。イエメンの都市間は盗賊が出るので注意が必要(どんな注意!?)、と言われていて銃を持ったガードも同乗していた。そんな場所を移動しているのは無性に興奮して、「(イエメンの荒野って何があるんだろう)」、正直ほとんど何にも見えないんだけれど、暗闇の向こうに広がる土地に思いを馳せた。とにかく移動することを醍醐味とした旅を続けてきたおかげで、リーマンバックパッカーに必要なスキル、短時間で何カ国も、何百キロも移動する、を実践し、たくさんの街や人を見ることが出来てきたのだ。なんせ僕の目標はリーマンバックパッカーで世界一周なんだから。移動する時間は、本を読む時間にもなる。僕は本を読むのが好きで、学生時代は一日に何時間も本を読んで過ごしたんだけれども、リーマンになってからは、平日はほとんど時間がなく、週末も5,6時間も本を読んで過ごすなんてことも出来ず、もっぱら読書に没頭出来るのは旅に出た時だけだった。アンビバレントだが、旅、特に一人旅はとにかく暇だ。乗り継ぎはいつも上手くいかず、待ち時間は数時間に及ぶこともしばしば。宿の周囲が都会ならまだしも、田舎の一軒屋や都会の孤独の中で、夜何もすることがないという状況がしょっちゅうある。そんな時、まとまって本が読めることも非常に大事な時間である。移動中ゆっくり本が読める時間も幸せである。移動すること、それが旅だ。一緒にインドを旅したS氏とインド女性。移動中、普段本を読まない彼さえも本を読む