ダイアルQ2。
毎日郵便受けに10枚くらいのちらしが入っていた。
はがきの半分くらいの大きさで女性の写真と番号が大きく載っている。
それらを部屋に持ち帰ってしばらく眺めていた。
最初にそこに掛けたときのことはまったく記憶にない。
おそらくあまり何も考えずに番号をプッシュしたのだろう。
あるいは記憶に残るほどのことは無かったということだ。
初めの頃は女性たちは一つの部屋にいて一人ずつ電話が与えられている。
そして次々かかる男からの電話を空いている子がとって話す。といったものだった。
一人一人が何かで仕切られてもいなかったのだろう。
よく耳を凝らすと近くで話している他の女の子の話している声が聞こえた。
実はこの時に特筆すべきことが起きている。
その女性はその後話した女性たちの、どの一派にも属さない印象だった。
あるいはまだ何も始まっていない時だ。
私がそれを判別できるだけの経験が不足していたせいかもしれない。
彼女が言ったその言葉にしても、忘れてしまっていた。
その後、一連のことが起きた後でそのことがふと頭によみがえったのだ。
その女性にとても真面目な印象を受けた。
控えめで自分のことは話さずに相手の話すことを聞く側に回るタイプのようだった。
私にとっては話しやすく、内容は覚えていないが、たわいもない世間話のようなものをしたのだろう。 そして流れで相手の話を聞いた。
彼女は何かそれほど深刻でない悩みを抱えていて、二人してその解決方法を考えあった。
そしてかなりの時間が過ぎていき、終わりがけに私に礼を言った。
「自分に優しくしてもらったことってあまりないんです。」と言い、ちょっと考えた後こう言った。
「あなたは私に優しくしてくれた。
これから先きっとあなたに何か良いことがありますよ。」
その時はその言葉を深く考えなかった。
でも時間が過ぎて色々なことが起きて去ったあと、ふとその時の言葉を思い出した。
「もしかして、この話の一番最初はあそこだったんじゃないか・・・。」 と。