Micaには番号を聞かなかった。
それは私のやり方じゃなかった。
多分に私の性格的なところだけど、言いたければ言うだろうし、相手が望まないことをさせる気はなかった。
それでも予想通りMicaはその次の日も掛けてきた。
そしてふたたび昨日と同じ時間が流れた。
ある意味冷静でCoolな時間だ。 それでも私にとっては楽しいひとときだった。
が、あるとき突然切れた。
受話器からは、ツー、ツー、ツー、と回線が切れたことを示す音が続いていた。
最初呆然として何が起きたのか分からなかった。
電話機を見つめながら、その瞬間のことを思い出して検証してみた。
会話の途中だった。 しかも、彼女が話している途中だった。
センテンスが終わらないうちに切れた。 つまり、
彼女自身が切ったのではない。
それが結論だった。
じゃあ、何故、誰が、と言う疑問が残った。
その後しばらく待った。10分くらい過ぎた後、その場を離れたがいつでも出られるように電話は開けておいた。
でも結局その日は掛かってこなかった。
そして次の夜もやはり掛かって来なかった。
おそらくMicaは私が切ったと思ったのだろう。
それで怒っているのだろう。 そう思った。
諦めきれなかった。
Micaとつながった2Shotラインにまた掛け始めた。
Micaをつかまえるために。
たとえ違うふりをしても、絶対間違える声じゃない。それがMicaの声だった。
毎日何度もそのラインに入って彼女を探した。
でもダメだった。 出てくる女性はごく普通の、私にとっては何の魅力もない女性達ばかりだった。
話を適当に切り上げて早めに切った。
そうやって何日かが過ぎていった。
1月18日。 この日につながった女性は今までと違っていた。
高い品性、知識、話し方やかけひきなど話術の点ではMica以上だった。
でも話し方の方法論が何かとてもMicaによく似ていた。
彼女もこちらの番号を言うと直接掛けてくれた。
彼女は最初つながってから一時間以上もほとんど一人で喋っていた。
そして彼女の今置かれている状況と悩みを含んだ話を聞いた。
ただ聞いた。
そしてこの女性がFumiだった。