東浜巨電撃無償トレードの舞台裏。ホークスの思惑と「沖尚・亜大」のパイプ
実績十分のベテラン右腕・東浜巨投手がカープのユニフォームを着てくれることへの期待と喜びが、ファンの間でも広がっています。
かつての秋山翔吾選手の加入時がそうであったように、厳しいチーム状況にあっても広島を選び、新天地での勝負を選んでくれたプロの覚悟には心から敬意を表したいところです。
ソフトバンク側の「功労者の登板機会を尊重した恩情」という側面も間違いなく事実でしょう。
しかし、プロ野球のトレードにおいて感情だけで話が進むことはありません。
この電撃劇の背景には、両球団のシビアな編成事情と、フロント中枢に眠る太いパイプが美しく噛み合った決定的な理由が存在します。
まずソフトバンク側にとって、東浜投手の放出は人情劇にとどまらない編成上の至上命題でした。
今秋のドラフト指名を終えた時点で、ソフトバンクの支配下登録選手は上限の70名に達していました。
巨大な育成システムを誇るホークスにとって、開幕時に2〜3枠の空き枠を残しておかなければ、ファームの育成選手たちのモチベーションは完全に崩壊してしまいます。
さらに今オフ、FA戦線や新外国人の獲得へ動くのであれば、支配下枠の整理は絶対条件でした。
功労者のプライドを傷つけず円満に枠を空ける手段として、先発が枯渇している球団への無償譲渡は、ホークスにとってもっとも合理的で摩擦のない選択肢だったわけです。
なお、一部で囁かれる「森下投手の人的補償を先払いしてもらっただけでは」という噂ですが、枠を1つでも減らしたいホークスの台所事情を考えれば、人的補償でさらに別の選手を持っていってもらった方が枠が空くため、人的を放棄して金銭決着にするメリットは薄く、その可能性は低いと見るのが自然です。
では、なぜその譲渡先がカープだったのか。
先発陣の崩壊危機というチーム事情以上に、フロントの人脈の太さが決定的でした。
鍵を握ったのは、カープの比嘉寿光編成課長です。
比嘉課長は1999年、沖縄尚学が春夏通じて沖縄県勢初となる甲子園制覇を成し遂げた時の主将。
そして2008年、東浜投手を擁して同校が再びセンバツを制した時の監督こそ、比嘉課長と同期の比嘉公也監督でした。
さらに東浜投手はその後、亜細亜大学へ進学。
ドラフトでも強固なラインを持つ亜大ネットワークも含め、高校・大学の直系ルートがカープの編成中枢と直結していたからこそ、水面下の交渉が電光石火でまとまったと言えます。
今後の注目点は、今季年俸1億1,000万円を巡る契約条件です。
減額制限(40%)を適用しても6,600万円となる規模を、資金力に乏しいカープが満額負担するのか、あるいはソフトバンク側が一定割合を肩代わりしたのか、もしくは東浜投手自身が出場機会を求めて大幅な減額を受け入れたのか。
この処理の詳細は、球団の今オフの予算規模を測る上でも見逃せないポイントになります。