だるま商店の絵 | ふるさと会のブログ

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なにば

 現代の絵師「だるま商店」は随心院のはねず色の襖絵「極彩色梅匂小町絵図(ごくさいしきうめいろこまちえず)」でも知られる2人組のアート・ニットで、日本文化・歴史を題材にした様々な絵をCGで生み出しています。

 随心院の襖絵は小野小町が人生の出来事のあちらこちらに白いシルエットで現れ、楽しそうに自分の人生を眺めています。随心院は卒塔婆小町坐像を所蔵していますが、老女小町の姿が能の「卒都婆小町」の苦しみ・悲しみ、そして静かな諦めの境地を感じさせます。一方、襖絵には極彩色で華やかな世界が描かれ、美人で素晴らしい歌人だったという小町伝説を思い起こさせます。随心院ではこの対照的な小野小町の姿に触れることができます。

 六道珍皇寺の屏風絵「極彩色篁卿六道遊行絵図(ごくさいしきたかむらきょうろくどうゆぎょうず)」も随心院の襖絵と同様とても華やかです。極楽図には薬師三尊の薬師如来、日光菩薩、月光菩薩が色っぽく描かれています。また、小野篁が黒い束帯姿で絵のあちらこちらに登場し、篁卿の一生の出来事が緻密に描かれています。篁卿も小野小町と同じで楽しそうに跳ね回っています。

 篁卿には日中は朝廷に勤め、夜は冥界の閻魔庁で閻魔大王の補佐をしていたという伝説があり、冥界への通勤に使ったという冥土通いの井戸、閻魔大王を含む十王、死者の衣をはがす奪衣婆もしっかり描かれています。真っ暗な地獄の底から聞こえる叫び声が「タ・ス・ケ・テ」という血色の文字で書かれていて、どこに文字があるのかを探すのも見る人の楽しみの一つになっています。

 目を凝らして絵を何度も見ると毎回新しい発見があり、だるま商店が六道珍皇寺に敬意を払って創作したことがよくわかります。中世の六道まいりの様子を描写した桃山時代の「珍皇寺参詣曼荼羅図」を参考に、現代の六道まいりの様子を色彩豊かに描いています。また、熊野比丘尼が絵解きに活用したとされる「熊野勧進十界図」のモチーフも出てきます。それは人生の坂道(老いの坂)で、ゆるやかな白い虹のような坂道を歩く人の一生が描かれています。また、地獄の奪衣婆は「熊野勧進十界図」に描かれたユーモラスな老婆とは違い、「Game of Thrones」に出てくるゾンビのような寒々とした姿で登場します。しかし、奪衣婆の背後の衣領樹には高島屋の紙袋がさりげなく掛けてあり、「タ・ス・ケ・テ」とともに作者の遊び心が感じられます。

 斬新なCGの襖絵や屏風がお寺にあるのを見て眉をひそめる人もいますが、昔の襖絵や屏風もその当時の最先端の絵師が手掛けたものだということを思い起こしてみましょう。現代アートの襖絵や屏風が百年後には過去の貴重な芸術作品として高く評価されているかもしれません。通常お寺では襖絵などの写真撮影は禁止されていますが、だるま商店の作品に限り、作者が撮影を許可しています。撮った写真をインスタグラムなどに載せるのも自由です。

 先日六道珍皇寺でだるま商店が1日だけの御朱印授与をしました。その日は拝観者が朝から行列を作って並び、たいへんな人出となりました。

 だるま商店の島直也さん、安西智さん、これからも華麗なCGアートによる日本文化の発信を続けていってくださいね。