『正月は東京女子で過ごしましたヨ 1』から続き。

 

インターナショナル・プリンセス選手権

<王者>渡辺未詩

vs

トリッシュ・アドラ<挑戦者>

アドラは第三世界風なアレンジ+ラップな曲で入場。頭になんか巻いてるし、それを外した時の祈りを捧げるような仕草。

一方未詩はいつもの打ち込みアレンジ&「L!O!V!E! LOVEプロレス! L!O!V!E! LOVEアイドル!」の『チョコっとラブ ME ドゥー』で入場。ポーズもコスチュームもいつも通りモロかわいい系。

2人の差、文化的違和感がすごい(笑)。

 

もう端から体格差がかなりある。アドラが前かがみなのに2人の頭の高さが同じ。股下の長さも全然違う。未詩も相当鍛えてるけど、根本的に身体の厚みも全然違う。

 

未詩はちょっと危なかった。アドラが結構悪くない。パワーがあって技がガツンと決まる。体格が未詩よりデカいだけでなく、関節技を意外に繰り出しててこれも効いてて。レスリングがちゃんと出来るんで、東京女子に向いてると思う。

未詩は腕にきてるらしく後半何度も腕を振ってた。

 

背後から腕を決められた状態で…

 

うわぁーっ!と叫ぶとそのままグルグル回って振り飛ばした!

パワーで押し切るのは未詩の真骨頂だが、アドラ相手にもカマした!

 

ジャイアントスイングも腕が痛んで失敗してやり直したぐらいだったが、でも決めてみせるのが未詩の凄さであり魅力。

(アドラが回されながら口とお腹を押さえてるので気持ち悪くなってた? 辰巳リカもジャイアントスイング=三半規管にくる技は苦手と言ってたっけ)

最後はティアドロップでフォール勝ち。どうなることかと思ったけど、タイトル防衛。

守った未詩も凄いけど、アドラも結構いいかもしんない選手でしたよ。

 

プリンセスタッグ選手権

<王者組>赤井沙希&荒井優希

vs

マックス・ジ・インペイラー&ハイディ・ハウイツァ<挑戦者組>

インペイラー1人だけでも手がつけられないのに、もう1人凶悪そうなのが来てしまった…。

この2人のキャラのモチーフは当然映画のマッドマックスである。

 

対する令和のAA砲=赤井&荒井はかわいいポーズ♪

そんな2人を怪物コンビはどんな気分で見ているのだろう(笑)。

(ちなみに意外にインペイラーはかわいいもの好きらしいね・笑)

試合はいきなりインペイラーの突進・奇襲で始まった! 怪物コンビに蹂躙されるAA砲…。

 

しかし凄いのは(メジャーアイドルグループSKE48の現役メンバーでもある)荒井が怯んでいない。凶悪外人タッグになかなか気合いの入ったエルボーを打ち込んでく! 特に場外で肘をブチ込んでるのを見た時はカッコいいとすら思ったもん。

 

そしてあのインペイラーの顔面に蹴りをブチ込んでく!

アイドルがプロレスもやってるではなく、完全にプロレスラー荒井優希!

 

しかしインペイラーは1発、2発…と荒井をボディスラムで叩きつけてく。

 

強烈な存在感とパワーで立ち塞がる外人コンビ。

 

赤井もサブミッションに捉えるなど食らいついてくのだが…力で引きずられて逃げられてしまう。

 

ダブルの新人賞(2人で蹴り)。連係プレーに活路を見出そうとするAA砲。

 

そして荒井がフェイバリットホールドのファイナリー(踵落とし)を繰り出すが、インペイラーは片手で止めてしまう!

(でもこの直後の、殴りかかってきたインペイラーの腕をキャッチしてくるりと身体を回した荒井が逆さ押さえ込みに入る流れるような動きは良かったよ。客席からも思わず「おぉーっ!」って声があがった。)

インペイラーは荒井に剛腕ラリアット連発!

(2021年の10.9大田区でアジャコングが荒井にバックドロップ放った時もやべェじゃん!と思ったけど、今回これ食らっても(赤井がカットに入ったとはいえ)まだ続行したのだから凄い。重ねて言うけどこのコSKE48だからね!)

 

最後は外人コンビのツープラトン攻撃で荒井がフォール負け…。

(後でニュース記事読んで、インペイラーがハウイツァを肩に乗せて対戦相手に落とすこの技の名前が「マスターブラスター」と知ったのだが、俺てっきり世代からいってこの2人のマッドマックス押しは『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015年)の方だと思ってたんだけど、旧作のマッドマックスシリーズをちゃんと押さえてるとわかって感心したのだった(笑)。マスターブラスターって『マッドマックス サンダードーム』(1985年)の、巨人のブラスターが肩の上に小人のマスターを乗せてて2人で1人という双頭の怪物の名前なんだけど、まさにそこからきてる技&名前なのだ。)

AA砲の陥落には悪い意味で驚いた。ウソでしょ!?って。魅力的なタッグなのに。ましてや正月早々めでたい時期に。

(なんかスケジュール的な都合でもあるのか?と思ったんだけど、…赤井はDDTで親会社は同じとはいえ別団体で、荒井はかなり高頻度で東京女子に参戦してるけどそもそもは限定出場だし。

らく&愛野ユキとの防衛戦でらくが欠場になってぽむが代理になった時、タイトルマッチ先に延ばしてらくにやらせてやればいいのに…と思ったんだけど、あぁスケジュールの都合上後ろ倒せないのかな…と思ったんだけど、今回もそんなようなことなのかな?と。

そして会社的にインペイラーにだったらタイトル渡ってもいいという。みんな大好きインペイラー(笑)。去年8月の初登場時にインパクトあり過ぎで人気者に。その後2度再来日で、年明けまた来日だからね、これから先もインペイラー呼び続けるってことなんだと思うけど…?

でも1/15から始まるタッグトーナメントにAA砲出るんだよね。トーナメントはスケジュールが絡んでくるんで(実際坂崎は海外遠征優先して今回出ず、連動してパートナー瑞希も出ない=マジラビ不参加)、スケジュールが理由なら出ないはずなんだよ。

その理屈でいくとなんで陥落したのかよくわからない。)

 

プリンセス・オブ・プリンセス選手権

<王者>坂崎ユカ

vs

山下実優<挑戦者>

遂に始まった東京女子頂上決戦!

今は坂崎が王者だが、山下は東京女子のエースであり“絶対王者”とも呼ばれる。

ビッグマッチのメインであるべきこの対決が後楽園ホールで見れちゃうんだからすごい。

 

普段(っつっても公の場でね)山下に対してつれない態度が多い坂崎が、試合開始前の握手の時、山下が離れようとしても離さず、さらにもう片手まで沿えてガッチリ握手してたのがまず印象的だった。

なんかこう菓子折り問答とかあぁいういつもの感じとは違う、素の感情、この試合にかける真摯な思いをみた気がした。

 

まだ序盤だっけ? 坂崎がよくやる、ロープを背にさせた相手の首に足絡めてリング外側にぶらーんっていう、今回あれやったらそのまま山下が後ろに回って場外転落! すげぇ落ち方した。大丈夫か!?って心配になったもの。

俺の席からは(前の人の頭がジャマで)南側場外で倒れてる山下の状況が見えないのだが、正面スクリーンに映ってる映像では山下は苦しそうに見える。

しかしそのあと坂崎がブレーンバスターをやったんで、あ 大丈夫なのかな!?と。

試合は続行されてゆく…。

 

めっちゃピンボケなんだけどさ…

コーナー上での戦いで山下が放った頭突きはゴッ!って音がこっちまで聞こえてきて、観てて思わずおぉ!って声出しちゃったもの。会場全体もどよめいた。

そしてコーナー上で坂崎を抱え上げた山下、1回前へバランス崩れ、すんでのところで鉄柱とコーナーポストの間の金具に手をついてなんとか留まった時、ヒヤッとして客席からも思わず声が上がる。

そして雪崩式アティテュード アジャストメント!

 

ロープ外の山下を坂崎がリング内から攻撃する場面だったと思うが、坂崎がロープ抜けて外に出て、エプロンで2人が猪木アリ状態っぽくなるとこなんかスリリングというか“段取りプロレス”にはない緊迫感というか、あって。

リング内の攻防でも手を知り尽くしてるからかベテランだからか、あるいは東京女子のプロレスがちゃんとしてるからか(ちゃんとレスリングを教える。だから特にトップどころがシリアスに試合すると観応えのあるプロレスになる)、動きがさ、段取りアクションじゃなくて来たものに対応する競技型の動きが多々あって、とてもハイレベルでスリリングでプロフェッショナルな感じでカッコよかった。

 

激しい肘打ちの攻防。キツいのがガツン!と入りまくる。

 

そしてこの、2人の間ではよく出る、坂崎のエルボーを山下が足で蹴り飛ばして打ち落とすみたいな、これも激しい! カッコいい!

しかし坂崎は次の瞬間さらに放たれた山下の蹴りを拳で叩き落とす!

 

さらに山下の後ろ回し蹴りをかわした坂崎が冠先割(トラースキックに近いんだけど下から突き上げるような坂崎の蹴り技)の次、無造作に思いっきり横殴りでブン殴るのが凄い!

 

だが山下もスカルキック!

しかし坂崎はカウント2でキックアウトしたのみならず、山下より先に立ち上がり肘打ちをブチ込んでいく。

 

一進一退、山下はクラッシュラビットヒートを繰り出す!

西側から走り込んできた山下をかわす坂崎だが瞬時に読み取った山下が北側のロープに飛んで坂崎の後頭部からブチ込む! この動きってこれまでも見てて惚れ惚れしてたんだけど、

しかも今回は当たりがエグい!

 

なのにさらにロープに飛んだ山下をキャッチした坂崎はマジカルメリーゴーランド(相手を肩口に乗せてぐるぐる回転して放って落っことす)を放つ。

すぐに起き上がる山下。坂崎の横殴りと山下の蹴りの続けざま2連発相打ちからの坂崎のローリングエルボーがエグい強度で入る! やられた山下もやった坂崎もブッ倒れる!

もう充分だ! もういい! 観てるこっちがそう思っても、坂崎は立ち上がり――

 

魔法少女にわとり野郎(前方回転で360度以上回ってうつ伏せで相手に落ちる技)でスリーカウント勝利…

なぜにそこまで、の死力を尽くした戦いに、観ててこみあげそうになる。(かつて馬場が激しい四天王プロレス見て泣いたってのもわかろうというもの)

 

負けた山下にワントゥーミリオンのパートナー伊藤ちゃんが付き添い、退場してゆくが、坂崎の呼び止め方がすごい。

マイクで「待たんかいボケーッ!」と絶叫する(笑)。

そして「また…やるぞ」

と言うと、坂崎は山下がいつもやってる右拳を前に突き出すポーズをやってみせ、山下もそれに応える。

坂崎が他人のポーズを、それも山下のポーズをやることなどまずないので、坂崎なりの山下に対する最大限の賛辞だったのか。

山下が負けたと思っていない。実際この2人は実力が拮抗しているのでシーソーゲームで、どっちが勝つかはその時々といっていい。

 

山下がいなくなると、坂崎はマットに倒れる。が、まだ締めてないので起き上がると、話し始める。距離があるのでハッキリ見えてはいないが鼻をすすりながら喋ってるので少し泣いていることがわかる。来てくれた観客に礼を言い、次の挑戦者は…と言うと、挑戦者決定バトルロイヤルで勝ち抜いた瑞希がやってきている。

2人はプロレスでタッグパートナーであるだけでなく、公私ともに親友。もはや愛し合ってんじゃないかってぐらいの。

坂崎「すっごくやりたくないけど」

瑞希「うん… 瑞希も、隣りで強くなってゆくユカっちを見てて、置いてきぼりになった気持ちに…なったりとかして… 去年1年は、自分に自信をつけようつけようって頑張ってきて、ユカっちにも勝ってほしい、(でもユカっちと)試合したくない、いろんな気持ち、あったけど、瑞希はやっぱりユカっちを超えたい…思うし…ユカっちの持ってるベルト、瑞希も持ちたいし、ユカっちからベルトを獲るのは、瑞希じゃないと、ダメだって(嗚咽) 思うしそれは誰にも譲れないから。」

泣きそうになりながらとつとつと語られる、人間・瑞希でなく普段は口にしないファイター・瑞希としての坂崎への感情。

坂崎「瑞希のこと大好きやけど、これは、あげられんから。3/18の有明で、これかけて、ふたりで競争しよ。…ワシが勝っても嫌いにならんとってな」

親友としての自分とチャンピオンとしての自分が入り混ざった、坂崎の優しい受け答え。

…東京女子らしくてとても良い。どこぞの団体は妬みや私恨、女のドロドロ感情を燃料に戦ってるから人間の薄汚さや残酷さに溢れてるが、東京女子にそんなものはない。そんなものがなくても、相手に対するリスペクトや人に対する思い遣り、キレイな感情だけで生きていても、人の胸を打つ鮮烈な戦いはできる。それは今まさに坂崎と山下の戦いで見せつけられた。

どこぞの団体は路地裏のケンカみたいな、チンピラみたいな抗争を繰り返してて、またなぜかそんなものが支持されてて人気あるが、霊位の低い奴はそれでいいだろうさ、でも真っ当な人間からするとあれは不愉快極まりないんだよ。『スターウォーズ』で言うところのダークサイドってやつだよ。そっちに惹かれる奴もいる。でもそういうのを忌み嫌う真っ当な文明人からすると、東京女子の優しく温かい世界はとても好感が持てる。コミカル試合ではなおのことだがシリアスな試合でもその根底にネガティブ感情の無い、まさにスポーツマンシップというかフェアプレー精神に溢れた至高の戦いが出来る。

坂崎vs山下も、坂崎と瑞希のマイクも、そんな東京女子が溢れていた。

瑞希「瑞希が勝ったら、誉めてな」 客席から笑いがおこる。坂崎も笑顔になる。

2023年の東京女子最大のビッグマッチ有明コロシアム大会のメインイベント坂崎vs瑞希のタイトルマッチも間違いなく壮絶な試合になると思われる。瑞希の攻撃はエグい。そして私恨など皆無でも気持ちのスイッチの切り替えがちゃんと出来る一流のプロフェッショナルである東京女子のトップ選手たちだから、瑞希は坂崎に対しても自分の戦い方のスタイルをやるだろうし、坂崎も全て受けとめるだろう。前に話したけどプロレスラーは本当は信頼がないと出来ない職業で、だからこそ“肉体言語”があり(言葉でなく戦う中でのコミュニケーション)、一般の感覚や通常の生物の概念と違って戦うことでむしろ友愛を確認できたりする。3.18で我々はそれを目にすることができるだろう。

 

…ところで気になるのは試合後の山下だ。

おそらく意識が飛んだ状態で試合を続ける山下実優、とツイートしてた人いて。例の、坂崎のブラ下がり攻撃で山下が後ろに回っちゃって場外に転落した時、あれで山下が動けなくなったとツイートしてた(俺よりもっとずっと前の席で観てた)ファンもいて、やっぱあの時か? ちょっとただ事じゃない感じの落ち方だったもんな…

で、東京女子公式ツイッターでこの日の特典会を山下が体調不良で欠席&それに伴って山下のポートレートとチェキ券の払い戻しがアナウンスされ、山下は5日に「ちょっと回復しました」とツイートしたが、6日には東京女子公式ツイッターで、試合後に山下が頭痛があったので病院でMRI検査を受けたこと、異常はみられず軽い脳震盪と診断されたこと、しかし数日間の安静が必要なことと長時間のフライトの負担を考慮し週末山下が行くはずだったイギリスEVE参戦の欠場がアナウンスされた。

山下は「今は回復しているので大丈夫です すぐに戻ります」とツイートしてたが、大丈夫か?

 

…そんな壮絶な戦いを生で直接見て、大会後半はシリアスなタイトルマッチ、前半は笑いどころが多く、やはり東京女子プロレスはシリアスとコミカル半々でバランス良く、グレードも高く、女子プロ界で  というより世界のプロレス界の最高峰レベルの団体ではないかと改めて思った。

あとはとにかく山下に何事もないことを祈る。