『2022年3月19日、至福の両国国技館 ――2』から続き。

 

▼第五試合

天満のどかvs愛野ユキ

 

俺が東京女子を見るようになって、天満のどかは当初から気に入った選手の1人だった。

対戦相手に延々ロープに振られてヘロヘロになったり、振られるのを拒否ってロープにしがみついて「ヤだよ!」とか、テコの原理で投げられるムーブでは重くて飛ばなくてムーブの途中の態勢のままだらしなくフリーズとか、豆タンクみたいな体型、数々の写真でのフザけた表情やポーズ、食べることが好きとか、とてもユーモラスで楽しくて好感持てた。

そののどかが去年12月、東京女子からの卒業&引退を発表した時、俺はなんだかとても喪失感を感じた。

のどかも東京女子にいなくてはならない1人だった。彼女のユーモラスさは東京女子にとって必須だったし、彼女と同じタイプは他にいない。東京女子の魅力の上で彼女がいなくなる損失はデカい。これがケガとかで引退なら“それなら仕方ない…”と思えるのだが、そうではなく地元に帰って農業をやる・プロレスを嫌いになって辞めるのではなく一番好きな時に辞めたいというのがまたなんだか寂しくて… 同時にそんな理由は彼女らしくもあって、俺は複雑な気分だった。

愛野ユキはのどかの実の妹である。爆れつシスターズという姉妹タッグを組んでいた。

こないだのタッグトーナメントは絶対爆シスが優勝すると思い込んでた。だってのどか引退すんだから絶対爆シスが優勝して両国でタッグタイトル挑戦って流れになると思うだろ普通? ところが決勝は白昼夢が爆シス破って優勝。ホント意外だった。全女式ガチなのか!? (決勝戦の後半でユキが「行くぞ姉ちゃん!」と辰巳リカに正面からタックル&わずかに遅れてのどかがリカの後ろからタックルしてリカが前から後ろからぶつかられてわちゃわちゃになるところは燃えた・笑)

したらのどかは両国ではユキとの最初で最後の姉妹対決を希望した。そうきたか、なるほどと。(その次の大会がのどかラストマッチ。これが爆シスタッグなんで最後は爆シスで締めることになり、納得の終幕だ。←このラストマッチでミサヲが明るく楽しくのどかを引き留めようとしたのがめっちゃ好感度大&爽やかに泣けた!)

でもユキは気が乗らず、2/23試合後バックステージでのコメント時の姉妹一悶着がまた良かった。のどか「だってその話したくないんだもん」 ユキ「姉ちゃんが言い出したんでしょ」 中島翔子「ケンカしないで!(苦笑)」 のどか「してないよっ」 ユキ「姉ちゃんが言い出したんじゃん」 のどか「でもやろうよ。やるしかないんだよぉ」 ユキ「やるしかないことはないよ、別にやらなくてもよかったんだけど、姉ちゃんが言うし、まぁもう最後だから…」 のどか「やらないと絶対一生思うよ、おばぁになった時とかに、こう、“試合やろうぜ”」 中島「うるせー(と突き飛ばす)」 ユキ「(笑)」 というやり取りが見てて微笑ましかった。

というわけで迎えた姉妹の両国大会――

 

爆シスの入場曲『BAKURETSU POWER』をangelaが入場ゲート前ステージで生で演ってのどかとユキが入場!

のどかとユキはアニメ・マンガ好き。

angelaはアニメ界で有名なアーティスト。ボーカルatsukoとキーボード&ギターKATSUのユニット。atsukoの歌は上手いというか凄まじい。KATSUはなんか少し浅倉大介に似てる。俺 昔angelaのCD買ったことあるんだよ。『Yell for you』が好きだった。「♪意味深にかっこつけても ボロが出ちゃおしまいだろ 自分らしくあれall or nothing 不自然な作り笑顔は どこで覚えてきたんだい 遺伝子は泣いているんじゃない」「♪信じるべきは自分自身 Hey girl 人生は一度きりだ」(作詞:atsuko)が前傾気味なロックサウンドで歌われる気持ちのいい曲。

のどかが引退間近&両国大会ということで急なオファーに踏み切ったらしく、それをangelaも快諾したと。

俺的には棚ボタで観れることになった生angela。

これから1vs1で戦う選手同士が一緒に入場という前代未聞さは爆シスらしいし選手間がギスギスしてなくて平和な東京女子らしい(笑)。

 

これまで共にあり続けてきた姉妹が遂に対角で対峙する――

 

抱き合ってるように見えるが、殴り合っている。

仲良しなのに戦う。のどかが“やらないと歳とった時に後悔する”と言った意味…

プロレスラーは信頼関係で成り立ってる職業だ(自分も攻めるが相手の技もちゃんと受ける相互関係にあるもので、だから受けずに自分だけいいカッコしたい奴は敬遠されるし、また、プロレスは潰し合いでも殺し合いでもないのでどこまでやっていいかの自己判断も問われ、憎しみだけで試合してたらプロレスの試合は成立しない。だからプロレスはどんなに相手と敵対していても最低限の信用がないとやれないものなんである)。

また、戦うことで相互理解が深まる職業でもある(普段我々は他人と言葉の会話でコミュニケーションしてるが、プロレスラーはそういうわけなんで戦う中で他人とコミュニケーションとれるという、特殊なことがやれるんである)。

のどかとユキの姉妹は仲が良いから戦わないできたが、戦い合うからこその信頼関係や相互理解がプロレスにはあるのだ。もう引退が目前になったのどかにとって、せっかくプロレスラーだったのにそれをユキと一度もやらないまま終わるのはあまりにもったいなかったのだろう。

気が進まなかったユキだがリングに上がれば「プロ」レスラーに切り替えて(リング上とリング外を切り替えられる、それがプロ)、のどかと渾身の試合をした。

(3/26の のどかの引退式はYouTube東京女子公式チャンネル動画『みんなの愛がギュっと詰まったセレモニー!約6年2ヶ月、東京女子プロレスを明るく照らしてくれてありがとう!天満のどか卒業記念大会 3.26大手町三井ホール』で見れる。送り出す皆の温かさと優しさ、のどかの時にユーモアを挟みながらも感動的なコメント(←これほんと泣けた…)、これぞ東京女子な多幸感に満ちた幸せな映像である。)

 

▼第六試合

[NEO美威獅鬼軍]沙希様&メイ・サン=ミッシェル&マーサ&ユキオ・サン=ローラン vs 小橋マリカ&らく&原宿ぽむ&ラム会長(666)

 

所属選手ではないが東京女子に不定期参戦してる、あまりの面白さと東京女子らしさに最早レギュラーといってもいい(東京女子でのみのキャラである)NEO美威獅鬼軍、沙希様とメイ・サンのお両国お国技館大会お参戦。

沙希様が薔薇で対戦相手を殴打しリングに飛び散る花びら、沙希様とそのキュートなメイドであるメイ・サンのダンスを踊るような合体攻撃、そしてなんつってもメイ・サンが相手をロープに飛ばしざま銀のトレーをリング上に置いて、戻ってきた相手がトレーで足を滑らせスッ転ぶという攻撃はお笑いと芸術を兼ね備えた絶妙さ(爆笑)。

沙希様はフランスの金持ちのお嬢様みたいな設定であり発言やムーブも優雅さを前面に出してるのだが、なぜか入場曲は「♪草むら~に~ 名ぁも知ぃれず~ さ~い~てい~る~ 花な~らば~」という歌詞がすげェ歌謡曲チックに歌われるすさまじく時代錯誤な歌、昔のテレビアニメ『ベルサイユのばら』の主題歌、鈴木宏子『薔薇は美しく散る』なんである(笑)。

けどコレ、特にAメロと間奏が、メインメロディがいいのかカウンターメロディがいいのか、ちょっとグッとくる曲なんだよ。

 

で、沙希様のあのトンデモ入場曲が迫力の大音響で鳴り響き、俺はその真っ只中にいて感激した(笑)。バカウケ&重低音効いてるんで「メインメロディがいいのかカウンターメロディがいいのか、ちょっとグッとくる曲なんだよ」感が倍増でハネ上がってた。

沙希様は薔薇に覆われた高級チェアーに鎮座してるビッグマッチ仕様の登場。

さらに今は関わってない過去の美威獅鬼軍選手総登場、世志琥がいたのも驚いたしさっき試合終えたミサヲが操で当時のビジュアルにチェンジして出てきてたのも驚いた。

 

らくちゃん「♪ね~むれぇ~」 例によっての子守歌催眠ムーブ(眠らせてフォール勝ちしようとする)が繰り広げられる。

 

去年の10.9大田区で炸裂させ見る者全員を狂喜させた伝説?の攻撃、メイ・サンがほうきならぬモップにまたがって空を飛びダブルニードロップを落とすアレをやってくれた! しかも生だぜ生!

 

普段でも沙希様&メイ・サンの試合は素晴らしいエンタメ度だけど、ビッグマッチではなお映える! 東京女子に必須のチームでしょう!

あと撮り損ねたんだけどユキオとラム会長による注射器をめぐる攻防、俺の席からでもラム会長が奪った注射器押したら液体がちゅーっと出るのがしっかり見えた(笑)。

 

この試合の時だっけもう1つ前の試合中だっけ? ケータイ鳴り出して慌てて止める! 誰だよ土曜に電話してくるバカは!(マナーモードにしてたと思ってたのに…)

この試合後15分の休憩。喫煙所で2本吸い、さっきの電話はどこからだ?と確認すると知らない番号。かけてみたら会社から。仕事の話なので切るに切れない。もう始まっちまうよ… 話のすり合わせが長引いて途中保留にまでされ目の前が真っ暗になる。(途中、通路をらくちゃんと小橋マリカが通ってったのが見えた)

そのうち中から難波ちゃんの再開のアナウンスが聞こえてくるし! うわ音楽鳴り出したし! 早くしろよ! よっぽど電話切ろうかと思った。

やっと電話終えて駆け足で戻ってく時、らくちゃんと小橋マリカが誰かと立ち話してて、マリカは泣いてたようだった。家族か知り合いか誰か来てくれてたような感じの様子だった。彼女らのすぐ隣りを通り過ぎて場内へ。

席戻った時にはヒカリの試合の途中…(怒)

 

▼第七試合 スペシャルシングルマッチ

志田光(AEW)vs乃蒼ヒカリ

 

乃蒼ヒカリも好きな選手の1人なんだよな。渡辺未詩・らく・乃蒼ヒカリによるアイドルユニットのアプガはTHE ALFEE並みに3人の個性がバラッバラなのがすごく良い!

未詩はカワイイのにパワーファイターかつハキハキしててMC担当みたいなとこがある。で、人間的には一見まともに見えるんだけど意外に狂い気味なところもあるのも魅力。ツイートの文も独特だったりするけど

すげェ文(笑)。あとあれもすごかったんだよな、YouTubeのアプガの公式チャンネル動画『【画伯誕生】渡辺未詩が対戦相手の似顔絵描いてみた!!』で瑞希の似顔絵を描いてジャン!と出したのがコレ↓

子どもが見たらトラウマになる不気味極まりない絵であり、しかもそれまでと変わらない口調のまま朗らかに「いー感じですね」「カワイイ♪」「すごく特徴を捉えていて、…たぶんリカさん欲しがっちゃうかもしれないこの絵、今頃リカさん「みずぴょ~ん!」ってなってますね」とフツーに話し続けるんである(笑)。

後述するヒカリとベクトルは違うけど双璧な狂いっぷりじゃないだろうか(笑)。誉め言葉である(爆笑)。

らくちゃんは勝ち負けやタイトル戦線には無縁なおっとり穏やか平和感が魅力(それでいて、あとの2人が先にタイトル獲ってることをどう思ってるかみたいなことを聞かれて、“人は人、自分は自分と思っている” “他人のことは気にしない”みたいなことを答えてて、感心したのだった。喋り方や見た目のほんわか感と違って中身は実は3人の中でも一番落ち着きがあって意志が強そうである)。

そしてヒカリはアイドルなのにデスマッチ、ハードコア好き、血が大好きと公言しており、片耳だけでも8つのピアス穴(しかも穴がデカい!)、舌にもピアスしてて、過去何度かデスマッチ・ハードコア系の試合もしており、それでいて喋り方は3人の中で一番大人しく、なのに“高木社長を車で轢きたいので運転免許を取りたい” “(電流爆破マッチで)高木さんを爆破して私が社長に”みたいなトンデモ発言をカマしたりしてるギャップが可笑しいナイスなコ。

あとヒカリの去年8/27のツイートにバカウケ!

 

志田光は東京女子とは無関係の選手で、俺の知ってる志田光というのは華名(現WWEのASUKA)と尻相撲したりコントみたいなことやってる映像でしか見たことないのだが、現在はアメリカで全米ナンバー1のWWEを追撃するAEWマットに上がっていて(第3代AEW世界女子王者)今となっては“外タレ”状態の選手だ。

志田はハードコアマッチの経験が豊富なようで、それでそっち系好きのヒカリの両国大会の試合にあたってスペシャルな対戦相手として東京女子が志田にオファーしてくれたみたいね? 詳しいことは知らないんだけど。

 

場外戦で志田をパイプイスでブン殴ったヒカリに対し、志田は竹刀を持ち出し、ヒカリは志田の竹刀殴打を受けて立つ。

ただ、“らしかった”のはこのあたりぐらいだけで、ヒカリは魅力を存分に炸裂させるには至らず。残念。

 

…ところでどの試合の時だったかデジカメ電池切れ。交換するがそれもそのうち電池切れ。早くないか!? コロナ対策で外気でも入れてるのか場内が寒く、俺はコート着たまま観戦してたのだが、この異様に早い電池切れは低温のせいか!?

寒くて意識が削がれて観戦に支障きたしまくり。

 

『2022年3月19日、至福の両国国技館 ――4』に続く。