『映画の臨場感―1 /4D上映初体験』から続き。

 

ネットのニュースで

PHILE WEB『大画面でSF映画の金字塔を刮目せよ! 『ブレードランナー』初のIMAX版が2週間限定公開』

という記事を見かけたのだった。(以下、特記のない引用はこの記事より)

「東京・池袋のグランドシネマサンシャインにある国内最大級スクリーンのIMAX GT Technology、“the theatre”で鑑賞した」

「今回、IMAXシアターで上映されるのは『ブレードランナー ファイナル・カット』。」

本作はバージョンが7つだか存在する。うち5つを収録したDVD『ブレードランナー アルティメットコレクターズエディション』を持ってるのだが、俺的にはバージョンは正直どれでも構やしないって感じ。ハリソン・フォードのナレーションがあろうがあるまいが、ユニコーンのカットがあろうがあるまいが、そんなことで本作の価値は揺るがない。

それは映画を基本的にストーリーで観ないという大前提があるからだ。絵画とマンガが同じ絵という表現方法でもまるで別物であるように、映画とテレビドラマはどっちも映像なんで延長線上だと思ってるバカ野郎が多いんだけどこの2つは決定的に違うんだというね。

本作は映像が素晴らしい!

架空の未来都市が舞台のSF映画でありながら、本当に実在する街でロケしてきたかのような臨場感。

どのシーンも静止画でポスターにして美術館に飾れるんじゃないかってぐらいな監督リドリー・スコットのビジュアルセンス。

シド・ミードのプロダクションデザイン。

SFX(←特撮というかな)の素晴らしさ。

CGがない映画で、映ってるものはほぼすべて物理的に撮ったものなんで、映像に質感や空気感がちゃんと在る。

役者もブルーバックの前なんかじゃなくちゃんとその質感・空気感の中で演技してるんで、“その世界を生きている”。

一部絵を合成しているカットがあるのだが、これが意外に結構馴染んでいる。CG映像は軽さ・違和感がついてまわるのに…。

映画鑑賞という言葉があるように、映画とは体感し鑑賞するものであって、だからテレビドラマとは別物であり、ましてや映画をスマホで見るとかあり得ないってんだよ。

「本作は、オリジナル撮影時に65mmフィルムで撮影されたSFX(視覚効果)シーンをネガから直接テレシネしていることが特徴。ましてや国内IMAX上映は初めてである。」

(本作は日本国内では2Kでしか上映されたことがなく)「今回のIMAX GT Technologyでは、これがIMAXスクリーンによる劇場初4Kレーザー上映ということが最大の注目である。」

4Kってなんだ?

Wikipedia『4K解像度』より「横4,000×縦2,000前後の画面解像度に対応した映像に対する総称である。Kは1,000を表すSI接頭辞「キロ」の意味で」「2015年現在の日本の地上デジタル放送や通常のBlu-rayは2K放送(Full-HD)以下の解像度がほとんどである。」

あー…要するに“鮮明な映像”ということらしい;

「今回鑑賞したのは、7月にオープンしたばかりの東京・池袋のグランドシネマサンシャインのIMAXスクリーン。デュアル4Kレーザープロジェクター(DLP)によるIMAX GT Technologyスクリーンである。これは大阪の109シネマズ 大阪エキスポシティとともに、国内に2館しかない。」

「なんといっても度肝を抜くのは、ビル4階に相当する高さ18mの国内最大級スクリーンである(W25.849m×H18.91m)。」 横幅は25メートルだ。

「巨大な画面全体から発する音の壁は、身体全体を包み込み、画と音のバランスがよく取れている。IMAX12chへのリミックスが見事。ドルビーステレオ時代の作品なので、ソースは3ch(前方ステレオ+後方1ch)のはずなのに、音がとてもよく回り込んでくる。」「全編を通して酸性雨が降りしきる、雨の音が細かく、かつ広く再現されている。ちゃんと雷鳴が天井から響いてくるのは感動である。」

上映しているグランドシネマサンシャイン池袋のサイトより (IMAXレーザー/GTテクノロジーとは)「革新的な4Kレーザー投影システムを採用し、より鮮やかで明るく、深みのあるコントラストの超高解像度映像を実現。IMAXならではの大スクリーンに映し出すことで、従来とは一線を画す劇的な体験をもたらします。さらに12chサウンドシステムを採用。圧倒的な臨場感で客席を包みます。」

それは観たい! &都内在住の醍醐味。

なんたって本作は映画ベストテンをやったら絶対ランクインするべき作品だし。
 

というワケで9/19、池袋へ。(上映最終日。仕事がしんどくてねぇ…。チケットはネットで予約購入した。一般で¥2500 ←IМAXなんでちょっとお高い。)

が、思いのほかグランドシネマサンシャイン池袋を見つけられず。道を1本間違えたようで。やっと辿り着く。(サンシャイン通りってあんな細い路地かよ!)

俺が観るシアターは12階だが4階が受付的なフロアらしい。

4階。おぉ、ダイナミックに円形なデザインのフロア。床の反射もスタイリッシュ。

券売機に予約番号を入力しチケット出す。

再度エレベーターに乗り――

12階。夜景が見える全面窓ガラス、そしてシアター出入口前のエントランスは何やら天井に映し出された映像で照らし出されててキレイ!というか派手!というか。

4階もだが、どこのオシャレスポットだってぐらい結構クールな光景だ。

出入口にスタッフがいて、なんか言われるのだが聞き取れない。何度か聞き返してなんとかコードを通してくださいと聞き取れたが、まだわからない。何コード?と聞き返すとQRコードと言う。しかし俺は、…ネットで予約購入した時、なんか2種類買い方あって、スマホかなんかでどうこう? 忘れたよ、それと、券売機で予約番号入力してチケット出すのと。俺は後者だし、スマホじゃなくてチケットなんですけど、とか言ったら、チケットのQRコードを通してくださいと言う。チケット見るとQRコードがある。なんだこりゃ? こんなことやらされる映画館は初めてだ。年輩の人間の多くは理解出来ないんじゃない?

やっとシアター内に入り肘掛けに記載されてる番号見ながら自分の番号に近づいてくのだが、この女の隣りか? しかし座ってる女が劇場で買った飲食物の載ったトレーを、なんか肘掛けのドリンクホルダーにはめてるのか?(俺は昔から映画館で何も食べない人なんで、使ったことがない) トレーで塞がれてて番号が見えない。そこを見ながら何番ですか?と言うと、女がトレーをどかした。ここだ。

座るが、左にその女、右に男が座ってて、両者とも肘掛け両方使ってるんで俺が使える肘掛けがなく、2人はくつろいでるが俺は肘掛け両方取られてるので狭さ・圧迫感がハンパない。なんやのコイツら。(ちなみに席は全部か? 埋まってるっぽい。最終日しかも平日なのに盛況である。)

そして右の野郎がウザい。『侠女』の時とか押井のトークショーの時の右の奴同様、なんか異様に落ち着きがない。やたら動いてる。オマエは小学生か。当たり前だが人間の視界は静止してるものより動いてるものに意識がいくので、右の野郎がすっげェイライラする。

予告編が終わったと思ったら、なんか邦画のようなものが流れ始める。最初予告編かと思ってたのだが、違う、ずーっと続く。

なんなんだよコレ(怒) シアター間違えてないか!? 左の女によっぽど聞こうかと思ったもの、ここ『ブレードランナー』じゃないの!?って。

¥2500フイにすんだろうか…と怒り&不安に苛まれながら、居続ける。

右のバカが相変わらず動いてるんで、右手を顔にあてて右側を完全にシャットアウトする。

『ブレードランナー』が観たくて来てんのに、予告編は別にいいよ、しかしそこから邦画もどきのもの(というかテレビドラマもどきというか)を延々見せられ、リドリー・スコットとのあまりの落差に怒りが募り続け、もう目を閉じる。要らないものは見たくない。

どのぐらいやってたかねぇ? 相当経ってからやっと流れてくる言語が日本語でなく英語になったので(といってもまだ『ブレードランナー』の音声ではないのだが)目を開ける。

なんかIМAXを紹介?するような映像らしいのだが、長ェよ!(怒) ←これは観終わって帰る時、他の人も長いと言ってた

本編始まる前からなんだかんだで怒り爆発寸前で不快きわまりない。

それでなくても映画館の料金は高いのに、IМAXだからさらに高い金払ってんだぜ? なのにわざわざ不快にさせて、何考えてんだ?

そうしてやーっと、本編が始まった。どんだけ待たされたか…。

で、始まったら始まったで観客が食ってるさぁ、劇場が販売してる食べ物の匂いが強く漂い続けてる。

オマエらここに何しに来たんだ? そんなに飲み食いしてェなら映画館じゃなく飲食店行きやがれ! というぐらいチキンが匂いまくってる。

匂いも映画鑑賞を阻害する。映画にのめり込めないんだよな、匂ってると嫌でも現実を意識させられるから。こないだの『マトリックス』(後述)の時のポップコーンの匂いは可愛げがあったが、このチキンの匂いの濃密さはスルーできるレベルではない。

飲み食いしまくってる客、テレビドラマ見てるのとカン違いしてねぇか? てめェん家じゃねェんだからさ(あるいは野球場かなんかじゃねぇんだから)。例えばプラネタリウムで飲み食いする奴はいない。まぁそもそも禁止だけど、もしOKだったらプラネタリウムの鑑賞感は完全に阻害される。

アメリカの映画館なら話は違うんだろうが、日本は静かに観るのが基本的だから。この劇場でも上映開始前にスクリーンにスマホ点けるなとか座席を蹴るなとか出るわけよ、ところがそう言ってる一方で飲食物の販売に力を入れてるわけで、バクバク飲み食いしてる奴らも売りさばきまくってる劇場側もどっちもどっちだ。

 

スクリーンがデカいのはやはり没入できる。

4K云々というのは俺にはあまりよくわからなかったが。たしかに36年(だっけ?)も前の映画にしては映像がキレイだが。

俺は本作をビデオテープ、LD、DVDと30年以上前から観続けてるが、ここまでよく見えての鑑賞は初めてだが(あ、いや『最終版』は劇場で観たかな?)、それは4K云々よりスクリーンのデカさの方が大きいと思うんだけど?

音はうるさいとしか思わなかった。 ←おいおい(苦笑)

音がいいと感じるところがなかったわけではないけど、とにかく音がデカい。それが迫力あるというより、俺に言わせりゃ単にうるさいというか。ホラー映画かっていう(音で驚かすホラー演出みたいな、そのぐらいうるさい)。

ハッキリ言ってねぇ、音に関しては自室で重低音の効いたスピーカーに接続してボリュームも結構上げて鑑賞してる方が俺はいいね。

 

右のバカは相変わらず動き続けている。時々何をしてるのか身を乗り出して、こっちの手で隠してる視界に何が何でも入ってこようとしてるかのようだ。なんやのコイツ?

とにかく疲れること続きの鑑賞で、もう半分ぐらい寝ちまってた。

しまいには右腕がかなり痛む。が右手を下げると右のバカが待ってましたなんで最後まで下げなかった。

上映が終了するとベータが激混みなんで12階から延々エスカレーターで1階まで降りる。頭が少し痛い… 右腕がやっと解放された。

なかなか酷い映画鑑賞だった。

 

…まぁとにかく『ブレードランナー』はね、なんといっても元の映像が素晴らしいから(画質のことじゃねェよ)。結局はこれに尽きる。

リドリー・スコットの映像美は言わずもがな、例えばミニチュア撮影は造型が緻密で、だから映し出された時 大スクリーンにも耐える。という監督だけでなくその他スタッフの力量、尽力。

続編の『ブレードランナー2049』(監督はリドリー・スコットではない)は3Dで観たのに臨場感はオリジナルの『ブレードランナー』に到底及ばなかった。

あるいは。

先日観てきた『マトリックス』4D上映は臨場感を体感できなかったが(←アトラクションとしては面白い)、『ブレードランナー』には臨場感・ライブ感がある。

ここからみえてくる事実として、映画の臨場感というのは3Dとか4Dとかデジタルとか製作年代とかetc.とはどうも関係がないということだ。

『ブレードランナー』の映像のセンスや質感・空気感、クオリティ。

前々から言ってるがテレビドラマはスマホで見ても別にいいが映画はそうはいかない訳。映画とテレビドラマは決定的に違う。映画は画を堪能するものであって、そのリアリティ(臨場感)とはヴァーチャルリアリティとは別物ということがわかる。『ブレードランナー』はそれを証明している。なぜ3Dでも4DでもVRでもない『ブレードランナー』に極上のリアリティが備わってるのか。

結局作品の元々の映像の質(←繰り返すが画質のことではない)やセンスがどうか、でしかない。

で、そんな『ブレードランナー』を劇場のスクリーンで観るのは――2Dで全然構わない――これぞ映画鑑賞だというね。