会員制の文章執筆サロンに入会しています。
課題図書をもとに書くリブリオエッセイ。12月の課題図書は『新しい世界』。
今回提出したエッセイは↓
【新しい世界―扉を開けてその先へ】
「手術、無事に終わりましたよ」声をかけられて目が覚めた。
手術室に流れている音楽を聴きながら「これなんて曲だっけ?」と思っているところに、
「お薬入ります。ゆっくり深呼吸してくださいね」という声。
あっという間に瞼が閉じそのまま記憶のない4時間。
そして、目覚めた瞬間から私の世界は一変した。
お腹が痛い。身体はとても疲れて眠いのに、急激にやってくる吐き気。
自由に動かせず固まった腰が砕けそうに痛い。どこかが激しく痛い。ムカムカする。吐く。眠る。
腰が痛すぎて頭おかしくなりそう。今度は急に熱い熱い熱い。吐き気が、お腹が、腰が……。
自分はまったく問題なく健康だと信じていたわずかひと月半ほど前の自分を思い出す。
当たり前に続くと思っていた健康な日常生活。ふとした予感から気軽に受けた子宮癌検診の結果が、昨日までと今日そして明日の私を変えた。
病名は「子宮頚部高度異形成 上皮内癌」。
癌になる一歩手前なんだそうで、「よかったね。まだ癌になっていなくて。子宮摘出したら完治だから」と
ドクターにサラッと言われ、頭がクラっとしたのが11月の始め、誕生日の2日後。
今なんの症状もなく元気なのに、癌になる手前だったとは。
こんなに簡単に病気が自分の日常にやってくるなんて、まったく考えてもいなかった。
術後の痛い気持ち悪い吐くのループが過ぎた後は、声が出ない力が入らないできない動けない、
もうこのままずーっとなにもしたくないという無気力状態。自分ってこんなにやる気のない人間だったっけ!?
地獄のような一日半が過ぎた頃から、少しづつ少しづつ「生きている自分」が今ここに戻ってきたのを感じられるようになった。
そう、生きている!
3人の子どもたちを育んだ子宮はなくなってしまったけれど、私は、今、ここにこうして、生きている。癌になる寸前で病気がわかり、これくらいのつらさで済んでよかった。
最悪のシナリオは、癌になって手遅れ、死を覚悟しなければ、だったのだから。
太陽の明るさが、月の光の美しさが、今まで以上に輝きを増し、小さな幸せが私の全身の細胞を喜ばせてくれていることを感じられる。私の新しい世界の幕開け。
(エッセイここまで)
注釈*12月1日に入院して翌2日に「腹腔鏡下子宮全摘術 両側卵管切除」手術を受け、術後の無気力状態脱出してすぐにこの作品を病室のベッドの上で書き上げました。
入院用バックに忘れずに課題本と筆記用具、エッセイ用ノートを入れ(毎回まずは手書きで作品を書いてそれからパソコンに入力しながら仕上げてます)、入院してすぐに課題本を読み始め・・・
これがなかなか大変だった。というのも、入院初日ってなんかやることいっぱいあるんだよね^^;
病棟内の案内に始まりシャワールーム、デイルームの使い方を教わったり、入院生活のあれこれの説明受けたり、身長・体重測定に体温、血圧、酸素濃度測定、採血、おへその掃除!!
薬剤師さんから薬の説明受けて、麻酔科の先生から麻酔の説明受けて、婦人科の先生から先日の記事に書いた「お腹の中、洗浄した廃液」を研究に使う説明&同意書書いて、担当ドクターの診察受けて・・・・
これらの合間合間に課題本を読み(私、手術の前の日になにやってんのかなーとか思ったりもして・笑)
今回の課題図書は↓
手術受ける直前に読む本としてどうよ?笑
なんて思いながら読み切った自分偉い!と自画自賛しつつ。
でも術後があまりにつらかったので、これはせっかく本読んだけど入院中にエッセイ書くのは無理だな、と思ったくせに、気づけば術後2日目にはノート開いて作品を書き上げちゃってました。これってやっぱある種の病気だよねぇ。
昨晩のふみサロ定例会では城村さんに
「手術直後のこの時にしか書けないこの生々しさがいい!」
とのお言葉をいただきました。
でもって城村特別賞もいただき感激。
好きなように好きなことが書ける、そしてそれを読んでくれる仲間がいるって最高に幸せ。
さてさて、ふみサロエッセイ集第二弾出版に向けて動き出してます。わくわく^m^
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