ヒカリカオル

ヒカリカオル

小説のブログです

Amebaでブログを始めよう!

 答えのない問題に気づかず答えを探すように、チャットの部屋を歩きまわった。

結局いつも通り答えはみつからない、もう慣れきったこの作業を手順通りに淡々とこなす。

 そしてたどり着くのはやっぱりいつものチャット部屋、「芽吹き」


 「今日は早いね」


いつも居る同い年の女の子、この部屋の常連さんだ。


 「見つかった?後姿の男の子は??」


 彼女にだけは本当の事を話した。彼女とは性格は正反対だ、言いたい事をズバッと言う

清々しい性格の持ち主、物怖じしない性格と行動力に少し憧れている。ネットの世界ではお互い

気が合った。好きなキャラクターが一緒ってだけで、親近感が沸いて、それ以来彼女とは

現実の友達よりも多くの相談をしてる。


 「ううん・・・やっぱりいつも通りの結果だよ・・・」


 気を落としているだろう私を気遣って彼女は話題を変え今日の学校での話しを始めた。

彼女には3つ上の大学生の彼氏が居て、その彼が彼女と同じ高校の子と浮気をしていたらしい

彼女は泣きもせず冷静に彼氏を引っ叩いてやった、何が大学生よ。私の方が何万倍も大人だね

それが彼女の最期の台詞だったらしい。彼女らしい振り方に笑いが込み上げてきた。

 私も今日の学校での話をした。


 「今日ね、友達が東京の専門学校へ行くって言ってた。。。なんだか羨ましい気もするけど。。。

 ちょっと自慢気な彼女を見ると、東京が総てって感じで嫌な気持ちになったなぁ~」


少し間を空けて申し訳なさそうにログが進む


 「私東京っ子だ・・・・(笑)」


 今まで知らなかった私は彼女が東京出身だって思ってなかったし、そんなことはどうでもいい事だって思ってた。だけど改めて聞かされると、なんだか私とは違って洗練されていそうな気がする。

 

 「東京嫌い??」


彼女の不安な思いが伝わってきた。

 

 「ううん!!!違うの・・・ただほら私のとこ田舎だから・・・なんか羨ましいんだ」


安心したように彼女らしい返答が帰ってきた


 「それっじゃ!!おいでよ!!東京案内するから(笑)それにヒカルに会ってみたいし」


「ヒカル」私がチャットで使ってるハンドルネームだ。本名と違って中性的で気に入っている。


 「それにほら!! 後姿の男の子!!!彼だって東京の人じゃないかって話してたじゃん?!」


 確かにそんな話をしてた。海の感じが穏やかだったから太平洋側の人だとか、落ち着いた感じからいって

年は20代で大学生じゃないとか、根拠はないけど少ない情報なりに2人でよく考えて話してた。その中で出身地は関東で東京よりもしくは東京の人、年は23~25、彼女が居る可能性は大・・・・そんな話をしてたっけ。

 

 「あくまでもそれは私達の予想だもん(笑)」


 「後姿の彼は・・・この際置いといてw ヒカルに純粋に会ってみたいんだもん(笑)」


彼女の積極性は嫌味がなく好きだった。そんな彼女に私も純粋に会ってみたかった。





 唸りを上げて立ち上がる。

産みの苦しみを感じさせるファンの回転音を聞きながらそっとフォルダーを開いた。


 「名もなき人」


 フォルダーから一枚の写真が吐き出される。2ヶ月前にチャットで知り合った男の子。

後姿で逆光、しかも座っているから背格好は勿論、性別だって曖昧な写真。彼が男だと名乗るから

男だと思っているだけに過ぎない。


 男性だとしたら随分華奢だ・・・そして綺麗なショートの髪の毛


 男性が砂浜で夕日を眺めているだけの写真を私は彼の後ろから殆ど毎日眺めている格好になる。

彼はどんな人で幾つで何をしているのかはわからない。たった2回、しかも偶然に入ったチャットで彼と

話しただけ、


 私はそのたったの2回で彼に恋をした。


 落ち着いたやり取りにチョット遅いタイプスピード、10時になるとお風呂に入るからという理由でログアウト

するところ、変な顔文字。私の何かが弾けて、思わず出た言葉が、「写メ下さい」だった。

 それ以来彼とは会えてない。




 きっと不思議な魅力をもった人。 



 今日も根拠のなく彼と出合ったチャットのウィンドウを開く




 

 鍵はここしばらくかけた事がない古めかしい

引き戸の玄関を開けると、和室の炬燵机の上にラップに包まれた

おにぎりが見えた。


 しめた 今日はお母さん遅番だな


 母は駅前の大手スーパーでパートをしている

車で30分程走ったとこにある町一番のスーパーだ

2年前に出来て夜の11時まで営業している。

こんな田舎で夜の11時まで営業している理由は見当たらない

9時をまわれば駅前の交番だって電気が消えるのに、、、

融通の利かない大企業が異彩を放つように煌々と明かりを灯している。



 さっきまでのモヤモヤが少し晴れた


 未だに進路の決まってない私は、親から何かと五月蝿く言われて

家に居ても居心地が良くなかった。

 おにぎりの横の書置きを目でさらっと読み おにぎりを片手にとった




今日は遅くなります。冷蔵庫に煮物があります。


                         母より




 案の定の内容と見慣れた几帳面な文字を横目に私は2階へ上がった

階段を上がると正面にあるガラス戸から鯉の泳ぐ川とそれを狙う大きな白い鳥が見えた

この季節によく見る光景はガラス戸からの景色というよりは、

曇った絵画のようにそこに張り付いて動くことのない世界のように思えた。 



 左側のドアを開け お気に入りのピンクの雑貨コーナーの近くにかばんを放り投げた


 自分の部屋が世界一落ち着く


 私はおにぎりを頬張りながら 高校入学のお祝いで買ってもらった

ピンクのPCに電源を入れた。